ユーザーの意識改革なしにWinnyからの情報漏えいはなくならないネットの逆流(3)(1/2 ページ)

ネットを通じた情報漏えいで、マスコミ報道されることが多いのがWinnyやShareなどファイル共有ソフトからのもの。なぜこうした情報流出は減らないのだろうか

» 2008年11月24日 00時00分 公開
[森川拓男,ITmedia]

ネットの逆流過去記事はこちらです。


 第1回第2回に引き続いて、インターネットを通じた情報流出について検証していく。今回は、意図せず情報漏れを起こしてしまう、Winny(ウィニー)などファイル共有ソフトからの情報漏えいについて、事例を交えながら検証していきたい。

なぜファイル共有ソフトからの漏えいがなくならないのか

 Winnyなどのファイル共有ソフトを通じて情報漏えいしてしまう――以前ほど報道されなくなったものの、その事例がなくなったわけではない。最近でも、明治安田生命の採用試験応募者約9000人分の個人情報が流出した事件や、2006度に神奈川県立高校などに在籍した生徒約2000人分の個人情報や授業料徴収システムの開発データが流出した事件など、たて続けに発覚している。

 ニュースとして報道されないだけで、10月だけでも病院患者の個人情報、県の議事録、消防庁から区民情報、市民の監査資料、企業の新卒応募者の個人情報や面接結果、自衛隊からは作戦資料の流出などが明らかになっている。ニュースバリューの価値が低くなったと見られたのか、単に一般のニュースとして報道されなくなっているだけだ。決して、なくなったわけではない。

 もちろん、すぐに発表することにより、Winnyユーザーが情報を入手しようとするかもしれないという二次被害防止の意味でも、報道抑制している可能性もある。神奈川県立高校の例では当初、約11万人の生徒のデータが流出したおそれがあると発表されていた。さらにネットワーク監査を行った結果、Shareというファイル共有ソフトを通じて流出したことが確認された。この拡散は意図的に行われた可能性があるとして、刑事告訴も視野に入れているともいう。

 これらの発端は、いずれのケースでも担当者の不用意な行動から情報の流出に至っている。つまり、データの入ったパソコンから、自宅でも作業が行えるようにデータを個人パソコンにコピーしたことが原因なのだ。そして、データがコピーされたパソコンには、お約束のようにWinnyがインストールされていて、さらに「暴露ウイルス」に感染。つまらないファイルから重要なファイルまで、ネットワーク上に流出してしまったというわけだ。

 しかし、ここで注意しなくてはいけないのは、Winnyは悪ではないということだ。確かに、ファイル共有ソフトを利用して、違法にファイルを共有する行為は悪である。だがそれは、利用者がWinnyを悪用しているだけであって、Winnyそのものは悪ではない。P2Pネットワークを利用したファイル共有そのものは問題ないのだ。Winnyで流通するデータは、大半が著作権侵害のものだから、使用そのものが違法行為だとする意見も聞くが、それは認識不足といえる。悪いのは、あくまでも違法ファイルを共有しているユーザー自信であって、Winnyなどファイル共有ソフトではない。このことは切り分けて考えるべきである。

 それにしても、情報流出、漏えいに関して、なぜWinnyが悪者とされてしまうのか。それは、Winnyを通じてパソコン内のデータがインターネットに流通する事件が多発したからである。そしてその原因は、Winnyを悪用して、パソコン内のファイルをP2Pネットワークに送信、世界中に流出させてしまう悪質なコンピューター・ウイルスの存在だ。

 Winnyなどのファイル共有ソフトでは、共有をかけたファイルのみがP2Pネットワークを通じて、世界のユーザーへと共有される。しかし、「暴露ウイルス」は、共有に関係なく、そのパソコン内部のファイルを勝手に公開してしまうのだ。そこで、共有などかけるはずもない、仕事上の機密ファイルなどが、ネット上にばらまかれることになってしまう。

 それを拾って保存する人がいなければ、ただ公開されているに過ぎない。ファイル共有ソフトでは、ファイル名などのキーワードから検索し、欲しいファイルが共有されていないかを探す。つまり、ライバル企業など、そのデータを入手したいと願っている人、悪意のあるユーザーが入手してしまう可能性も高いのだ。

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