ロジックでもテクニックでもない、“声”が決め手のピンボール:「大玉」レビュー(1/2 ページ)
戦国時代が舞台のピンボールとは、また奇矯な……。でも、大玉がただ奇をてらっただけのゲームでないことは、プレイするうちに少しずつ分かる。玉を自在に操るテクニックや、兵を優位に進軍させる戦術も必要だが、最後の最後は“声”が勝敗を分けるところが斬新に思える。
意表をついた“声の出演”にビックリ!
またへんてこなゲームが出てきたなぁ、と思った。戦国時代とピンボールって、一体どんな着想から結びついたのだろう。大体、コントローラーだけでなくマイクまで使って遊ぶピンボールだなんて、ひどく変わっている。
この「大玉」を手がけたのは、ビバリウム代表でゲームデザイナーの斉藤由多加氏。また、セガ出身でスタジオフェイク代表の岡安啓司氏も開発指揮で名を連ねている。斉藤氏は1999年にドリームキャストで発売されて話題を集めた「シーマン〜禁断のペット〜」の作者でもあるし、岡安氏というと私はメガドライブの「レンタヒーロー」が真っ先に思い浮かぶのだけど、そうしたアクの強い作品を世に送り出してきたお2方が関わった作品ということなら、大玉のキテレツぶりも納得できてしまう。
このゲーム、冒頭のオープニングデモから鮮烈な印象を受ける。ゲーム中の世界設定や登場人物はもちろんフィクションなのだが、掛け軸や大きな釣鐘の写真などを用いながら、あたかも壮大な歴史絵巻のように見せていく演出がおもしろい。何より、このシーンのナレーションを俳優の大滝秀治氏が担当していることに仰天した。声を聞いただけで誰と分かるほど特徴的な声質と独特の言い回し。あの声で「世は荒れ狂う戦乱の真っ只中……」なんて語られると、妙に説得力があって、ゲームのオープニングであることを忘れそうになる。ちなみに、大滝氏は“プレーヤーの家臣”という役回りであるらしく、オープニングだけでなくプレイ中のさまざまな場面でもその声を聞くことができる。映画やテレビドラマなどでは絶対に言いそうもない台詞がぽんぽん飛び出すのはおかしい。
任天堂の創業家一族の名前をもじった(?)と思われる「山ノ内家」といい、「任天道」なる教えといい、重厚な歴史ドラマと見せかけておいて実はちょっとズレている世界観がとてもユニーク。おのずとゲーム本編にも期待がふくらむ。
初めはおもしろさがいまひとつ分からなかったが……
大玉では、合戦の場がそのままピンボールの盤に見立てられている。基本的な遊び方もピンボールと何ら違いはなく、フリッパー(このゲームでは“振り場”と呼ぶ)で盤上の“大玉”を弾く。ここまでは普通のピンボールのようだが、プレイしてみるとそのゲーム性はまるで別物なのだ。
大玉のステージ上には敵味方双方の兵たちがいて、振り場で弾き返した大玉に当たると、敵と味方の区別なく押しつぶされてしまう。大玉をむやみに弾けば、自軍にも被害を与え、かえって不利になってしまうのだ。また、本来のピンボールはスコアを稼ぐことが目的なので、玉を落とさない限りエンドレスに続くが、大玉には明確なクリア条件がある。それは、釣鐘衆が担ぐ「任天の鐘」を敵陣のゴール門まで運び入れること。釣鐘衆は放っておいても門へと前進を続けるが、当然、敵はそれを阻止しようとさまざまな仕掛けで待ち受けていたり、多数の兵を出して押し戻そうとする。それに対抗する手段が、「秘技」と呼ばれる音声コマンドだ。
ピンボールの要領で玉を打ち返しつつ、盤上の兵にも音声で指示を与えていく。簡単そうに思えるのに、いざやってみるとこれが思いのほか難しい。大玉に気を取られていると戦況の把握が遅れるし、逆に兵たちへどういった指示を出すべきかと思いあぐねるうちに大玉をロストしてしまったり……。操作についても、L・Rトリガーでフリッパーを動かす以外に、待機兵の出陣や補助アイテムの使用などでコントローラーの全ボタンとスティックを使ううえ、声での指示も必要となると、慣れないうちはまず混乱必至。また、ステージごとに時間制限があるのもきつい。お手軽に遊べるゲームを想像していたら、実際のところは最初のステージを突破するにもひと苦労するほどだった。
難易度が高いからというわけではないが、プレイを始めた直後は大玉のおもしろさがどのあたりにあるのか、どうにもつかみかねた。ピンボール風ではあるが、バンパーを派手に叩いたときの高揚感や、玉をレーンにくぐらせたときの胸がすくような感じもしない。大玉が敵も味方もお構いなく押しつぶしてしまう様は、滑稽なようでどこか残酷にも思え、だんだんと不思議な気分になってくる。
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