DSで生活が便利になる――任天堂・岩田聡社長と宮本茂専務、ゲーム機の現在と未来を語る(6/6 ページ)

» 2009年04月10日 13時10分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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ビデオゲームが持っているノウハウとは

――DSというハードの多様化についてうかがわせてください。生活シーンのなかにDSを持ち込もうとすると、iPodのようにユーザーに合わせたハードの形が必要になってくるのではないでしょうか? また見た目だけではなく、例えば「ゲームができないDS」といったものの可能性があるかということも合わせてうかがえればと思います。

岩田 任天堂はビデオゲーム屋なので「ゲームのできないDS」というのは考えたことがありません。ゲームという遊んだ人を笑顔にすることのできる非常にパワフルなエンターテインメントを、1人でも多くの世界中の人たちに理解してもらいたいので、「触るきっかけはゲームではなくてもいいですが、ゲームは触ってほしい」と思っていますから。

 そして、我々のように「5歳〜95歳まで」とか「ゲーム経験のある人もそうではない人も」という形で幅広いお客さんの層をターゲットにしようとすると、あまりたくさんの種類を作ってしまうと今度はお客さんが「一番正しいものを選ぶためには、どうしたらいいんだ」ということになってしまいます。選択肢というのは「多すぎると選べなくなってしまう」という問題もありますから、我々は「少数の選択肢でお客さんにベストなものを比較的易しく選んでもらう」ということに重点を置いているので、おそらくiPodと同じビジネスモデルにはならないでしょう。

――DSを学校で使うとなると必ず持っていない人が出てくることになると思うのですが、そうした時は学校や政府が補助金を出した方がいいのでしょうか? また、定額給付金でDSを買ってくれる人はどれくらいいると思いますか?

岩田 私は「エンタテイメントの業界はガバメント(政府)を頼ってはいけない」と思っています。ですから、定額給付金でDSを買ってくださる方がいればもちろんうれしいですが、「皆さんが一番価値があると思うもの」に使われるべきだと思います。

 「あらゆる学校でDSを全員の生徒たちが持ってくることを前提にする」ということは壮大な(笑)ビジョンだと思います。そこまでには時間もエネルギーもかかるでしょう。

 そもそも長年の間、学校から見ればビデオゲーム機というのは敵のような存在だったわけです。ですから、今のように「学校の教育に使いたい」と言っていただけたり、現実に一部の学校が「DSを授業で使って成果を上げている」という報道がなされたりするようになるというのは、我々長年敵扱いされていた側からすると奇跡のようなことがもうすでに起こっているのです。ここから「あらゆる学校で全員に持ってきてもらう」というところまでいくにはまだまだ時間がかかると思うので、その中で「(DSを)持っていない人がどういう風に扱われるべきなのか」というのは考えていくことかなとは思います。

宮本 少し僕が言い過ぎたかもしれませんが、クラスルームで使う場合には「教室の人数分の機械をクラスで準備する」とかいろんな対策を考えています。公共のスペースで持ってきている人だけが受けられるサービスでは、「(サービスを受けるために)できるだけ1人1台買ってほしい」と(思っています)。しかし、「学校では(1人1台買ってほしいというのは)なかなか難しい」という現状も考慮したシステムを作っています。

――DSとWiiが将来的に連携するようなことはあるのでしょうか?

宮本 一応、我々テーマを持っていまして、DSは「所有者の生活を豊かにするマシン」と決めています。Wiiの方は「取り巻く人々を笑顔にするマシン」ということでコミュニケーションの道具として設定しています。DSは「(コミュニケーションの道具であるWiiとは違い)プライベートなものとして生活を便利にしていくものにしよう」というテーマで開発を進めています。

 コネクティビティ(接続性)という面では、DSとWiiは非常に簡単につながるようになっています。一部今使い始めていて、まだ本格的に使ったものは発表できていませんが、開発はすでに進めています。

岩田 「両方あるともっとうれしい」というのはいいのですが、「両方ないとダメ」としたら、お客さんからすると「両方買え」と無理やり言われているみたいで、「任天堂、傲慢(ごうまん)だぞ」と思うようなムードを作ってしまいます。また、「そういう提案はあまりお客さんの受けがよくないな」ということを、ゲームキューブ、ゲームボーイアドバンス時代に私たちはちょっと感じていて、今は「『両方あるともっとうれしい』という形でこの2つのインテグレーション(統合)を考えたいな」と思っています。

ゲームキューブ(左)、ゲームボーイアドバンス(右)

――一般的に子どもは勉強が嫌いなので、DSが勉強の道具として使われるようになると、DSは子どもから嫌われてしまったりしませんか?

宮本 そういう言い方もできるでしょうが、そんなに心配していないですね。「日常使っていて当たり前のことになるということがすごく大事だ」と思っています。DSがなくなったとしても、「携帯電話ではない携帯型の何かとても便利なマシンを、任天堂はまたずっと作り続ければいい」と思っています。先生や親がそういうものを使っていることをだんだん理解してくれるようになることも、とても大事だと思います。

岩田 飛行機の時間が迫っているのですが、どうしても言いたくなったので言わせてください。ビデオゲームは「つまらないことを楽しく人に続けてもらう」ということについて、ものすごくノウハウがあるものだと思うのです。僕らはビデオゲームを触ってもらって、すぐに「つまんない」「飽きた」と言われてもらうと困るので、お客さんにとってのご褒美を途中にいっぱい散りばめながら続けてもらうということについて、ものすごく鍛えられているのです。すいません、私は社長でもうゲーム開発者は引退しているのですが、心はまだゲーム開発者なものでつい喋りたくなりました、失礼しました。

岩田聡社長(左)とおどけた表情でポーズをとる宮本茂専務(右)
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