原点回帰で受け継がれる遺伝子――「PS2よ、これがRPGだ」:「幻想水滸伝V」レビュー(3/3 ページ)
フィールドは移動しやすくなり、戦争はリアルタイム方式へ進化
前作では行きたい場所へたどり着くまでに苦労したり、3作目では移動手段がまったく変わっていたりしたフィールドだが、これも本作では1・2作目と同じくなり、とても歩きやすくなった。表示自体は3Dなのだが、若干俯瞰気味のアングルで見やすく、労せずに探索できる。しかも、思った以上に歩くスピードも速いので、これならスタリオンを仲間にしていなくても(本作には登場しないが……)問題なし。最初のうちは、あちこちの街へ旅させられるのだが、フィールドだけでなく川を使って移動する場面もある。しかし、これも自動で動いてくれるので、プレーヤーが特に何かをする必要はないのだ。スタートボタンを押せば、スキップ可能なのも便利。さらに、途中からは瞬きの手鏡で移動できるようになるので、交易をするために街を訪れるのも一気に楽になるのだ。
瞬きの手鏡があるということは、当然ながら本拠地も存在する。仲間がどんどん増えていけば本拠地も大きくなるわけで、その過程を見る楽しみは本作でも健在。詳細は語らないが、お馴染みの施設もあるので、シリーズのファンならばそれだけでも嬉しいはず。他にも、ミニゲームで遊べたりお風呂に入れたりするなど定番の場所も揃っているので、ここだけでもたっぷり遊べてしまうのだ。本拠地を構えると、ゲームが中盤に入ったことを実感すると共に、幻想水滸伝をプレイしているんだ、という思いを一層強く感じた。
もう一点、幻想水滸伝を代表する要素として、戦争がある。ルールを単純化して説明するなら一言、じゃんけんだ。3種類のユニットは、それぞれ三竦みの関係になっていて、必ず得手不得手の相手が決まっている。つまり、きちんと強弱関係さえ把握しておけば、勝つことはそれほど困難なことではない。
毎作品ごとに、数々の工夫を凝らして作られているモードだが、今回はリアルタイム戦闘へと進化した。各ユニットごとに指示を出して実行させると、マップ上のユニットが一斉に動き出すのだ。見ていて爽快ではあるが、意外にあわただしい操作を要求されるのが残念なところ。LRボタンでユニットを1つずつピックアップできるのだが、目的のユニットを直接選択してしまう方が精神的にも落ち着くので、ついその方法をとってしまう。ところが画面がスクロールするほど広いマップでは、ユニットを選択しようと思いカーソルを移動させていると、どこかで戦闘が始まってフォーカスが移ってしまうなど、不便さも感じた。
とはいえ、頻繁に戦争が起きるわけではないので、ほとんど気にならない問題なのは確か。シミュレーションが下手な自分がプレイしても何とか勝てたので、普通の人ならまず間違いなく勝利を収められるはず。多少なりともシミュレーションRPGをプレイし慣れている人ならば、難なくクリアできるだろう。ただし、直前にセーブしておくことだけは忘れないようにしたい。何かの弾みで間違えて味方キャラが死んでしまったら、それこそ目も当てられないのだから。
待ち望んだ原点回帰を果たし、シリーズファンだけでなく万人に勧められる作品に仕上がっている
全体的に見ると、原点回帰しつつも新要素を積極的に取り入れ、なおかつスピーディな展開さを兼ね備えた作品として仕上がっていると言えるだろう。これこそ長年待ち望んでいた、シリーズの由緒正しい続編ではないかと思ったほど、その完成度は高い。個性豊かな登場人物・幻想水滸伝らしいストーリー・キャラがサクサク動く戦闘・探索しやすくなったフィールドなどなど。ほぼすべての部分が、確実にこれまでの作品よりも良くなっている。あえて不満点を挙げるとするなら、キャラの表情が今ひとつ豊かに見えないところではないだろうか。これで、各キャラが超大作RPG並の表現力を兼ね備えてくれれば、もはや向かうところ敵なし状態になるだけに、ぜひとも頑張ってほしいところなのだが……。とはいえ、150人以上の作りこんだキャラクターたち全員に望むのは酷か。
3・4作目が肌に合わなかったということで不安を抱いている人がいるならば、それが杞憂に終わることを断言しよう。特に、自分を含めた1・2作目のファンならば、間違いなく買いといえる内容に仕上がっている。幻想水滸伝シリーズとしては、久々にファンの心をワクワクさせてくれる、そんな1本になるに違いない。RPGはプレイしたいけれど、映画のようなものではなく自分が主人公になれる作品を望んでいる人にも、強くお勧めしたいタイトルだ。
幻想水滸伝V | |
対応機種 | プレイステーション 2 |
メーカー | コナミ |
ジャンル | RPG |
発売日 | 2006年2月23日 |
価格 | 7329円(税込) |
プレイ人数 | 1人 |
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