いつでもどこでもいただけます! 〜思わず熱くなる夢の競演、ふたたび「DQ&FF in いただきストリート ポータブル」レビュー(2/2 ページ)

» 2006年06月07日 16時40分 公開
[仗桐安,ITmedia]
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秀逸なリアクション、グッとくるマップと音楽

 1人用でプレイをしていて感心するのは、各キャラクターのリアクションの豊富さ。元々複数人で遊ぶことを前提に作られたボードゲーム。1人でプレイしているときのコンピュータたちのリアクションが無機的では味気なくて、すぐに飽きてしまうだろう。逆にその点が人間的であればあるほど、それに比例して面白さも増すというものだ。おそらくそのあたりも作品を重ねるごとに洗練されてきたと思われるが、10年ぶりにいただきストリートをプレイする筆者にとっては、ちょっと感動的ですらあった。

 なんせ元はといえば人気RPGのキャラクターたちなわけで、各作品をプレイしたことがあれば、それぞれのキャラクター設定についてある程度の知識を持って臨める、というのが大きい。そのうえ、各キャラクターはそれぞれがいかにも言いそうなセリフを、その場の状況に則して繰り出すので、こちらとしてはコンピュータだと分かっていても「ヤンガス、やる気あんのか」とか「エアリスが本気になってきたな」など、擬似的に対人戦的な感覚を楽しむことができる。

 もちろん繰り返し同じキャラクターと遊んでいれば、同じ状況で同じセリフを出すことは当たり前になってくるが、それでもそのタイミングに破綻がなく、かつ、セリフの量はそれぞれが膨大なので、1人用プレイとしては十分に及第点だと言える。セリフの内容もよく練られており、人気RPGのキャラクターゲームとしてもかなり秀逸な作りになっているという印象を持った。


 また、各キャラクターのセリフだけではなく、マップや音楽の拘りも原作ファンにはたまらないものがあるだろう。前述したラダトーム城は初代ドラゴンクエストから来ている。マップ上のマスにはそれぞれエリアが設定されており、それらのエリア名が「メルキドエリア」、「リムルダールエリア」など、ドラゴンクエストの地名からとられている。そのうえBGMは懐かしくも物悲しい、あのラダトーム城のBGMだ。もちろん他のマップもそれぞれ両シリーズのエッセンスが凝縮されたものになっていて、原作ファンの期待に応えたものになっている。また、ゲーム中のカジノマスに止まった際に遊べるカジノゲームは両シリーズの旧作の画面をうまくアレンジしたミニゲームになっており、古くからのファンならそこでも懐かしさを楽しめることと思う。

PSPならではの各要素

 今作がボードゲームである以上、対人戦は必要不可欠な要素だ。もちろんアドホックモードによる通信対戦機能は搭載されているので、PSPと今作を持ち寄れば最大4人での対戦ができる。しかし、PSPと今作を持った友人を4人揃えるというのは、そうそう簡単なことではない。というわけで登場したのが「フリーゲーム」というモード。これまでの「いただきストリート」シリーズにおいては、1つのコントローラを4人で持ちまわすことによってプレイすることができたが、それと同じことがPSPで可能なのである。要するに自分の番だけPSPを持ち、自分のプレイが終わったら次の人にPSPを渡す、というプレイスタイルだ。

 これだと他人がプレイしているときは画面を見ることができない(横から覗き込むというのはありだが)という欠点はあるが、それでもいただきストリートの本質的な面白さは損なわれていないように感じた。事実、友人の協力を仰いで複数人で「フリーゲーム」をやってみたところ、最初はルールもよくわかっていない友人たちがだんだん熱くなっていくさまが面白かったし、筆者自身も違和感なくPSPを持ちまわしてのプレイに没頭できた。自分のところにPSPが来たときに「うおい、何てことしてくれたんだよ!」と状況に突っ込みを入れてしまったり、逆に「へっへっへっ」と不敵な笑みを浮かべながら次の人にPSPを渡したり、そういったコミュニケーション込みでの面白さが味わえるモードである。

 なお、前作ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート Specialをやり込んだ人であれば「結局リメイクでしょ?」と思う節もあるかもしれないが、新キャラクターや新マップが追加されているのでご安心いただきたい。また、今作においては、前作に登場したキャラクターのコンピュータの強さが変更されており、前作で登場したマップは、マスの配置が一新されている。さらに、各キャラクターたちと会話をできるモードも追加されているので、そういった点でも新鮮なプレイができることと思う。完全新作として楽しめるわけだ。

ロードの長さは気になるが……面白さは太鼓判!

 全体的には非常に申し分ない出来である。かつていただきストリートファンだった筆者としてはコンピュータ相手にムキになってしまう、あの熱い感覚を思い出し、なおかつ本当にずぶっとハマってしまった。いつでもどこでも遊べるというのがまた曲者で、自分のターン以外は待ち時間になるので、携帯電話でメールを打ちながらとか、ちょっとした移動のあいだでもプレイが成立する。結果としては、いつでもやめられるが、いつまでもやっていられるという、いい意味で「たちの悪い」だらだらプレイをしてしまって、しばらく今作にべったりだった筆者である。

 そんな筆者の気になったところは、ロード時間の長さ。プレイ中のロードはまったくなく、プレイが始まればサクサクと進む。しかし、プレイ開始時とプレイ終了時、セーブ時などのロード時間は妙に長く「PSPよ、大丈夫か」と心配したほどだ。おそらくプレイ時のサクサクを確保するために一気にロードしているので、いたしかたないかとは思うが、もう少し短ければユーザーフレンドリーなのに、と残念に思った。

 また、大前提としてドラゴンクエストシリーズもファイナルファンタジーシリーズもあまりやったことがない人はキャラクターゲームとしての魅力を楽しみきれないというのも気になる。とはいえ「ゲームはやらないけどドラクエとFFだけはやる」というライトユーザーも存在するほどなので、その点は杞憂だろうか。ぜいたくな要望であるが、願わくば別のコンセプトでいただきストリート本編に近い、間口の広い作品も出していただきたい、などと思ってしまう。

 とにかく10年ぶりのいただきストリートは、予想以上に楽しく熱いボードゲームだった。いろんな要素や美麗なグラフィックなどでデコレートされてはいるが、根幹の部分はファミコン版やスーパーファミコン版とそんなに変わっていないという点には驚かされる。キャラクターゲームとしても優秀だが、ボードゲームとしての面白さも太鼓判。いつでもどこでもハマれるドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート ポータブルをぜひプレイしてみてほしい。

キャラクターコレクションではその出自も解説
まさに夢の共演。会話だけでも笑ってしまう
はたしてどんなコースが待っているのか

ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー in いただきストリート ポータブル
対応機種PSP
メーカースクウェア・エニックス
ジャンルボードゲーム
発売日2006年5月25日
価格5040円(税込)
(C) 2006 ARMOR PROJECT/SQUARE ENIX All Rights Reserved. (C) KOICHI SUGIYAMA FINAL FANTASY characters: (C) SQUARE ENIX DRAGON QUEST characters: (C) ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX キャラクターイラストレーション:天野シロ


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