いつしか気分はフィギュアスケート界のヒロインに――「くるプリ」第2弾が早くも登場:「くるくる◇プリンセス 〜夢のホワイトカルテット〜」レビュー(1/2 ページ)
フィギュアスケートを題材に、ニンテンドーDSのタッチペン操作でジャンプやスピンを繰り出せるところが新鮮だった第1作。それからわずか9カ月という短いスパンで発売された「くるくる◇プリンセス 〜夢のホワイトカルテット〜」は、グラフィックが大きく向上したほか、操作性にも改良が加えられ、前作以上にフィギュアスケーターになりきれる。
マイナーチェンジ版ではない、完全な新作が早くも登場
先日行われたフィギュアスケート・グランプリファイナルの女子シングルは、実に見応えがあった。言うまでもなく、今や日本の第一人者となった浅田真央選手の演技のことだ。ショートプログラムでまさかの最下位になりながら、フリーではトリプルアクセル、3回転−3回転のコンビネーションと、全てのジャンプを次々と決めて、フリーで1位、総合でも2位まで巻き返したのだから、いやはやすごい。
スパイクから発売された「くるくる◇プリンセス 〜夢のホワイトカルテット〜」なら、浅田選手がグランプリファイナルで見せたような華麗なる大逆転劇を自分の手で演じられるかもしれない。
このゲームは、2007年3月に発売された「くるくる◇プリンセス 〜フィギュアできらきら☆氷のエンジェル〜」に続く第2弾。実は前作もわたしがレビューを担当したのだが、見るからに低年齢層女児をターゲットに想定したパッケージといい、“くるくる”で“きらきら”の強烈なタイトルといい、店で買うのが恥ずかしかったこと……。しかも、こういうソフトに限って「レジにてお申し付けください」と無情な張り紙をする某量販店。いい年をしたおっさんに「DSの『くるくる◇プリンセス 〜フィギュアできらきら☆氷のエンジェル〜』ください」とレジで言わせたいのか、某量販店!(それに、再びレビューを依頼した編集者も!)。
もう顔から火が出そうになるほど恥ずかしい思いをしながら、どうにかこうにか買ってきたそのソフトをプレイしてみると……、あら、これが意外におもしろい。タッチペンで図形を描いたり、画面上をこすったりすることでジャンプやスピンなどの技を繰り出せるのだが、ジャンプの難度によって描く図形も複雑になるというあたりにアイデアが光る。また、ショートとフリーのそれぞれで使用する楽曲や衣装を自分で選べたり、演技構成を自由に組み立てられるところもフィギュアスケートファンとしては大いに心ひかれる。なんだかんだといいながら、気がつけばおっさん、すっかり楽しんでいた。
その前作からまだ9カ月しか経っていないが、早くも続編の登場と相成った。てっきり、前作にちょっと手を加えただけのマイナーチェンジ版かと思いきや、これが大違い。主人公として選べるキャラを一新し、グラフィックも格段に良くなり、操作性にも改良を施してあるなど、完全なる新作になっている。しかも、今回は恋愛要素も盛り込まれ、誰とどのくらい親密になるかでエンディングが変化するという。これはなかなかおもしろそう。9カ月前と同じ某量販店のレジで「DSの『くるくる◇プリンセス 〜夢のホワイトカルテット〜』ください!」ときっぱり言って、買ってきた。やっぱり恥ずかしかった……。
実在のグランプリシリーズのように世界各地を転戦するストーリー
前作では、町内大会などのローカルな試合を勝ち上がり、訓練を積み重ねながら最終的に世界の頂点を極めるという内容だったが、今作の主人公は初めから国内を代表する選手のひとりという位置づけらしい。最初の代表選考大会で規定の順位内に入ることができると、それ以降はアメリカやカナダなどの世界各地で行われる大会を転戦することになる。さながら実際のグランプリシリーズを彷彿とさせる展開で、途中、GP(グランプリポイント)を獲得できる本戦に出場するか、それ以外の大会に出るかの選択を迫られる場面もある。
序盤からいきなり「世界でも通用するスケーター」という設定に加え、前作ではまだるっこしく思えた日常生活やトレーニングの部分が短縮されたことで、テンポ良くゲームを進められるようになった。また、今回の主人公4人は、ルックスや性格が違うだけでなく、スケートの才能にも差異を付けてある。例えば、ジャンプが得意な「凜」は初めからトリプルサルコウを飛べるが、他のキャラは3回転ジャンプを持っていない。「まゆり」はコンビネーションジャンプ、「ゆうな」はスピンというふうに、得意分野がそれぞれ異なるわけだ。その素質を伸ばしてやるのか、あるいは自分好みのスケーターに育てるかはプレイヤーに委ねられている。前作よりもキャラクターの育成で自由度がアップしたのがよい。
主人公に、体力、運動、芸術という3つの能力値があるのは、前作と同じ。体力値は持久性と直結し、体力がなくなると技の入力時間が半分に減ってしまうので、演技の終盤がつらくなる。運動値が上がると技の入力受付時間が長くなるので、多少のミスが出ても挽回しやすい。最後の芸術値は、採点時の「構成点」に影響するとともに、これを上げることで演技に使用できる楽曲も増える。これらの能力値を伸ばすには、トレーニングセンターなどでミニゲームに取り組むのだが、前作の「おすしトレーニング」(回転寿司のレーンを流れてくるお寿司を次々と食べさせるというミニゲーム)などに見られたシュールさはやや薄れて、わりあいと普通になった印象。と見せかけておいて、「ゲームセンター」という場所に「くるくるフード」と名を変えて登場したりするので、やっぱりどこかシュールである。
ミニゲームの難易度は、種類にもよるが全般的に低め。それでもつらい場合の救済措置として、選択肢を選ぶだけでもある程度は能力値を上げられるようになっているところは、対象年齢を考えての配慮だろう。例えば、「びじゅつかん」で「絵をかんしょうする」を選ぶだけで、芸術値が少し上がる。
また、今回は主人公の恋愛対象となる男の子たち(いずれもスケート選手)も登場するので、サブキャラはかなり増えたが、どこの国に行っても街の作りが変わらず、スケートショップなどの店長も同じ顔と(一応「兄弟」や「いとこ」という設定にはなっているが)、世界各国を転戦するわりには見た目の変化に乏しいのが残念。恋愛要素についても、基本的には男の子全員が主人公を好いてくれるので、あまりにも簡単すぎるかなという印象はある。ただ、これが本作のメインではないので、展開をだれさせないためのアクセントにはちょうどよい。
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