RPGを知りつくした熟練スタッフの手による、王道中の王道を行く作品「ワイルドアームズ ザ フィフスヴァンガード」レビュー(2/2 ページ)

» 2006年12月25日 00時00分 公開
[水野隆志,ITmedia]
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3つのポイントを把握してハードな戦いに打ち勝て

 ストーリーと並んで、あるいはそれ以上にRPGの面白さに影響するのが何と言っても戦闘システムだ。これに関しても「ザ フィフスヴァンガード」は見事な完成度を誇っている。前作をベースにしているのだが、さらに改良が施され、より緊迫した駆け引きを楽しめるのだ。

 バトルフィールドは7つのヘックス(六角形のマス)で構成され、通常のランダムエンカウントでは中央に1つ、その周囲に6つという形で配置される。この7マスの中に敵味方がランダムにセットされるのだが、この際、敵味方が混在することはない。ただし、同じ陣営に属するキャラクターは同じマスにセットされることもある。

画像 7つのヘックスで構成された通常戦闘時のバトルフィールド
画像 ボス戦ではヘックスの配置が変わり、フィールドの形が変化する

 行動順は各キャラクラーの反応値を基準に敵味方入り乱れた形で決定される。味方キャラの順番が来たら、移動、攻撃、アイテム使用などのコマンドを実行し、敵を倒していく。相手を全滅させれば勝利。逆に戦闘に参加している全メンバーが戦闘不能になれば敗北となる。味方パーティは最大6人で構成されるが、このうち3人が戦闘に参加する。戦闘中のメンバーチェンジは可能だが、戦場にいる3名が倒されてしまったら、無傷の控えがいたとしても敗北になる。なお、逃走も可能だが、この場合は所持金の一部を失ってしまう可能性がある。結構痛い金額をなくしてしまうのであまり頻繁には使えない。

 さて戦闘で最初にすべきは移動だ。攻撃やアイテム使用などを行った後での移動は不可。移動してから攻撃などのコマンドを行う必要がある。移動できるのは隣接するヘックスのみで、味方がいるヘックスには入れるが、敵がいるヘックスには入れない。

 続いて攻撃などの行動を選ぶわけだが、ここで大切なのはあらゆる行動の対象はキャラクターではなく、ヘックスであるということ。例えば、敵2体がいるヘックスを攻撃すれば同時に2体にダメージを与えることができる。毒などの異常ステータスを引き起こす攻撃を受けた場合もキャラクター自体が毒に冒されるのではなく、ヘックスが毒で包まれる。他のヘックスに移動してしまえば、それ以上毒の効果は受けない。

 最初に考えないといけないのが、メンバーを分散させるか、集中させるかだ。例えばHPがボロボロになっている味方が2人いるとしよう。彼らが同じヘックス内にいれば回復魔法を1回唱えればまとめて回復できる。ところがヘックスが違っていれば、そのターンに直せるのは1人だけ。そのせいで残ったほうがやられてしまったら目も当てられない。だからといってメンバー全員を同じヘックスに集めた場合、敵に集中攻撃されたら一巻の終わりになりかねない。敵の戦闘能力や数を考えて分散させるか集中させるかを判断しなければならないわけだ。これが戦闘に勝利するためのポイント、その1である。

画像 属性を持つヘックスにはそれに対応した色が着く。緑が風、黄が地、青が水、赤が火だ

 次に覚えておくべきは属性の効果だ。地、風、水、火という4つの属性があり、地と風、水と火が相反関係にある。バトルフィールドにある7つのヘックスのうち、3つのヘックスはこの属性のいずれかを持つ。属性が4つあるのに対して属性を持つヘックスが3つしかないというのがミソだ。

 属性はダメージに大きく影響する。火属性のヘックスにいる敵に水属性の攻撃を仕掛ければダメージが大幅にアップする。その代わり、同じ敵から反撃を受けた時には自分も同様の大ダメージを受ける。諸刃の剣だが威力が大きいので活用しない手はない。移動するヘックスを選ぶ時には、属性に注意する。これが勝利のためのポイント、その2である。

 敵モンスターは4つの属性に対して、風に弱いが火には強いといった感じで、それぞれ相性を持っている。これはヘックスの効果に累積する。だから水を苦手とするモンスターが火属性のヘックスにいるところに水属性の魔法を打ち込めば、致命的な大ダメージを与えることが可能になる。これが勝利のためのポイント、その3だ。

 これまでに述べた3点を踏まえて戦闘の必勝法を考えてみると、以下の写真のようになる。


画像 まずはアナライズのコマンドで敵の相性を確認。行動権を無くさないフリーアクションなので何度でも見られる。外見が同じでも属性の相性が異なる敵も多い。すべての敵についてチェックする癖をつけたい
画像 通常移動や魔法などを使って相手が苦手とする属性のヘックスに移動する。この時、4属性のうち、3属性しかセットされないのが意味を持ってくる。相手の苦手属性がない場合、別な手を考えねばならないのだ
画像 苦手属性の攻撃で大ダメージを与える。物理攻撃または魔法攻撃のどちらかに耐性を持つモンスターもいるので、その点にも注意しておきたい

多彩なパーティ編成を可能にしてくれる「ミーディアム」

画像 ミーディアムは1人につき1つ装備できる。戦闘中以外なら交換も可能

 属性を意識した移動と攻撃。これが戦闘の基本となる発想だ。そしてこれをさらに深めてくれているのが「ミーディアム」のシステムになる。ミーディアムはゲームが始まって少しすると入手でき、各キャラクターのタイプを決定する非常に重要なアイテムだ。

