「世界最強」、「史上最小」、「日本最大」のコンテンツビジネスを創造――「DSvision」記者発表会
インターネットを経由して多彩なコンテンツをダウンロードし、ニンテンドーDSにおいて楽しめる「DSvision」の記者発表会が開催された。最強、最小、最大のコンテンツストアとなりえるか?
「DSvision」とは、am3が任天堂から許諾を得て開発を進めている、インターネット経由でさまざまなコンテンツのダウンロード販売を行う事業のこと。漫画・書籍などの出版物や、アニメ・映画などの映像コンテンツを専用のmicroSDを利用して、ニンテンドーDSでの“ゲーム以外”のサービス拡充を狙うというもの。
「DSvision Confernce」と題して行われた記者発表会ではまず、大日本印刷常務取締役市谷事業部長の西村達也氏が、9月に大日本印刷がam3に資本参加し、筆頭株主になったことを報告。am3が開発を進めていた「DSvision」をもって、ダウンロードコンテンツの制作から運営までのサービス提供を展開することになると挨拶した。大日本印刷は1985年、世界初のCD-R版の電子辞書を開発して以来、その時々の最先端メディアでのコンテンツクロスメディア展開を推進している。幅広い世代に支持される新たなメディアとしてニンテンドーDSに目をつけたわけだ。
一方、am3はゲームボーイアドバンスやニンテンドーDSへのコンテンツ事業を展開していた。代表取締役社長・竹内裕司氏は、ニンテンドーDSのタイトルにはゲーム以外のコンテンツが増大し、新たなコンテンツプラットフォームと認識されているという点を挙げ、「DSvision」がビジネス的に成功できるかどうかは、「コンテンツの充実次第」と、コンテンツフォルダーの参入を呼びかけた。
なにゆえ「最強」、「最小」、「最大」なのか?
事業内容の説明についてはビジネスコンサルタントのショーンK氏をゲストに招き、am3専務取締役の澤居大介氏とのトークセッションで進行した。「DSvision」は「最強」、「最小」、「最大」のプラットフォームを標榜している。2008年3月より開始する予定の、新たなコンテンツダウンロードのディストリビューションサービスなのだが、はたして何が“最強で最小で最大”なのだろうか?
澤居氏は「最強・最小・最大はコンセプトであり目標である」と説明する。まずなにゆえ最強なのか……。
ニンテンドーDSは2005年11月の発売以来、現在までで国内累計2000万台を突破する販売実績を誇っている。わずか3年弱でワールドワイドでは5000万台を販売するハードとして、ゲーム機というよりも世界で唯一成功したPDAであるという位置づけで捉えていると澤居氏。ニンテンドーDSが携帯とは異なり、コンテンツを楽しむだけのハードであるという点や男女問わず幅広い年齢層に訴求できる点を挙げ、「DSvision」を利用する潜在的なユーザーが期待できると解説。エデュケーション系などの、ゲームとはいいづらいタイトルが多い点でも、需要が見込めると「最強」をアピールした。
次に「最小」である。前述したとおり、「DSvision」はインターネット経由で専用のmicroSDにコンテンツをダウンロードし、それを専用のアダプタに差し込んでニンテンドーDSのカートリッジに接続する。microSDは全長15ミリで、現在最小のメモリーカード。市場的にもmicroSDは2007年6月には販売シェアのトップに立ち、メモリーカードのスタンダードとなりつつある。これだけ小さいながらも、2GバイトのmicroSDならば書籍で4000冊分、コミックであれば200冊分、2時間の映画でも16本分と、大容量のダウンロードにも申し分ない。さらにコンテンツデータを扱うということで、強固な著作権保護機能も開発し、配信システムとともに万全のセキュリティ体制を整えているとのこと。
「DSvision」でのコンテンツダウンロードの流れを説明すると、まず「DSvision メガストア」と呼ばれる販売サイトから好みのコンテンツを選択。ダウンロードしたものは「DSvision コンテンツラック」というライブラリで確認できる。ダウンロードするには専用の「microSD リーダーライター」が必要で、PCのUSBポートに差し込んで使用する。コンテンツをmicroSDにダウンロードできたら、リーダーライターからmicroSDを抜き出し、今度は専用の「DSvision アダプタ」にセット。DSvision アダプタは、ニンテンドーDS専用カードと同サイズで、これをニンテンドーDSに差し込むことで、閲覧、利用が可能となる。なお、使用する専用リーダーライターや専用アダプタなどは、am3からの販売となる。
ここに「最大」の所以がある。澤居氏が目指す「DSvision」は、日本最大のコンテンツストア。ニンテンドーDSにもっとも適したインタラクティブとユーザーインタフェースを実現する。
そこでトークセッションでは、実際に開発中の「DSvision」の利用例をデモンストレーションして見せた。携帯なので撮影した写真を、microSDを経由してニンテンドーDSで確認できる「DS Photo Viewer」では、拡大・縮小・回転はもちろん、メッセージを書き込んだりも可能。なお、この「DS Photo Viewer」は、microSD購入時にバンドルされる予定とのこと。
ほかにもルーブル美術館に収録されている美術品を閲覧できる「ルーブル」(パズルやアートクイズも収録予定)や、小説の配信も予定されている。ケータイ小説が隆盛を誇っているように、ニンテンドーDS発の小説が流行ることも期待されていた。
「DSvision」は3年でコンテンツ数1万タイトルを目指す
「DSvision」のビジネスモデルについても言及。am3はサービスに必要なすべてのハードウェアやソフトウェアを総合的に提供し、開発や制作に必要な各種ツール開発も進めているとのこと。コンテンツ提供へのハードルをなるべく取り払うべく、コンテンツ制作の代行や販売なども担当するとしている。
2008年3月より開始予定で、スタート時には300タイトルを用意できるようにしたいと澤居氏。1年目には1000、2年目に3000、そして3年目となる2010年には1万タイトルに達成するコンテンツを用意したいとのこと。それに伴い、ダウンロード数も初年度は300万ながら、3年後には年間2000万を記録し、売上も初年度を年間20億とし、3年後には100億円を目指すとしている。
まずはダウンロード用の専用機器としての、専用アダプタや専用microSD、USBリーダーライターの普及が急務で、これらをセットにした(microSDは512Mバイト)ものを、2008年1月に3980円(税込)でテスト販売するとしている。テスト販売されるセットには、すでにいくつかのコンテンツを収録したものとなる。
気になるコンテンツの値段だが、それはコンテンツ次第ながら、3月のサービス開始時にはほかの携帯コンテンツ等と同等の値段(できれば1000円以下を目標)になると言及。クレジットカードなどからの決算となる。
前述したとおり、専用のアダプタやリーダーライター、microSDの普及、そしてインターネット環境の整備などの点で障壁もある。専用アイテムについては、これでの儲けは度外視した普及を目指し、ネット環境についてはNTT東日本とのタイアップを予定している。なお、技術的問題をクリアできれば、将来的にはWi-Fiを利用してのダウンロード販売も視野に入っているとのこと。
am3代表取締役会長の黒川文雄氏が最後に挨拶した中にもあったが、「DSvision」の成功の鍵は目標としているコンテンツの充実にある。魅力的なコンテンツが並んだ時こそ、「最強・最小・最大」なサービスとなるだろう。
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