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地デジのHDTV化を担う? 純国産HDノンリニアシステム登場(1/2 ページ)

» 2004年01月26日 18時10分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 筆者が「HDWS1000」を現実的と呼ぶ理由は、ターンキーシステムで430万円という価格だ。十分高いじゃん、と思われるかもしれないが、プロ用放送機器として考えたらかなり安い。例えばソニーのHD対応ノンリニアシステム「Xpri」は、1462万円する。もちろんHDWS1000とXpriでは、できることに相当の差があるのは事実だが、機能を絞ったとはいえ普通にHDが編集できるシステムで430万円は、かなり魅力的だ。

カノープスのHDノンリニアシステム「HDWS1000」

 現在HD番組の制作費は、SDのそれとほとんど変わらない。そのため番組制作は、収録だけは一応将来何かに使うかもしれないということでちょっと奮発してHD収録になり始めている。だが、編集機材には膨大な設備投資が必要になるため、あまり積極的に行なわれていないという現状がある。

 試しにコンピュータを使わずにHDの編集システムを組むとどれぐらいかかるものか、ざっと見積もってみよう。

 まずABロール編集ぐらいはやりたいということでVTR3台、これにHD用小型スイッチャー、編集機、デジタルミキサーという最小セットでも、だいたい2000万円から2500万円ぐらいになる。これだけ投資しても、報道用の1チェーンができるぐらいで、通常の番組編集には対応できない。もし通常の番組対応用として大型スイッチャーを中心に編集室を構築すると、一部屋およそ1億円から2億円といったところだろう。

 これだけ設備投資がかかるのは、専用ハードウェアを使うリニア編集システムだからだ。それだったらXpriのようなノンリニアシステムのほうがまだ安い。ただしXpriは、編集業界人の間ではなぜか評判が悪い(筆者自身はXpriを使ったことがないので、どこがどうと具体的に指摘できないのだが)。

 そこにHDWS1000の430万円である。業界人としてはこれに魅力を感じないわけにはいくまい。特に小規模なプロダクション、あるいはSOHOクラスのフリーランスには、かなり魅力的に映る。

なにがどこまで可能か

 ではこのHDWS1000、どのぐらいまでの編集に対応できるのだろうか。先日のプレス発表で行なわれたデモを参考に検討してみよう。

・編集ソフト

 HDWS1000の基本的な操作は、SD編集ソフトとして販売されているEDIUSとほぼ同機能の「EDIUS Pro」を使用する。操作性も、デモを見た感じではほぼ同じだ。

編集ソフトは専用の「EDIUS Pro」を使用

 EDIUSの操作性に関しては、コンシューマーでは賛否両論あるが、プロではそれほど問題にならないだろう。というのは、どんなマシンでもソフトでも、その特性を把握して、支障なく常に一定のクオリティの番組が作れるというのが、「プロの編集者」という商売だからだ。多くの場合プロに必要なのは、機能の豊富さよりもむしろ、操作に対するレスポンスの良さと、システムの安定性である。もう一つ加えるならば、「マニュアルを見なくてもだいたいわかる常識的な操作性」だろうか。

・IN/OUT

 入出力はHD-SDIとSDI共用となっており、HDとSDのソース混在で編集が可能だ。具体的にはSDソースのクリップをタイムラインに置いた時点で、HDにアップコンバートされる。HDの入出力は、現時点では1080iのみ。720pは今後の動向をみて考えていくという。

HDWS1000の背面端子。オーディオ端子はない

 注意すべきは、このシステムにはSPDIFやAES/EBUといったオーディオの入出力がないところだ。基本的にはHD VTRに対してのシステムなので、オーディオはエンベデッドオーディオとして取り込むことになるのはちょっと面倒だ(この辺になると、もうなんのことやらさっぱり分からず、読み進めるのを挫折する読者も多かろうと思うが、まあそういうことなんだと思ってください)。

 またそのエンベデッドオーディオも、現時点でのサポートは2chのみ。EDIUS Pro内部では複数のオーディオトラックが使えるが、それらはミキサーを通して2chにミックスダウンしたのち出力される。マルチトラックのサポートは今後に持ち越しということであった。

・コーデック

 HDコンテンツのキャプチャーには、オリジナルの「Canopus HD Software Codec」を使用する。約1/7圧縮(約100Mbps)のソフトウェアエンコードだ。ハードウェアエンコーダでは将来変化する状況に対応できないとして、あえてソフトウェアエンコードを採用したという。確かにこの判断は正しい。

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