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P2P企業vsコンテンツ業界、第2ラウンド始まる

» 2004年02月03日 17時29分 公開
[John Borland,ITmedia]
ZDNet

 オンラインファイル交換の今後を左右するであろう審理が、2月3日に米カリフォルニア州パサデナの連邦控訴裁判所で開廷、エンターテインメント業界とファイル交換サービス企業を代表する弁護団が再び法廷で対決する。

 米連邦地裁は2003年春、「GroksterやMorpheusなどの分散型ファイル交換ツールの配布は合法であり、これらのネットワーク上で発生する著作権侵害に対し、サービス運営企業は法的責任を負わない」とする判決を下した(2003年4月の記事参照)。3日からの審理では、第9巡回区の米連邦控訴裁がこの判決の是非を検討する。

 昨春の地裁判決はレコード会社と映画会社にとって予想外の敗北だった。これらの企業はそれまで、Napsterなどのファイル交換サービス企業を閉鎖に追い込む判決を勝ち取っており、GroksterやMorpheusを運営するStreamcast Networksにも同様の判決が出ると見込んでいたからだ。今度の控訴審では勝利を守る側に立つファイル交換サービス企業は、これは自社製品、さらにはファイル交換業界という枠を超えた問題だと主張している。

 Streamcast Networksのマイケル・ワイスCEO(最高経営責任者)は、「これは海賊行為に関する問題ではなく、技術革新を管理する主体がどこかという問題だ。エンターテインメント業界は、どんな技術が第一線で広まるかを判断する上で、過去に汚点を残している」と話している。

 控訴審では先の審理と同様、ハイテク企業は自社の製品を購入、利用したユーザーの違法行為に対し、責任を負う必要があるかどうかを最終的に判断することになる。この問題は、P2P業界にとどまらない広範な影響を持つ。

 ファイル交換ネットワークは主に著作物の違法交換に用いられているとの見解に、異を唱える人はほとんどいない。レコード業界は実際に、Kazaaなどのサービスを利用してネットで楽曲を交換している個人ユーザーを提訴している。その勢いは衰えることを知らず、1月にも一連の訴訟が起こされている(1月22日の記事参照)。

 一方でファイル交換を支持する側は、だからといって、必ずしもP2Pソフト配布企業が責任を負うべきとは言えないと主張している。こうした向きによると、ファイル交換の先駆けとなったNapsterは、Napsterネットワークのディレクトリサービスの機能を果たす中央サーバを運営していたが、新世代のファイル交換企業はソフト開発はしていても、ネットワークの運営はしていないという。彼らはさらに、P2P技術は合法的な目的に利用できるとも主張している。

 スティーブン・ウィルソン連邦判事は2003年4月、映画会社がかつて著作権保護の見地から反対していたビデオデッキと、ファイル交換ソフトを同等と見なすことに同意する判断を示した。

 このとき同判事は「被告はソフトの配信とサポートを行っており、合法的な用途に使うか違法な用途に使うかはユーザーが判断している。GroksterならびにStreamcastは、著作権侵害に用いられる恐れがある家庭用ビデオデッキやコピー機を販売する企業と、大きくかけ離れてはいない」と説明した。

 これに対してレコード業界と映画業界は、ウィルソン判事は分析の段階で間違っていたと主張。先のNapster訴訟では、企業が自社の製品が違法に利用されていることを認知していた場合、ビデオデッキと同様の主張――法曹界で言うところの「侵害に当たらない相当量の利用」の抗弁――は適用されないとの判断が下されたと指摘している。

 Napster訴訟において、レコード業界は「Napsterネットワーク上で海賊行為が起こっている」と訴える1万2000通の通知を送付したと全米レコード業界(RIAA)担当弁護士のマット・オッペンハイム氏は話している。現在の訴訟では、RIAAはGrokster、Streamcast、Kazaaソフトを提供するSharman Networksに対し、計800万通の通知を送付済みだという。Sharmanは、GroksterとStreamcastとは別に訴訟を進めているため、今回の控訴審にはかかわっていない。

 米映画協会(MPAA)顧問弁護士のデビッド・ケンドール氏は、次のように語っている。「われわれは(GroksterとStreamcastは)Napsterとまさに同じような事業を行っており、3年前に裁判所がNapsterに言い渡した判決が適用されると確信している。両社はNapsterに欠けていた、優れたビジネスモデルを持っている。自らが所有していないコンテンツを使い、大金をせしめているのだ」

この記事は、ZDNet米国版掲載記事を翻訳したものであり、CNET Networks,Incもしくはその供給元にその著作権が帰属します。Copyright(C) 2005 CNET Networks, Inc. All Rights Reserved.“ZDNet”はCNET Networks, Inc.のトレードマークです。