1999年9月16日

ローカライズで成功するには?

3社の事例を基に海外でヒット狙う

 今回のCEDEC 1999では,「ローカライズの成功事例 〜日米欧の市場性に応じたゲームづくり〜」というプロラムも用意された。

 このセッションでは,司会をエレクトロニック・アーツ・スクウェアの開発部長,中里英一郎氏(写真)が担当。海外でもゲームを販売(あるいはその逆)して成功した3社から,パネラーを招き,その成功事例を話してもらうという形式をとった。このセミナーに集まったのは,ディレクターが中心。

 まず,壇上に立ったアイドス・インタラクティブのプロデューサー,山口尚氏は,アイドスの本社が欧州にあることを説明した上で人気3Dアクション「トゥームレイダース」の展開を説明。

 欧州市場では,発売するタイトルを英・独・仏・伊・西の5カ国語対応にする手間がかかることや,欧州でもコンシューマーゲームはPCゲームの3倍も出荷されていることなど,市場の状況を紹介し,欧州でソフトを発売するときの注意点として挙げていた。

 また,言語だけでなく,欧米と日本のゲームの難易度についても触れた。欧米では,初めからゲームの難易度が高く,日本は先に進むほど難易度が高くなるという違いがあるという。集まった受講者たちは,熱心にメモをしていたぞ。

 マイクロキャビンの常務取締役,田中秀司は,スケボーゲーム「STREET SK8ET」(邦題:ストリートボーダーズ」の事例を紹介。

「国内ではイマイチだった」(田中氏)というこのタイトルは,欧米で大ヒットした。田中氏は,現地の販売メーカーとの契約について,失敗しない方法やコツを自身の体験を交えて教えてくれたぞ。

 最後に登場したソニー・ミュージックエンタテインメントの山本正美氏は,忍者アクション「天誅」のディレクター。

「天誅」は,国内よりも海外のほうが売れたタイトル。海外でウケた理由として,山本氏は,「欧米人はゲーム内容はもちろんだが,同時に技術的要素を重要視する傾向がある」と説明。

「天誅」の3D技術も評価されたのでは,と推測する。ほかにも純和風な世界観も人気だったようだ。だが,山本氏は「海外の販売メーカーからのリクエストも多い」ことも強調。「ハラキリ」を追加したり,手裏剣をナイフに変更したりと,単純に海外にタイトルを持っていくだけでは海外の販売メーカーがOKしてくれないという。

 この件に関しては,山口氏や田中氏も触れており,キャラクター人気(欧米人はマンガを読まない)や文化の違いを意識すべき,とした。

 海外での成功は,地元のメーカーの意見を聞くことも成功の秘訣であることも事実。一方で,海外メーカーのニーズだけを聞いても,またゲームの出来に影響してしまうことをパネラーたちの話から理解できた。

 中里氏は,「異なる国でソフトを発売して成功するには,クリエイターとして譲れないところはちゃんと主張し,その国でしか分らない文化などに対応するため海外メーカーの意見も取り入れていくことが大事」とセッションをしめた。


[原 毅彦,SOFTBANK GAMES]


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