「ひなた島」を発展させよう――シリーズ初となる“島”が舞台の「牧場物語」:「牧場物語 キミと育つ島」レビュー(1/2 ページ)
ニンテンドーDSやWiiのヒットによって、ゲームファンの層も拡大し、ほのぼのした癒し系ゲームへのニーズも高まっている。元祖癒し系とも言える「牧場物語」の最新作は、牧場だけでなく住んでいる島も充実していく、やりごたえのある内容。ニンテンドーDSにピッタリの1本だ。
ほのぼのゲーム「牧場物語」の時代が来た!?
昨年10周年を迎えた「牧場物語」シリーズは“元祖癒し系”とも呼べる伝統あるタイトルだ。スーパーファミコンのころには、敵との戦闘もレベルアップもない個性的なゲームスタイルは、一部で支持されたものの、広く受け入れられるまでには至らなかった。
しかしそれから10年。ニンテンドーDSでは、ハード初期を引っ張ったシンボル的なソフト「nintendogs」や、トリプルミリオンをゆうに越えるヒットを遂げ、映画化もされた「おいでよ どうぶつの森」など、癒し系ゲームは柱のひとつになりつつある。こうなると「牧場物語」シリーズも注目を浴びるのは当然だろう。2006年にニンテンドーDSで発売された、外伝的な「ルーンファクトリー -新牧場物語-」は、ファンの評価も高く、スマッシュヒットを記録した。
今回の「牧場物語 キミと育つ島」(以下、キミと育つ島)は、シリーズの正統的な新作に当たる。従来通り、モンスターとの戦闘もなく、ほのぼのとした牧場ライフを満喫できるはずだ。
ポイントは、住んでいる島が発展すること。何もなかった無人の島が自分の頑張りでにぎやかになり、移住者も続々と訪れる。街育成シミュレーションにも似たシステムが核となる要素だ。
シリーズ初、島が舞台の物語
――新天地へ向かう移民船に乗り込んだ主人公。だが、船が遭難して海に投げ出され、目が覚めるといつの間にか見知らぬ浜辺にいた。「気がつきおったか。大丈夫か? どこかケガなぞ、しとらんか?」。主人公は一緒に遭難したタロウと名乗る老人に起こされる。この島には廃屋はあるものの、主人公とタロウ一家4人しかいないようだ。
そのときタロウはこう言った。
「そもそも、ワシらは新天地を求めて移民船に乗った。嵐で船は沈んでしまったが、こうして新しい土地にはたどり着けたではないか!」……。
超ポジティブシンキングなタロウによって、途方にくれる間もなく、主人公は見捨てられた牧場を立て直して生活を始めることとなった。
海に浮かぶ小さな「ひなた島」が今回の舞台だ。これまでのシリーズと違い、村長もいなければ、宿屋も教会もない、まったくゼロからスタートするという試みが新しい。島を丸ごと発展させる壮大な構想と、何のしがらみもない自由さに胸がワクワクする。
初期の牧場は、相変わらず石や雑草だらけ。クワやジョウロは持ってるが種はない。これからどうすればいいんだろうと思いつつ、1日目は眠りについた。そして次の日、行商人のチェンとチャーリー親子が船で島を訪れる。たまたま材料探しに来たようだが、この島で生きることにした主人公たちの心意気にほれ、種や食材を売るお店を開いてくれるというのだ。これで主人公が牧場、チェン親子がお店、タロウ一家が出荷を担当し、もっともミニマムな牧場ライフが始まった。
さっそくその日から畑スペースへ行き雑草を抜き、クワを持って耕す。しばらくするとあっという間に主人公の「体力」と「満腹」ゲージが減ってきた(「体力」が0になると倒れてその日の活動は終わり、「満腹」が少ないまま寝ると、なぜか寝坊してしまう)。あたりに生えているハート型の草を食べ、ゲージを回復させつつ種まきと水やりをこなす……。今回はいつもよりもゲージが減るペースが速い気がする。1日で無理して仕事をするのではなく、計画的な作業が求められるだろう。序盤は3×3マスの畑3個くらいが限度か。意外と高額なので、花やハート型の草を拾って出荷するのも楽かもしれない。
こうして始まった孤島での牧場ライフは、次第に充実していく。プレイを進めるうちに、さまざまな人が移住してくるのがうれしく心強い。ゴツい大工で島の増築を担当するゴラン、エサを売る動物屋のおばさんマセルと元気な娘のジュリア、寡黙な運び屋のヴァルツ……。しばらくすると必要なお店が揃い、やっと町らしくなる。
ここから先、どう島を発展させるかはプレーヤー次第だ。あとで詳しく書くが、何を優先させるかの選択肢はかなり多い。自由度とやり込み度のどちらもそろっていて、筆者は過去作をほとんどプレイしているが、その中でも充実感の高さが光る1本だと思う。
大胆に一新されたタッチメインの操作体系
注意点というか、慣れないとちょっと戸惑うのが今回の操作システムだろう。十字キーやボタンは脇役に回り、主にタッチペンを使ってゲームを進める。たとえば会話は画面内の話しかけたいキャラにタッチすればOKだ。移動は行きたい方向にタッチしていると主人公がそちらに向かう。
この操作感覚を覚えるまでは少し大変だが、一度コツをつかんでしまえば結構快適だ。会話するためにわざわざ隣へ行く必要もないし、エサを箱に入れるときも、頭上に掲げたエサをタッチし、そのままエサ箱へペン先を動かせば投げてくれる。移動も、いったん方向を決めてLボタンを押しっぱなしにすることで、ペンを離してもずっとダッシュのままになる。曲がりたいときはポンッと行きたい方へタッチすればいい。筆者も序盤はアイテムを捨ててしまったり、無駄な行動を取って体力を減らしてしまったりとミスもあったが、ニンテンドーDSらしさを生かしたインタフェースという意味では本作はよく練られている。
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