現場主義、ビジネス視点、無償――インフォアのERP差別化戦略Inforum 2008 Report(1/2 ページ)

ラスベガスで開催された米Infor主催のカンファレンス「Inforum 2008」では、Inforが軸とする3つのソリューション戦略が明らかになった。企業はこれらの戦略をどう評価し、注目すべきだろうか。

» 2008年10月21日 08時00分 公開
[浅利浩一(アイ・ティ・アール),ITmedia]

 米Infor Global Solutionsは、2008年10月14日から3日間にわたり米国のラスベガスで開催された「Inforum 2008」で、今後出荷が予定されている新製品や次世代のエンタープライズアプリケーション像を含む製品戦略を明らかにした。同社の新たな戦略について、企業がどのような点に着目すべきであるかについて述べる。

3つのソリューション基軸

 Inforum2008は昨年に引き続き非常に大規模なイベントとなり、700ほどのセッションが開催された。基調講演では、ジム・シェイパー会長 兼 CEO、ブルース・ゴードンCTO(最高技術責任者)、ジェフ・ラリエ製品戦略担当副社長がInforのビジネス戦略、製品戦略を発表した。同社エグゼクティブとの質疑応答も併せて、幾つかの重要な方向性が確認できた。

 同社は、SAP、Oracleに続く、グローバルでは第3位のERPベンダーであり、すでに「Enrich(製品機能の充実化)」「Extend(製品機能の拡張)」「Evolve(製品機能の革新)」という「3E」を重視したSOA戦略をInfor Open SOAで推進することを発表していた。今回のInforum2008では、この方向性で製品が着実に開発されていることを明らかにしつつ、今後のソリューションにおける3つの基軸を明らかにしたといえるだろう。

 Inforが目指すソリューションは、「柔軟なビジネスネットワーク基盤」「機敏性と適応性の高いアプリケーションコンポーネント」「柔軟に実装できるSaaS型アプリケーション」の3つが基本となっている。

3つのソリューションの概要

 はじめに、「柔軟なビジネス・ネットワーク基盤」とは、Infor Open SOAが目指すピアツーピア型のビジネスネットワーク像であり、OSGi(Open Service Gateway Initiative)のフレームワークに沿ってシステムのパッケージングが行われていく。OSGiは、1999年に設立された次世代のJavaベースのサービスプラットフォームであり、ライフサイクルにおけるソフトウェアコンポーネントの管理モデルを定義する枠組みである。

 従来のERPパッケージが集権的で一枚岩なアーキテクチャで、業務プロセスやデータを単一に束ねる方向性でSOAを捉えているのに対し、「Model Centrally & Execute Locally」が可能なシステムを目指すのが特徴といえよう。言い換えれば、現場業務の自律性を基本としつつ、グローバルでの「見える化」を担保するコンセプトだ。同社の主要なERPパッケージが、多くの製造業の現場で導入されてきており、そういった顧客が望む課題解決とも整合するSOA像であると評価できる。

 次に、「機敏性と適応性の高いアプリケーションコンポーネント」は、Infor Open SOAの基盤上で稼働するアプリケーションが実現する既存システムとの共存が可能な一枚岩ではないアプリケーション像であり、Evolveコンポーネントとも呼ばれる。2009年までに、主要アプリケーション分野で19のSOAコンポーネントを提供するとしており、今回はInfor MyDay、Infor Decisions、General Ledger Multi Bookというコンポーネントが発表され、ビジネスネットワーク上で柔軟に、かつ適切な意思決定が実現可能であるとする。

 Infor Open SOA上で展開されるEvolveコンポーネントの実装イメージを、Infor MyDay、General Ledger Multi Book (マルチ総勘定元帳)を例にして図1に示す。

図1:Info Open SOAによるEvolveコンポーネントの実装イメージ(出典:Inforの公開資料よりITRが作成)
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