 ミーディアムは全部で6種類あり、どれを装備するかで使用できるキャラクタータイプが変わる。

  1. 剣のミーディアム:物理攻撃専門の攻撃型戦士タイプ
  2. 山のミーディアム:味方を守る盾の役割を担う守備型戦士タイプ
  3. 天のミーディアム:攻撃魔法専門の魔術師タイプ
  4. 海のミーディアム:回復や補助魔法専門の癒し手タイプ
  5. 運のミーディアム:アイテムの奪取、敵の攪乱を行う盗賊タイプ
  6. 月のミーディアム:ヘックスを使った特殊行動で味方をサポートする支援タイプ

 パーティメンバーは最大6名。ミーディアムの数も6。とすると、誰にどれを装備させるかがポイントに見えるだろうが、そうではない。実はミーディアムには1〜6のどの能力も持っていないブランク版があるのだ。これには任意のミーディアムの能力をコピーできるので、物理攻撃を重視したければ剣のミーディアムを大量にコピーし、メンバー全員に持たせればいい。ブランクミーディアムは一度何かの能力をコピーしてしまうと2度と書き換えができないが、フィールドのあちこちにセットされているので、こまめに集めていけば、編成に苦労することはないだろう。

 ミーディアムの装備に関してはキャラクターによる制限がない。特殊能力はキャラクターにではなくミーディアムに付属しているので、例えばディーンを戦士系で使ってきて突然盗賊系に変えるといったことも可能。クラスが固定でそれを成長させていくという伝統的なRPGとは180度異なる極めて自由度の高いシステムだ。

使用できる特殊技とミーディアムの関係

画像 オリジナルは装備しているミーディアムにより、物理攻撃か魔法攻撃かに分かれる。剣のミーディアムを装備したキャラのオリジナルは物理攻撃、天のミーディアムを装備していれば魔法攻撃といった具合だ

 ミーディアムはキャラクタータイプだけでなく、使用できる特殊技にも影響する。これにはMPを消費する「オリジナル」とFPを消費する「フォース」の2種類がある。

 オリジナルはいわゆる魔法や特殊攻撃に該当し、攻撃や回復の中心となる重要な技が含まれている。前述した属性を利用した攻撃は、オリジナルを使わないと行えない。従ってMPが切れてしまうと戦闘はかなりキツくなる。残量にはつねに気を配っておく必要があるだろう。


画像 同じヘックス内にいる仲間と協力して発動するフォース、コンビネーションアーツ。パーティメンバーの全組み合わせごとに違う技が用意されている

 一方、フォースを使うには、まずFPを溜めねばならない。FPは戦闘中何らかの行動をしたり、敵からダメージを受けたりすると、それに応じて少しずつ溜まっていく。開始時はつねにゼロだが、MPを消費するオリジナルと違ってFPを溜めさえすれば何度でも使える。単体技と連携技があり、特に後者は多数の敵に大ダメージを与えられる必殺技的な強力攻撃が揃っている。

 フォースはキャラクターレベルと装備しているミーディアムによって決定される。例えば、レベル40で剣のミーディアムを装備しているから、使えるのはこのフォース技、という感じだ。例外は連携技で、これは完全にキャラクター固有技になっている。

 MPさえあれば最初から使える代わりにMPが尽きたらアウトのオリジナル。FPが溜まるまでは使えないが繰り返し何度でも使えるフォース。前述の属性とこの特殊技が組み合わさることで戦術性は飛躍的に高まっている。前作の戦闘もかなり面白かったが、今回はそれ以上だ。

システムの深みは面白さのため。恐れることなくプレイを

 「ザ フィフスヴァンガード」は、シリーズ10年の集大成と言うだけあって、システムがかなり凝っている。キャラクター強化の方法も、紹介したオリジナルやフォースだけでなく、スキル、バッジ、レベルアップボーナスなどの要素があり、さらにミーディアムによるスキルの先行取得(本来ならもっと高レベルにならないと取得できないはずのスキルを低レベルで覚えるシステム)、バッジ同士の合成などもあって、やり込み始めたらキリがないくらいだ。関連するアイテムをコンプリートするだけでもかなりの時間を要するだろう。

 こうした諸要素は、従来のシリーズを遊んできた人には、ああこれはあの時のあれだな、とすんなり頭に入り込んでくると思われる。その意味で負担を感じることなく、深みを堪能できるはずだ。今回が初体験という人には少しヘビーに感じるかもしれないが、戦闘の基本となるのは“属性を意識した移動と行動”“ミーディアムによってキャラクターのタイプと特殊技が変わる”という2点だ。ここさえ抑えておけば、後はやりながら把握していけばいい。全システムを完璧に使いこなせば戦闘はずいぶん楽になるが、そこまでしなくても普通に進めて行く分には何ら問題はない。

 「ザ フィフスヴァンガード」は、RPGを知りつくした熟練スタッフの手による、王道中の王道を行く作品だ。ストーリーと戦闘システムの妙なる調和を味わうのに過去のシリーズ経験は関係ない。必要なのはRPGが好きかどうかだけ。それさえOKならば、きっと胸躍る数十時間を過ごせることだろう。

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