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ヤフーが、プロモーションで繰り返してきた「成功と失敗」

» 2004年02月11日 00時07分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 月間186億ページビュー。Yahoo!JAPANのトラフィックは、いまやメディアとして十分な規模に成長した。このページビューを武器に、各種のプロモーションを展開するヤフーだが、時には失敗もあるようだ。

 2月10日、Web広告研究会フォーラムに登場したヤフーの井上雅博社長は、ネットプロモーションをテーマに講演を行った。過去の実際の取り組みを紹介しながら、どのようなプロモーションが有効か探る内容だった。

Photo ヤフーの井上社長。「(ネットプロモーションで)うまくいったものもあれば、まずくいったものもあって……」

「Yahoo!BB」プロモーションの成功と失敗

 過去の成功事例として、井上氏がまず挙げたのは、Yahoo!BB加入者獲得のためのプロモーション活動。2年間で、Yahoo!JAPAN経由で100万回線を獲得している

 「放っておいて、うまくいったわけではない。専任の担当者がいて、潜在顧客がどういう動きをしたのか、分析した」。ユーザーが申し込みフォームの、どの段階で記入をやめたのか調査するなどしたという。

 もっとも、失敗もあった。まず、発表直後に殺到した何万人かの申し込みを、サーバトラブルから取りこぼしたという。

 「SSLを導入したところ、サーバ性能が思ったよりも2桁低かった。単位時間あたりの申し込みが多く、サーバが次々と落ちた……という失敗をやらかした」(同氏)。

 また、誘導バナーを設置したが、「更新頻度が少なかった」(同)のも反省すべき点だという。同じバナーを1カ月ぐらい回しているうち、“バーンアウト”(=バナー広告の効果消失)が発生したほか、目障りになってしまい、サイトの評判が落ちることにもつながった。

 「飽きさせないよう、新鮮な情報、インパクトを提供することが重要。うちの営業が『バナーは時々変えた方がいいですよ』といったりするかもしれないが、こういう失敗からきている」。

「Yahoo!メール」の成功と失敗

 次に井上氏が紹介したのは、「Yahoo!メール」に新機能が追加されたことを認知促進する、プレゼントキャンペーンだ。期間中、約66万人を新機能紹介ページに飛ばすという成果を挙げた。

 同氏はこの理由を、賞品の選定が優れていた点にあると見る。プラズマTVやデジタル家電など、“話題だが、価格が高めであまりみんなが持っていない”ものにしたことが、プロモーション効果を高めたとした。

 しかし、失敗もあった。応募が殺到したことから「また、サーバが落ちてしまった」。ブロードバンドが普及した今、受け設備の適正規模を予測することは、より難しく、より重要になっているようだ。

「ピンクリボンキャンペーン」の成功と失敗

 Yahoo!JAPANでは、“ピンクリボンキャンペーン”も行っている。これは、乳がんの早期発見を啓発する活動。サイトのトップページをピンク色にするという、大胆なプロモーションを行った(記事参照)。

 これにより、特集ページへ約220万人を誘導したほか、ブランドイメージを上げることに成功した。

 「ブランドイメージを問うアンケートで、『頼りになる』『親しみやすい』などの項目が、のきなみ5〜10%上がった。個人的には、ふーん……という印象だが、マーケティング担当にいわせればこれほど成果が上がることはめったにないようだ」。

 しかし、この活動も失敗を伴った。まず、ユーザーがピンク色のトップページに、拒否感を示したこと。「何をしている、今すぐ元にもどせ」というメールが、1000通単位で届いたという。

 中には、視覚障害者から「ピンク色では、読めない」とする訴えもあった。井上氏は、「(通常の)白色にもどすボタンを、用意すべきだった」と話した。

ヤフオク「オフピークキャンペーン」の失敗

 単純に、失敗に終わったキャンペーンもあった。Yahoo!オークションで時間帯によってアクセスが集中している状況を解決しようと行った、「オフピーク出品キャンペーン」がそれだ。

 特定の時間帯に出品する場合、出品システム利用料を割引するなどの措置をとったが、ユーザーの利用時間を意図的にスライドさせるには至らなかった。

 「まったく、反応なし。無駄な努力になってしまった」(苦笑)。

 井上氏はこうした経験を踏まえ、やはりプロモーションをかけるには“顧客志向”であることが成功のカギになると話す。その上で、ターゲッティングを見定めること、当初の予定と異なる結果が出た際、臨機応変に対応することなどをポイントに挙げた。

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