任天堂が僕たちにくれた、せまくて広い最高の遊び場「おいでよ どうぶつの森」レビュー(5/5 ページ)

» 2005年12月14日 09時00分 公開
[仗桐安,ITmedia]
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提供されたのは自由に遊ぶことができる上質な「遊び場」だった

 本作の魅力はその自由気ままっぷり、フリースタイルさではあるが、それが逆にイヤだという方もいるかもしれない。ゲームには目的があって、それを完遂したときに得られる達成感とかカタルシスが好きだ、という方は本作のあまりの自由度に「で、次は何をしたらいいの?」となるんじゃないだろうか。事実、そこそこゲームが好きな知人に本作がどういうゲームかを説明したら「それはじゃあ何かを倒すとかはないの?」という質問を受けた。「何も倒さなくていいんだよ」と言うと「えー、そうなんだ、分かんねーなー」というリアクションがあった。考え方は人それぞれだとは思うが、そういったスタンスの人には本作はかったるいゲームにしか見えないという可能性もある。

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 ストーリー重視の一本道なゲームや、ルールが細かい複雑なゲームがダメだというわけではないが、その対極にある本作の面白さをできるだけ多くの人に体験してほしいと、筆者は切に思う。本作でプレーヤーがメーカーからもらえるのは、用意されたドラマや決まりきったデモシーンではなくて、せまいけれども広大な「遊び場」だけだ。「ここで好きに遊んでいいですよ」と遊び場を提供されたプレーヤーは「はて、好きにと言われても何をしたらいいのやら」と思いつつ色々やっていくうちにやるべきことを発見していく。その過程はなんともアナログなものだ。前述した4人での“かけっこ”や“かくれんぼ”は最たる例だろう。

 筆者の場合、今日はちょっとさかな釣って終わろう、と思って電源を入れたとしても、いったんやりだすと「あ、化石だ」とか「そういえばここであれしたかったんだ」「あんなとこにこんなものが」「これ欲しいからもうちょっと金稼ごう」などといろいろやりだして、結局長いあいだプレイしてしまうということが多かった。我ながらなぜだろうと思う。何もしなくてもいい空間なのに何かを見つけてしまうし、わずかな変化が気になってしまうのだ。メーカー側が遊び場として提供してくれたこの世界が、非常に作りこまれていて懐が深いからこそ、そうやって引き込まれていくのだろう。筆者の周りにいる本作のプレーヤーたちも相当にハマっているようだった。Wi-Fiで遊んだ友人夫妻の家のなかにはそれぞれ思い思いの家具が置かれめいっぱい本作を楽しんでいる様子がうかがい知れた。すれちがい通信の成功頻度も本作の普及度と人気度の高さを示しているように思う。

 本作の売りは何と言ってもニンテンドーWi-Fiコネクションを使ったプレイだが、スタンドアロンな環境でも充分楽しめるつくりになっている。毎日の変化が楽しくて思わず今日も電源を入れてしまうことだろう。そしてたぬきちの店(オープンは午前8時から午後11時)に行きたいがために、夜型人間が朝型人間になるくらいの影響力はあるかもしれない。ハマる人はとことんハマるスローライフな世界観を思う存分楽しんでほしい。そしてこれを読んでいるあなたとどこかですれちがえたり、お互いの村で遊べる日が来ることを待ち望むばかりである。

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