暴れるマシンをねじ伏せる“快感”がここに:「頭文字D EXTREME STAGE」レビュー(1/2 ページ)
アーケードから始まり、PS2、PSPと展開してきたセガの「頭文字D」シリーズが、満を持してPS3に登場して1カ月半。熱き走り屋たちの世界をいまこそ追体験しよう!
「頭文字D」シリーズ最新作がついに登場!
1995年に週刊ヤングマガジンで連載がスタートし(現在も連載中)、3DCGが話題となったアニメーションでさらなる人気を獲得。ついには実写映画化までされたレーシングコミック「頭文字D」。主人公・藤原拓海が駆るAE86型スプリンタートレノ=通称「ハチロク」の存在をこの漫画で初めて知った、という人も多いのではないだろうか。20年以上も前に製造されたクルマだというのに、いまだに街でよく見かける(「藤原とうふ店(自家用)」と書かれたモノもたまに……)のだから、その影響力は絶大である。
また、ゲームに目を移してみても、近年発売されたレースゲームで「ハチロク」が収録されていない作品が果たしてあるだろうか? 数少ない国産ライトウェイトFR車だから、という理由もあるだろうが、実際は「頭文字D」の影響と言っても過言ではないだろう。
そんな人気コミックを題材としたレースゲームの最新作が、この「頭文字D EXTREME STAGE」だ。前作のPSP版「STREET STAGE」から2年。据え置き型ハード用としてはプレイステーション 2版「Special Stage」以来、なんと5年ぶりである。その間、アーケード版「Arcade Stage」がバージョンアップを重ねていただけに、ファンにとっては待ちに待ったリリースといえよう。
人気のアーケード版を踏襲したシステム
ゲームは、PS3ならではの美麗なムービーからスタート。アニメ版の歴代テーマソングを手がけたm.o.v.e.の新曲「DIVE INTO STREAM」に、走る前からテンションアップは必至か。m.o.v.e.はエンディング曲「KEEP ON MOVIN'」とゲーム内曲(デフォルトでは隠し)「蒼穹のflight」も提供しており、後者の解除方法は本作の公式サイトに掲載されているのでチェックしよう。
オープニングムービーが終了すると、続いてキャラクターデータの作成に移る。このキャラクターデータは、アーケード版「ARCADE STAGE 4」のICカード(免許証)に相当し、性別や名前、マイキャラクター(いわゆるアバター)やクルマなどが記録される。最大10個まで作成可能だ。また、マイキャラクターを構成する髪型や顔の輪郭、服装などの各種パーツは、バトルに勝利したり、タイムアタックで記録を更新したりすることで新しいモノが手に入り、ゲーム中に随時エディットできる。
クルマは、原作に登場した23車種を収録(7月24日から新たに3車種が無料配信されている)。お金の概念がないため、ほかのレースゲームでは高額なR34 GT-R(V-specII Nur)などのハイパワー車をいきなり手に入れることができる。また、1つのキャラクターデータでクルマを3台まで所有することができ、いつでも入手可能だ。
キャラクターデータを作ったら、いよいよゲーム開始。本作には「公道最速伝説」、「タイムアタック」、「リプレイ」、「ネットワーク」、「オプション(ゲーム環境の設定)」、「コミック」という6つのモードが用意されている。「公道最速伝説」は各地の峠でライバルと戦う、お馴染みのモード。「タイムアタック」ではルートや天候、時間帯などを任意に設定して走り込むことができ、その走りを保存すれば「リプレイ」で鑑賞可能だ。
そして、本作の目玉の1つが、オンライン対戦の「ネットワーク」。また、原作の名バトルを収録したデジタルコミック「頭文字D プロジェクトD始動編 Vol.1〜5」が現在、PLAYSTATION Storeで販売されており(各巻320円)、購入すれば「コミック」で読むことができる。原作を知らない人でも、これを読んでからプレイすれば本作を余すところなく楽しめるというわけだ。
リアル系とは一線を画す挙動に戸惑いつつも……
さっそく、本作のメインモード「公道最速伝説」にチャレンジしてみる。秋名湖、妙義、赤城、秋名、いろは坂、筑波、八方ヶ原の全7コースで待つライバルたちにバトルで勝つ、という単純明快なモードだ。コースやライバルにレベルは設定されているものの、プレイ順は決まっていないため、いきなり超上級コースの八方ヶ原で東堂塾の連中に勝負をしかけるのもOKである。とはいえ、筆者は腕にまったく自信がないので、初級の秋名湖で一番レベルの低い武内樹から挑戦してみた。
バトルの前後に挿入されるイベントシーンは、リアルタイム水彩シェーディングによって原作の絵のタッチを再現。もちろん、アニメ版の声優陣によるフルボイスで、自分の車種によってそのセリフも変わってくる。また、一度倒したライバルとは雨の中でのレース、レインバトルを行うことができ、イベントのセリフももちろん変化。原作のファンなら思わずニヤッとしてしまうシチュエーションがあるかも?
さて、樹の“ハチゴー”とのバトルに挑んだわけだが、クルマを走らせてみて最初に感じたのが、非常に滑りやすいという点だ。選んだクルマがFR車(FC3S)というのもあるかもしれないが、容易にリヤがスライドする印象が強い。最初の数分は、コーナー脱出後のストレートでまっすぐ走るのも困難だったのである。
ただし、これにはひとつ、個人的な理由がある。筆者は通常のコントローラでレースゲームをプレイする場合、昔から方向キー派(周囲では少数派と言われている)なのだが、本作のハンドル操作は方向キー非対応なのだ。方向キーを小刻みに入力するいつもの微調整ができないため、慣れるのに少々時間がかかったわけだ。なぜ非対応なのかは分からないが、同じ思いをしたプレイヤーはいると思うなあ……(いますよね?)。
ということで、初プレイで樹に完敗したわけなのだが、その後、左スティックでの操作に慣れると、中級コースの妙義の最強ライバル、中里毅までほぼノンストップで進めることができた。その要因はドリフトコントロールの上達……と胸を張って言いたいところだが、実際は、ガードレールや壁にヒットしてもスピードが落ちることがほとんどないからだろう。そのため、初心者でもドリフトのコツさえつかめばある程度戦えるはずだ。ただし、ガードレールに当たってもOKという点は賛否両論だろう。もちろん、当てない走りが理想的だし、アニメ版のバトルシーンを思わせるようなカッコいいリプレイをぜひ残したいものである。
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