Co-opプレイの導入経緯から開発中の面白いエピソードまで――「バイオハザード 5」の気になるアレコレを聞いてきた:「バイオハザード5」発売記念インタビュー
「バイオハザード5」の発売前日となる3月4日、プロデューサーの竹内潤氏にバイオハザード5のシリーズでの位置づけやコンセプト、Co-opプレイの導入経緯などを伺う機会を得た。シリーズファンに衝撃を与えた“ジル・バレンタインの墓”についてのコメントも。
カプコンのプレイステーション 3/Xbox 360用ソフト「バイオハザード5」は、初代「バイオハザード」で主人公を務めたクリス・レッドフィールドが、遠きアフリカの地にて、相棒のシェバ・アローマとともにシリーズ最大の恐怖に遭遇するサバイバルアドベンチャー。パートナーと力を合わせて数々の難局を乗り切る“Co-op(協力)プレイ”(関連記事→2人だから戦える――「バイオハザード 5」Co-opプレイを体験してきた)など、新たな試みにも挑戦している。
発売前日となる3月4日、プロデューサーの竹内潤氏にバイオハザード5のコンセプトやシリーズでの位置づけ、Co-opプレイの導入経緯などを伺うことができた。シリーズファンに衝撃を与えた広告“ジル・バレンタインの墓”にも触れているので、ぜひとも最後まで目を通してもらいたい。
――まず始めに、バイオハザード5のシリーズでの位置づけ、コンセプトについて教えてください。
竹内潤氏(以下、敬称略) バイオハザード5は、大きなターニングポイントを迎える作品にしようという意気込みで開発を始めました。ストーリーとしては、起承転結の“転”にあたるものが展開します。また、今回は“光と闇”“絆”という2つのテーマがあります。光と闇は、これまでCGが苦手としていた明るい表現と、そこから生み出される影を使った新しい世界の構築のことで、Co-opプレイなどで絆を表現しています。これ以外にも、2つのテーマはゲーム中のいろんなところに散りばめられています。
――Co-opプレイの話が出ました。Co-opプレイは、どういった経緯で導入されたのでしょうか?
竹内 「バイオハザード4」を超える、次世代機ならではの要素を取り入れようと考えた時に“2人で遊ぶバイオハザード”を思いついたんです。2人で遊ぶバイオハザードなので、どちらか片方のキャラクターが死んでしまうとゲームオーバーになります。これだけ聞くと非常に厳しいと言われそうですが、このルールを採用したことで、協力というものをより濃く表現できたのではないかと考えています。ただ、協力を無理強いしているわけではありません。私が「ロスト プラネット エクストリーム コンディション 」(以下、ロスト プラネット)の開発に携わった時にも感じたことなのですが、複数のプレイヤーで遊ばせたい場合、あまり作り手が“こう遊んでください”と指示するのは良くないんです。作り手が提供するのは“遊び場”で、その中でユーザーがさまざまな楽しみ方を見つける。Co-opプレイを導入したことで、そんな体験を提供できていると考えています。
――あくまで遊び場の提供に留めたとのことですが、開発中にはアイディアもいくつか出たと思います。
竹内 一番最初にCo-opプレイの話をした時に、プランナーから“ツープラトンみたいなコンビネーション技を入れたい”という案は出ました。ひとりがもうひとりを抱えて放り投げるとか、ロスト プラネットが発売されていたので、手榴弾を投げて、それを撃つと広範囲に敵を倒せるとか。ただ、実際にやってみると、あまり面白くはなりませんでした。話だけ聞くと面白そうなんですけど、先ほども言ったように、作り手側がユーザー同士を協力させようと積極的に仕掛けてしまうと、遊び方が固定されてしまい、作り手の意図通りの遊びしか生まれなくなるんです。同じ手榴弾でも、パートナーの位置を考えずに使用した時に“おいおい、今投げるなよっ!”となったほうが楽しいですよね。そういった理由もあって、アイテムの受け渡しなど、プレイヤーがどうしてもやりたいと思える要素以外はすべてハズしました。
――シリーズファンと新規ユーザーの違いなどは意識したのでしょうか。
竹内 意識していますし、ここでもCo-opプレイが有効に作用すると考えています。シリーズファンは非常に熟練されたプレイヤーですので、シリーズに初めて触れるユーザーをけん引してもらえます。シングルプレイのみだったとしても、難易度を細かく設けていますので、初心者も上級者も自分に合ったレベルで楽しめるはずです。
――新規ユーザー向けに、こういう遊び方をすれば生き残れるなどのアドバイスはありますか。
竹内 シリーズの伝統でもありますが、いっぱい死んでください(笑)。キャラクターが死ぬことにペナルティはありませんので、死んで覚えてください。ひとつアドバイスするなら、敵との距離感が一番大切です。ちなみに体験版は意図的に難しいところを切り取って出していますので、あれを乗り越えられるユーザーは、それほど苦労することなくゲームを楽しめると思います。
――クリスとシェバの能力に違いはあるのでしょうか?
