ムシキングのブームの秘密と、コンシューマの「アナログな連動」とは?:CEDEC 2005リポート
CEDECでは珍しい、アーケードゲーム開発者の講演。ムシキングのコンシューマ移植に際し、アーケード市場をシュリンクさせることなく、アーケード版の新たな魅力をプレイヤーに発見させたという。その分析を開発者自らが語った。
グレイテストチャンピオンを目指して親子が熱中
CEDECは主催者がCESAのため、必然的にコンシューマゲーム、オンラインゲームをメインにフォーカスしているセッションが多いのだが、今回の「ムシキングにおけるアーケードとコンシューマのアナログ的連動」はコンシューマ版「甲虫王者ムシキング〜グレイテストチャンピオンの道〜」を中心(のように見える)に、ムシキングを取り巻く状況について語る稀有なセッションとなった。
さて、最初にアーケード版ムシキングの現状についての説明が行われた。出荷台数は1万3200台という驚異的なもの。これはムシキングの筐体のベースとなったキッズメダルゲームの平均出荷台数が200台というから驚きだ。ただし、これはレンタルシステムだからという理由。ちなみに筐体そのもののレンタル料金は無料となっている。設置店数は約5000店で、1店あたり2〜3台置かれている計算となる。
カードの出荷数は2億3000万枚。1プレイ100円なので、インカムだけで230億円。
そして、ムシキングを語る上で見逃せないのが公式のゲーム大会。これが出荷後約2年半で3万300回も行われている。これが今回のコンシューマと密接な関係がある。
このゲーム大会は優勝すると「チャンピオン認定証」がもらえ、3度勝ち抜くと「グレイテストチャンピオン認定証」がもらえる。これらのカードにもバーコードがついていて、読み込ませると特殊な効果がある。というわけで、このカードを求めてゲーム大会をはしごするプレーヤーもいるという。
ゲーム大会に参加しているプレイヤーとその家族はもはや「運動会で頑張る子供とその子を応援する家族」のようになったという。本セッションではニュース番組で取材されたムシキング大会に熱中する親子の姿を紹介していた。
コンシューマ移植によるアーケード版のシュリンクをどう防ぐか?
そんな中、当然ながらセガ社内からはコンシューマ版への展開が求められた。だが、植村氏は「コンシューマ版移植によるアーケード版のシュリンクを懸念」した。最悪な場合は今まで集めたカードが、ただの紙くずになってしまうという危険性もある。
そこで考えられたのが「ムシキングのゲーム大会に勝ち抜くことを目的にしたゲーム」にすることだった。
そもそも、ムシキングの大会に出るのはごく一部のコアプレーヤーに限られていて、多くのプレーヤーはなかなかそんな舞台に登ってプレイすることができない、というのが実情だという。そこで、ゲームで擬似ゲーム大会を経験させ自信をつけさせて、リアルのゲーム大会に参加してもらおう、という考えだ。
GBA版の購入者アンケートによると、買った人のほぼ全員がムシキングの経験者である。しかし、実際の大会に参加したことのあるプレーヤーは10%にも満たない。だが、GBA版プレイ後にはほとんどのプレイヤーが実際の大会に参加したい、と答えたことだ。
また、携帯機、それも普及度の高いGBAで開発したこともあり、アーケード版のプレーヤーが順番待ちなどの間にプレイする(しかもアーケード版のシミュレーションとして!)ことも多いという。ムシキングの売りの1つである、虫の3D表示を実現するために別機種や据置機での展開も提案されたそうなのだが、これに関してはGBAを選ぶことでのメリットのほうが大きかったといえよう。
ムシキングの強みはプレイヤーの声が開発者に直接届くこと
ムシキングのヒットの秘密で忘れていけないのは「開発者とプレイヤーの距離が非常に近い」ことが挙げられる。植村氏が率いるファミリーエンターテインメント部には部内にカスタマーサポートチームがあり、プレーヤーからの意見を直接吸い上げるような体制になっている。
実は、GBA版の開発も「病気になって入院してしまい、外出ができなくなったのでムシキングを遊べなくなった」、という子供の声がきっかけの1つになっている。また、植村氏を含む開発チームが自らキャラクター(ムシキングオールスターズ)に扮し、イベントなどに登場して盛り上げている。
また、全国にいるムシキングマスターもムシキングコミュニティの維持に貢献している。彼らは子供の目線で話し、ゲームコーナーでの展開をフォローしている。
このように、ムシキングチームがプレーヤーを大事にするのはなぜか、というのは、このゲームの生い立ちにあるといえよう。このゲームはセガの経営危機時に開発がスタートした。失敗したら部門自体がなくなるという切羽詰った状況で開発を続け、子供たちに助けられて大ヒットに至ったという経緯がある。そのため「2億枚のカードが一夜にして紙くずになることは避けたい。それは子供たちに対する最大の裏切り行為」と語る植村氏。
いわゆる「子供向け」タイトルは「子供に対して真摯に向き合っていない、子供騙し」なタイトルが多く存在している。そんな中で子供たちの意見を直接吸い上げて、よりよいタイトルを作り上げていくというムシキングチームの姿勢は、他社も見習う必要があるだろう。
なお、セガは9月4日、千葉県のホテルニューオータニ幕張において「ムシキング 東京 サミット2005」を開催する。これは「甲虫王者ムシキング」を利用した国際交流イベントで、「甲虫王者ムシキング」を展開しているアジア6カ国(シンガポール、台湾、タイ、フィリピン、マレーシア、香港)の地域より子供を招待し、日本の子供4人と共に様々な体験をすることで、国際交流を促すという目的だ。
森の中で自然を観察する「日本の自然体験」、ムシキングの一大遊空間「ムシキングワールドプラス 蘇我店」の見学・体験などをしたのち、自分の住んでいる地域を紹介、ムシキングの新しい技を考えてカードのデザインを作る「ムシキングサミット」などが実施される予定となっている。
ゲストには、ムシキングジョニーも参加する予定だ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
-
誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
-
小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
-
娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
-
プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
-
1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
-
メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
-
子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
-
巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
-
ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
- 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
- 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
- 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
- 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
- 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
- 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
- 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
- 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
- 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
- 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」