ヘンリック・ハウトップ・ルンド(Henrik Hautop Lund)教授が新しいものを作られたのだそうだ。その名は「I-BLOCK」。
知っている人も多いだろうけど、ルンド教授は南デンマーク大学のマースク・マッキーニ・モラー製造技術研究所の先生で、一昨年のRoboCup-2002福岡大会に小さなバイキングの「VIKI」チームを引き連れてこられた方だ。そして、その前にはあの「MindStorms」の開発に関った方でもあるのだ。
I-BLOCKはLEGO Duploサイズ(*1)のブロックだ。このブロックそれぞれの中にマイコン(PIC16F876)が入っている。ブロックを物理的に組み合わせていくと、それと同時にマイコン同士もつながっていくのだ。MindStormsの時には基本的には一つのCPUが全体を制御していたのだけど、I-BLOCKはいくつものCPUが組み合わさって働くことになる。
ルンド教授は、1月28日から別府で開催される「人工生命とロボットに関する国際シンポジウム(AROB」で基調講演を行うために来日されているだけど、それに先立った1月26日の午後、東京ヒルトンホテルでお会いできることになった。I-BLOCKを見せてもらえるのだ。うかがったのは、こばやしゆたかと編集部・岡田有花の2人。
「Nice to meet you again!」
私が言おうと思っていたことを先に言われてしまった。コーヒーも自分でサーブしてくれるし、気さくな先生である。
「今までのロボットはcloseなシステムだった。ロボットを買ってきて動かしても、本当の意味で『組み立てる』ことにはなっていない。それはMindStormsやfischertechnikのロボットなどでさえそうだ。I-BLOCKはもっとopenなシステムなんだ。」(*2)
あの自由だと思われたMindStormsでさえ、ルンド教授はクローズドだと言ってしまうのだ。
「もう一つ問題がある。今までのロボットは、それを動かすためのプログラムをPCで作らなきゃいけない。シンタックスやらシマンテックスやらあって難しい話だ。でも、I-BLOCKは違う。ブロックを組み立てるそのことが、そのままプログラムになる。“programming by building”というわけだ。」
「これが、I-BLOCKのピース。なかに“PIC16F876”が入っている。そして、(LEGOとしてのコネクタのほかに)ここに各ブロック二つずつのシリアルポートがあって、これでつながったブロックと『接続』されるわけだ」
「エネルギー(電源)は、四隅にある端子で接続される。(つなぎながら)こんな具合だ。そして、これがバッテリーユニット。このプロッグが、電池(日本で言う006Pの9V電池)とピッタリなんだ」
ほんとに過不足なくぴったりおさまっているのだ。あつらえたみたい。
ユニットにはいろいろな種類があるのだけど、これは表にまとめたものがあるので、それを掲載する(*3)。
種類 | ブロックタイプ | 機能 |
---|---|---|
スタンダードブロック | スタンダード | 演算、コミュニケーション |
バッテリー | 電源 | |
入力ブロック | LDRセンサー | 光の強さ |
LDRセンサーx2 | 光の強さ、方向 | |
マイクx2 | 音の強さ、方向 | |
赤外線センサー | 赤外線の強さ、パターン | |
タッチセンサー | 押されているか否か | |
ポテンションメーター | ダイヤルで値を設定 | |
出力ブロック | ダブルモーター | ±45度の回転 |
モーター | ブロックの上半分がぐるぐる回る | |
8個のLED | 光のパターン | |
サウンドジェネレータ | 音を出す。 | |
赤外線ライト | ワイヤレス通信 | |
ディスプレイ | 液晶ディスプレイ | |
このほか「デジタルコンパス」や「超音波」などのユニットも開発中だそうだ。
また、スタンダードブロックは、さらに次の4種類に分けられる。
・ARITHMETIC BRICKS 「算数ブロック」。加減乗除といった処理を行う。
・CELLULAR AUTOMATA 隣り合ったブロックの情報を得て、それに対しての処理を行う。
・BEHAVIOR BRICKS 「ふるまい」を制御するブロック。「Inspired by Brooks' behavior based system」なのだそうだ。
・NEURAL BRICKS 「神経ブロック」。詳しくは後述。
ルンド教授の話は、このそれぞれのブロックを取り上げる形で進んでいく。
*1 DuploというのはLEGOよりも低年齢むきのブロック。普通のLEGOの4倍の大きさがある。
*2 ルンド教授のセリフは、もとは英語だったものをこばやしが日本語にしてさらに再構成している。
*3 Copyright 2003 .H.H.Lundの表をもとにこばやしが作成。
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