携帯電話は2つの電話番号と“メアド”を持ちたい――ドコモ「2in1」の今ITトレンドの“眼”(2/2 ページ)

» 2007年09月27日 06時30分 公開
[三浦優子,ITmedia]
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仕事にも好都合な2つの番号とアドレス

 1台の携帯電話に2つの電話番号、メールアドレスを持つことを可能とする「2in1」は、個人ユーザーだけでなく、法人ユーザーにとっても携帯電話の新たな用途を実現するとNTTドコモ側では考えている。

 「プライベートと仕事で、電話番号、メールアドレスを使い分けることはもちろん、仕事においても通常業務と特定の業務にのみ利用する電話番号、メールアドレスを使い分けることが可能になると思います」(尾上氏)

 営業担当者が特定の顧客にのみ公開する電話番号用に利用するといった用途や、セキュリティ面に配慮するために番号を使い分けるといった用途も考えられる。仕事においても2つの電話番号、メールアドレスを使い分けることができることで、これまで考えられていなかった新たな用途が創出される可能性がある。

 実はサービス開始前から、NTTドコモではこのサービスが法人からも引き合いがあることを想定していた。

 「マルチナンバーというサービスがあります。これは1台の携帯電話で複数の電話番号を設定できるサービスです。マルチナンバーではメールアドレスを複数持つことはできませんが、電話番号ごとに請求書を分けて発行できます。2in1は、マルチナンバーの利便性をさらに上げることを目的に開発したサービスともいえます。携帯電話では、個人が利用していたサービスを『これは仕事にも利用できる』と発展していくケースが多い。2in1についても、同様に発展していく可能性が高いと思います」(尾上氏)

 携帯電話は、企業導入が本格化する前に個人に普及していったため、個人が契約した携帯電話が仕事に利用されているケースも少なくない。すでに利用されている電話番号を変更することが難しい場合、契約は個人だが、利用料金は会社が支払っていることもある。マルチナンバーの番号別請求書は、そんなニーズを持った利用者から好評を得ていた。 2in1では、マルチナンバーでは実現できていなかったメールアドレスも個別に持つことができるようにした。これは、「現在のユーザーにとって、メールアドレスの価値が高まっている」ことを考慮してのことだ。メールアドレスの価値という点では、Bモードもしくはデュアルモード利用時には、Webメールを利用することも可能にした。従来よりも多用なメール活用を想定して設けられた機能である。

 「実は先ほどお話しした問い合わせが多いというのはWebメールに対してです。当社のメールサービスといえば『iモードメール』という印象が強いからでしょうか。このWebメール利用に関する問い合わせが大変多く寄せられています」(尾上氏)

 問い合わせの中には、すでにPCなどでWebメールを利用しているユーザーから、さらに詳しい機能を尋ねられる内容もあれば、これまでまったくWebメールを利用したことがないユーザーからの問い合わせもある。

 「問い合わせの中には、2in1を改善していく際のヒントが色々と隠されていると思います。2in1を開始前には見えていなかったことが、実際にサービスを始めてユーザーの反響を得ることで見えてきました」と、尾上氏は問い合わせの声を今後の機能改善に生かしていく方針を強調する。

年内には機能改善?

 サービス自身は好評である一方、「2in1はここから発展していくサービス。新たに付加しなければならない機能や、強化しなければならない機能はまだまだ多い」と尾上氏は指摘する。すでに2in1の改善プランは始動しており、「おそらく年内には機能改善を実施する」(尾上氏)見通しだ。

 改善が実現されそうな機能の1つが、ユーザーから要望の多い「Aモードを利用時に、Bモードの電話番号宛に着信させないようにしたい」というものだ。「実は留守番電話を利用すれば、現在でもAモードを利用中にBモードとして電話がかからないようにすることができます。ただし、ユーザーからすると『設定を行うのが面倒だ』、『もっと手軽に設定できないか』という声が多い。これは比較的対応しやすい要望ですので、実現に向けて検討中です」

 2in1を利用できる端末を増やしていくことも検討中だ。現在対応するのは904iシリーズのみだが、法人専用端末などにもこの機能を採用する可能性もある。

 「このサービスは一過的なものではなく、長期的に提供すべきサービスだと考えています。他の端末で利用できるようにすることは十分に可能性があります。ただし、仕様としてすべての端末でこのサービスが利用できるのかといえば、それは難しい。現在は、当社のメインストリームとなる90xシリーズで対応化を進める方針です」

 端末によってこのサービスを利用できるものと、できないものがあるというのは、2in1が1つのハードウェアに2つのシステムを搭載するという、ハイスペックを要求するサービスだからだ。そのために全端末で利用できるようにするのは難しい。

 利用できる電話番号、メールアドレスの数をさらに増やしていく可能性については、「果たしてそれだけの電話番号とメールアドレスを使いこなせる方がいるのか? ということもあります。現段階では検討していません」(尾上氏)という。

 請求書を分けることができるのは通話料金のみで、パケット通信分については請求書を分別ができない点についても要望が多い。これも実現化の検討が進めている改善点の1つだ。

 「要望は色々とありますが、われわれドコモ側で実現できるものと、パートナー企業と協議しなければ実現できないものがあります。要望を精査して、実現に向けて検討していきたいと考えています」

 サービス自体の認知度もまだまだ十分ではない。法人、個人を問わずサービスの存在を広くアピールしていくことも重要だ。「仕事でこのサービスを利用していくための機能改善に向け、現時点は“緒に就いた”ところだというのが正しいと思います。さらに多くの方にサービスを知ってもらうことで、さらに新しい用途が広がるはず。2in1というサービスは始まったばかりですから」(尾上氏)

 今後、このサービスがどんな広がりを見せていくのか。それを決めるのは利用者の声ということになるのかもしれない。

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