「キャプ翼方式」のサッカーアプリは携帯向き〜テクモ

携帯アプリは、容量制限との戦い。アクションサッカーゲームを開発するより、「キャプ翼方式」のサッカーゲームはどうか? と考えたのがテクモだ。

» 2005年03月22日 15時59分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 携帯向けサッカーゲームを開発したい。しかし携帯アプリでは容量制限の問題から、本格的なサッカーアクションゲームを開発することが難しい。この悩みを、「キャプテン翼方式」で解決したと話すのがテクモだ。

 同社は、ファミリーコンピュータ時代にサッカーゲーム「キャプテン翼」を発売したことで知られる。局面ごとにコマンド入力を行う――という目新しいスタイルのサッカーゲームで、当時サッカー好きの少年の間で人気も高かった。このシステムを、携帯アプリとして復活させようというわけだ。

 2003年にボーダフォン向けとして制作されたアプリ「シネマティックサッカー」は、その後2004年のドコモ版リリースを経て、2005年1月にはKDDI向けのBREW版も登場。3キャリア対応を果たしている。テクモのブロードバンド&モバイル事業部のディレクター 天野幸芳氏に、ゲーム開発の工夫などを聞いた。

Photo 「キャプテン翼」風のゲーム画面。余談だが、ファミコン版の「くっガッツが足りない!」といった名セリフは、サッカー好きの間では広く知られている

「携帯向き」だった“キャプテン翼システム”

Photo

 同氏はサッカーアプリ開発にあたり、どんな方式が適しているか考えたと話す。

 「当時のサッカーアプリを見渡してみて、携帯の小さい画面で多人数キャラが入り乱れる方式は、成立していないと考えた。それなら、斬新だったあの“キャプテン翼方式”でいこうと」

 キャプテン翼のコマンド入力方式なら、片手でも簡単に操作できる。判断の難しさはあるかもしれないが、アクションゲームのようなタイミングを合わせる難しさはない。

 このシステムが携帯向きだと判断した天野氏だが、いきなりトラブルに行き当たったという。

 「テクモ内で、昔のゲームの資料を保管していなかった。そのため、まずはファミコンを引っ張り出して、自分で遊ぶことから始めた」

 ゲームシステムの把握に務めたが、さすがに細かいパラメータがどう設定されているかはよく分からない。そこは新しく作っていこう、という姿勢で、1カ月ほど構想を練ったという。

ファミコン版にはない新要素

 シネマティックサッカーでは、高橋陽一さん原作のマンガ「キャプテン翼」の登場人物は出てこない。代わりに、日本代表のサッカー選手を思わせるような名前のキャラクターや、アフリカ系サッカー選手を思わせるプレイヤーを擁したチーム、さらには某“銀河系”軍団を思わせるサッカーチームなどが登場する。

 マンガキャラが出てこないから、必殺シュートも「ネオタイガーシュート」「隼シュート」はなし(*)。代わりに、「弾丸シュート」「高速ドリブル」「キラーパス」といった必殺技が用意されている。

*初出時、ドライブシュートがないような記述をしておりましたが、「翼くんのドライブシュート」でないドライブシュートはゲーム内に存在します。訂正いたします

 ファミコン版とは違い、必殺技は自分で選択できない。「センタリングで高い球がきたときに、ボールを受ける選手が『オーバーヘッド』の技を持っていると、自動でオーバーヘッドキックが出る……といったシステムだ」(同)

Photo 必殺技が出た瞬間。予め定められた条件に合致すると、各プレイヤーが隠し持っている「必殺シュート」などが発動する

 当初、ボーダフォン向けに開発されたアプリは容量が50Kだった。このため仕方がないとはいえ、ファミコン版と比べて削ぎ落とされた部分も多い。例えばゲーム内の名物だった“実況中継アナウンサー”は登場しないし、選手が「ふっとばされ」るといったアニメーションもない。プレイヤーの能力値向上(レベルアップ)もなし。「“岬君を探す”といったイベントも、用意されていない」(笑)

 ただし、ファミコン版にはなかったような要素もいくつか追加されている。

 1つは、プレイヤーの“視野”のパラメータ。実際のサッカーでも、局面に応じて適切なパスを出せる選手を「あの選手は視野が広い」と表現することがあるが、これをゲームに取り入れた。

 「パス能力が高い選手は、視野が広くなる。このため多くのパスコースの選択肢を持つことになる。逆に視野が狭い選手は、すぐ隣ぐらいにしかパスを出せない」

PHoto

 また、トレードのシステムも用意されている。試合終了後、結果に応じて選手をトレードで獲得できるのだ。負け続けていても、トレードで新選手を獲得することでチーム力向上を図れるという。

 「トレードでは、ゲームスタート時のスタメンよりも強力な選手を獲得できるようになっている」

開発上の苦労

 ゲームを開発する上で、容量制限以外に苦しんだポイントは何だろうか。天野氏は「ゲームバランスの調整」を挙げる。

 「ゲームテストのため、相当数の試合をこなさなければならない。2週間は、ひたすらプレイばかりやっていた」

 対戦相手が強すぎるとつまらないし、かといって弱すぎると“トレード”でチーム力を向上させるというシステムが生きてこない。このさじかげんが難しかったのだと天野氏は話す。

 別の問題もあった。ゲームに登場するチーム数は3つだが、開発側では先に触れた「アフリカ系チーム」が一番弱くなるよう設定することを考えていた。

 「しかし、実際にはアフリカ系選手は個人能力が高い。このため、各選手のパラメータを高く設定していると、今度はチームとしても非常に強いチームになってしまった」(笑)

 開発側としてはこだわりもあるが、渋々各選手のパラメータを下げるなどして調整したのだという。

 同氏は、最終的には携帯で遊ぶのに適した、満足いく仕上がりになったと話す。テクモの携帯アプリでは、有名ゲームを移植したような「有名どころ」が人気が高い。しかしシネマティックサッカーも、詳細こそ明かせないが、これに匹敵する売上を稼いでいるという。

 「ゲーム難易度は、最初は難しめ。油断すると、1試合目からボコボコにされるおそれがあるので注意してください」(笑)

Photo (C)TECMO,LTD.

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