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ACCSと中国、著作権をめぐる“牽制”

» 2004年01月28日 22時34分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 日本企業が中国に進出する上で、頭が痛いのは著作権侵害の問題。中国側でこれを取り締まるよう、求めていく必要がある。ただし、十分注意しなければ足元をすくわれる可能性もある――。

 そう主張するのは、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)だ。同協会が中国で、どのような形で著作権問題に取り組んでいるのか聞いてみた。

国家版権局のプレッシャー

 ACCSが中国に上海市事務所を開設したのは、2003年10月のこと。もちろん目的は、日本製品の違法コピーがあふれ、“被害額は兆の単位に上る”ともいわれる状況を改善するためだ。

 ACCSの久保田裕専務理事は、「日本企業の特許を守るよう、中国政府に要求を伝えている」と話す。もっとも、それによる反作用もありえるという。

 久保田氏は、日本人留学生が非難された西安のデモ騒動や、広東省での日本人団体客による“集団買春報道”などを引き合いにしながら、中国に存在する根強い反日感情を指摘する。このため、ACCSが著作権保護を要求すると、「玉突き的に、日系企業への風当たりが強くなる」という。

 具体的には、こうだ。中国で著作権の取り締まりを行っているのは「国家版権局」と呼ばれる組織だが、同局は、行政罰としての執行権限を持っている。その国家版権局が、中国にある日系企業への立ち入り捜査を狙っている、と同氏は主張する。

 「われわれが得ている情報ではどうも、当局にそうした動きがあるようだ」(同氏)。

 仮にこの捜査で、日系企業の社員によるソフトウェアの使いまわしが発覚すれば、摘発も可能。そうなれば、「自分のところで著作権侵害をしておきながら、われわれだけに著作権保護を訴えるのか」という理論も成り立ちかねない。

 もちろん、こうなってしまっては「日本のマンガ、アニメを守れというわれわれの運動も、説得力を失う」(同氏)。ACCSとしても、まずは足元を固めるべく、中国にある日系企業の著作権意識の強化を図っていると説明した。

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