今回の「ゼルダ」は経験者と初心者との壁をなくす――青沼英二氏編Nintendo roundtable

昨日の「Nintendo Media Briefing」に引き続き、任天堂は「ラウンドテーブル」を開催。ニンテンドーDS用ソフト「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」について、プロデューサーの青沼英二氏が語った。気になる次回作は……?

» 2007年07月13日 20時59分 公開
[記野直子,ITmedia]

コアゲーマーと初心者ゲーマー両方に“手応え”を与える

 7月12日(現地時間)、北米サンタモニカで開催している「E3 Media and Business Summit」(以下、E3)に合わせ、任天堂がラウンドテーブルをサンタモニカ海岸近くのLoews Santa Monica Beach Hotelで開催した。プロデューサーの青沼英二氏がニンテンドーDS用ソフト「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」について、Wii用ソフト「スーパーマリオ ギャラクシー」について宮本茂氏がそれぞれの立場から開発秘話などが語られた。まずここでは、先に行われた青沼氏のラウンドテーブルから。

任天堂 情報開発本部 制作部に所属する青沼英二氏。「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」ではプロデューサーとして参加。「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」では、ディレクターを担当している

 「サンタモニカを楽しんでいますか?」と、リラックスして登場した青沼氏。というのも、日本ではすでに6月に「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」(北米では10月1日発売予定)が発売されており、その販売状況が好調であるからにほかならない。

 青沼氏は、日本での販売状況や購買層の変化について「これまでの『ゼルダ』シリーズは、コアなゲーマーの方に支持されて、発売日にはぐっと売れるのだが、それは一過性のものだった。しかし、本作では継続して息の長いセールスが続いている」と報告。

 これもニンテンドーDSが切り開いたユーザー層の拡大が起因しているらしく、特に大人の女性の方も購入してくれているのが特徴とか。“タッチペン1本で遊べるゼルダ”に興味を持ってくれたのではないかと青沼氏は推測している。

 「重要なのは、遊んでくれたユーザーがWebなどで感想を書いてくれるのですが、コアユーザーも新しいユーザーも、ともに満足してくれているという点です。ちょっと前までは、コアユーザーと初めて遊ぶユーザーが、ともに満足するものを作るというのは不可能だと思っていました。それが実現できたのは“手応え”にあったと思います」(青沼氏)

 「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」は、ニンテンドーDSで開発をするにあたり、遊びやすさと手軽さを目指して作ってはいたものの、それがゼルダの遊び自体を簡単にするということとは違っていた。

 青沼氏は、“ゼルダらしさ”とは、難しい謎解きや遊びがあって、それをプレーヤーがどうすればいいのだろうかと考えることと、解いた時に自分しか解けないのではないかと得られる満足感であり“手応え”にあるのでないかと分析している。だから、ただ簡単にしてしまい、その“手応え”をなくしてしまうことは、ゼルダらしさを消すことになるのではないかと思っていたそうだ。

 従来の考え方でいくと、ゼルダらしさを追求しようとすると謎解きや遊び方を難しくしてしまう傾向にあったのだが、本作では根本から発想を変えることで、コアゲーマーでも初心者でも“手応え”を体験できるようにしていると青沼氏。

 本作では、海王の神殿というダンジョンで時間制限を設けている。開発中にスタッフに遊んでもらうと、昔からのスタッフに限ってダンジョンを解くことができず、逆に初めてゼルダを遊ぶ人がサクサクと進めるという現象が起きたという。

 「昔からゼルダを知っている人の固定概念がそうさせているんです。初めてゼルダを遊ぶ人は、今までのゼルダの遊び方という固定概念がないので、新たに与えられるテーマに対して、すごくストレートに遊べる。固定概念のある人にはそれが難しいものになって感じられたわけです。経験者であればあるほど新鮮な謎として受け入れられ、“手応え”として感じられるわけです。そして、初心者でも満足感を与えられる。“手応え”を捨てることなく、タッチペンというシンプルな操作を入れることで、断続的に集中できるものになり、納得の面白さを味わってもらえるものになりました」(青沼氏)

 また、本作ではWi-Fiコネクションで遊ぶ対戦モードも収録されている。過去にも「4つの剣」で多人数プレイを実現しているが、本作では初めて1対1での対戦を実現している。この対戦モードは、攻撃側のプレーヤーはリンクを操りマップ上に散りばめられたフォースを自陣により多く回収し、防御側は3体のファントムに進むルートを指示し、リンクを捕まえることを目的としている。

 通常対戦となると、よりゲームに精通しているプレーヤーが勝利するものが多いが、本作では、テクニックを必要とするものではなく、相手の動きを読み、先手先手を打つ心理戦なようなものとなっている。そのため、誰もが対等な立場で対戦することができる工夫がなされている。タッチペンを得たことは、こういう部分でも温度差を埋める手助けをしている。

 それもすべてスタッフの努力によるところが大きいと青沼氏。本作はディレクターをはじめ、いわゆるゼルダフランチャイズに関わったことのないスタッフが多かったと明かす。例えば、「風のタクト」では海底の宝物を発掘するだけだったサルベージシステムを、本作では新たな遊びにアプローチしている。タッチペンという新たな操作方法から、固定概念にとらわれないゼルダを創出したのは、「風のタクト」をコツコツとプレイし研究し、その成果を本作で発揮したディレクターによるところが大きいと、青沼氏は改めて敬意を表し、今後も同じ体制で開発したいとコメントした。

 青沼氏は最後に次回作についても触れる。思いついたことはすぐに話したくなる性格だと自身を分析する青沼氏は、今考えている構想をいくつかこの場で発表したいと宮本氏に相談したところ、「手応えも確かめていないアイディアを話すのか?」と怒られてしまったと明かし、現状まだ報告できるものはないと話す。

「『夢幻の砂時計』で一番気に入ってるとこは?」という質問に「マップ画面でリンクが画面上をタッチペンの後に追いかけてくるところ」と青沼氏。これは、自分も知らない機能だったらしく、子供に教えられて気がついたんだそうだ。これから北米、欧州のユーザーがタッチペンを使ったゼルダをどう受け止めてくれるか楽しみと語る

 しかし、「『夢幻の砂時計』に登場したキャラクターたちもこれからいろいろできそうだし、ゲームシステムにしてもまだ先につなげていける。『トワイライトプリンセス』も同様。いくつかの選択肢がある中で、次にどうしていこうかと考えているところ」と気になる発言もあった。

 気になるWiiの次回作について青沼氏は宮本氏に、「いい作品を作るためにも、時間はかかりそう」と、発表に関して時間がかかる旨を伝えているそうだ。「2人でWiiコントローラを使って対戦できるようにしてほしい」など、たくさんのアイディアをくださいと語っていた。

 「『夢幻の砂時計』をプロデューサーとして関われたことは、手応え的にもよかった。今後もこういう関係でまた作れればとも思っているし、そういう方法も考えている。また、ゼルダではない新しいタイトルも最大のテーマとして今後挑んでいきたいです」(青沼氏)

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