au夏モデル、ラインアップを見渡すと…… 神尾寿の時事日想:

» 2006年05月24日 09時54分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 5月22日、KDDIがauのWINおよび1Xの夏モデル7機種を発表した(5月22日の記事参照)。auの'06年夏モデルの特徴は、従来路線をさらに強化した「個性化」。特に顕著なのが、「ウォークマンケータイW42S」や防水+タフネスの「G'zOne W42CA」であるが、その他のモデルも音楽やテレビなどで、それぞれ個性を打ち出している。

 携帯電話における“夏モデル”の存在は、マイナーモデルチェンジもしくはバリエーションの拡大である。特にauは、昨年冬のフルモデルチェンジを事実上見送り、今年の春商戦にLISMO対応など大規模なフルモデルチェンジを行った。それらを鑑みれば、今年の夏商戦モデルが春モデルを補完する"派生モデル"中心なのは自然な流れだ。

コストコントロールが徹底したau夏モデル

 今年はドコモの夏モデルも“個性”と“バリエーション”を重視しており(5月11日の記事参照)、両社の方向性はかなり近い。しかし、auの夏モデルを仔細に見てみると、ドコモとの違いもある。

 その中で最も特徴的なのが、auの夏モデルがコストの配分と削減に徹底的にこだわっている点だ。ドコモの夏モデルは、902iプラットホームを流用したマイナーチェンジ/派生モデルながら、DCMX対応や生体認証、おまかせロック搭載など、シリーズ共通で進化したポイントがある。各モデルの個性になる機能とあわせて、"902i+α"になっているのだ。

 しかし、auの夏モデルは、ウォークマンケータイやW44Tの音楽関連機能、G'zOne W42CAのタフネス機能など各端末の個性になる部分を除けば、かなり大胆な機能の削減が行われている。

 その顕著な例が、au夏モデルにおける時代逆行とも感じられる「おサイフケータイ」の少なさだ。確かにモバイルFeliCaの搭載は端末コストの増加につながるが、今年の春以降は対応サービスが続々と登場し、おサイフケータイ関連市場全体としては追い風が吹いている。約2年という携帯電話の利用年数と、これから先のおサイフケータイ対応サービスの増加を考えれば、モバイルFeliCa搭載は「'06年モデル」の必須項目である。それでもなお、auがおサイフケータイを増やさなかったのは、それだけ同社がコストに敏感になっていることの現れだろう。

“痛み”を抑えて消耗戦に臨む

 なぜ、auは今年の夏モデルは従来にも増してコストに神経質になっているのか。それは紛れもなく、MNP開始のタイミングで起きるであろう消耗戦に備えるためだ。

 各キャリアは料金値下げやインセンティブの積み増しなど消耗戦は避けたいと考えているが、MNPの際は価格競争を余儀なくされる。特に端末は、いわゆる「1円端末」という形で投げ売りされるだろう。今年の春・夏モデルは、秋には安売りされる運命にある。その中で、ドコモよりも資金力で劣るauは、少しでも消耗戦の“痛み”を抑えなければならない。そのためには、今年の必須機能の1つであるモバイルFeliCaですら、コスト削減の対象にせざるを得なかったのだろう。

 今回のauの夏モデルには、同社がMNPにおいて、ドコモと正面対決をする覚悟が感じられる。

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