竹内 能力に差はないです。ただ、敵がひるんだ時に出せる近距離攻撃には違いがあります。シェバのほうが派手でバリエーションが多くなっています。
――武器の豊富さもシリーズの魅力です。今回はどのくらい用意していますか。
竹内 正確な数は把握していないのですが、バイオハザード4以上はあります。同じ種類の武器であっても、細かい違いが出る武器なども多数用意しています。個人的に気にいっているのは、ここでは話せない銃なのですが、シリーズファンには“あぁ!”と言ってもらえるものだと思います。
――ゾンビ(敵)を使ってみたいという意見を聞くことがあります。バイオハザード5で、そういった考えはなかったのでしょうか?
竹内 バイオハザードを作る時には、開発スタッフの間でも必ず一度は出る話ですね。ただ、バイオハザードシリーズは“恐怖”をテーマにしているタイトルですので、プレイヤーが敵を操作して遊ぶ、というのは何か違うと考えています。個人的な意見ですが、今後もそれが実現することはないと思います。
――恐怖の話題が出ましたが、光と闇の表現以外で、恐怖を盛り上げる演出はありますか?
竹内 バイオハザード5は、16:9の画面比率になっています。ここにはかなりこだわっていて、オフラインのCo-opプレイでも、16:9のまま2画面に分割しています。これはゲーム中の演出で、16:9の画面比率をユーザーが分からないレベルで変化させているからなんです。こうすることで、それぞれのシーンに合わせた恐怖を表現しています。
――開発中の面白いエピソードなどがあれば教えてください。
竹内 いろいろありますが……。シェバのキャラクター設定は早く決まったのですが、かわいく作ることができなくて、かなり苦労しました。デザイナーも迷走してしまって、一時期は顔が関西では有名な女性芸人さんに似たこともありましたね(笑)。女性キャラクターにこだわりすぎだと開発スタッフに言われるくらい、厳しいチェックをしていましたが、最終的には眼力のある、非常に魅力的なキャラクターが生まれたと考えています。
――キャラクターといえば、意味深な墓の広告が出て以来、まったくと言っていいほど触れられていませんが、ゲーム中、ジルが登場することはあるのでしょうか?
竹内 プレイして確かめてくださいと言いたいところですが、墓が出てくるぐらいですから……重要なポジションにいるというのは間違いありません。登場するしないは別として、ストーリーのキーウーマンになっているとだけ。
――発売記念の新情報があると聞いたのですが……。
竹内 シリーズファンから要望の多かった「THE MERCENARIES(ザ・マーセナリーズ)」をクリア後にプレイできるようにしています。加えてダウンロードコンテンツとして、Co-opプレイでザ・マーセナリーズが楽しめる“DUOモード”を、発売日当日から無料配信します。2人で協力してプレイするザ・マーセナリーズということで、さらに遊び応えが増しているはずです。
――竹内さんが考える“バイオハザードらしさ”とは何でしょうか。
竹内 バイオハザードは、ユーザーに楽しさと同時にストレスを与える作りになっていると考えています。だからこそストレスから解放された喜びが生まれるわけですが、このストレスと解放のバランスがうまく取れていないと、バイオハザードらしくはなりません。それとバイオハザードを作る時、開発スタッフが一番強く意識するのは“バイオハザードを作る”ということなんです。例えばロスト プラネットならTPS(三人称視点のシューティング)を作る、ストリートファイターIVなら格闘ゲームを作るになるのでしょうが、バイオハザードの場合は、ジャンルがどうこうではなく、バイオハザードとして面白いものを提供しなければならないんです。
――最後にユーザーへのメッセージをお願いします。
竹内 バイオハザード5は、クリスとウェスカー、初代バイオハザードから因縁のある2人が、何らかの結末を迎えることになります。シリーズファンの方は、そこを楽しみにしていただきたいと思います。今回のバイオハザード5で、シリーズを初めてプレイするという方は、絆というテーマに注目してください。非常に重いテーマですが、さまざまな絆を描いていますので、ストーリーを追っかけるだけでも、まったく損はしないゲームになっているはずです。オンライン環境がなくても楽しめますし、シングルプレイも十分に遊べます。あえて言うなら“全方位スキなしバイオハザード”になっていますので、ぜひ手に取って遊んでいただきたいと思います。
――本日はありがとうございました。
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