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「単一フォーマットでなければ参入できない」とWarner特集:次世代DVDへの助走(1/3 ページ)

» 2004年02月12日 20時38分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 Warner Brothersはハリウッドの映画スタジオの中でも、新しいビジネス、新しいメディアに対して積極的な会社だといわれる。その積極性は、たとえば高品質ビデオを収める光ディスク技術に早くから注目し、日本の家電業界とも強く結びつきながら、自らのコンテンツビジネス拡大の可能性を追っていたことからもわかる。

 Warnerは、DVD Forum設立時の幹事会メンバー10社の中に、映画スタジオとして唯一名を連ね、DVD Forumとハリウッドとのパイプ役を自ら買って出た。その結果、映画産業にとってDVDが無くてはならないメディアに成長したことは説明するまでもない。

 もしコンテンツのHD化によって、映画スタジオの収入が増えるのであれば、Warnerは進んでHDコンテンツを、しかも安価に発売することだろう。そして、DVD誕生前夜からの盟友である東芝と同社が、今でも通じているという見方が一般的だ。DVDからの移行がスムーズに行えるAODを、Warnerも支持しているだろう、と推測する人は多い。

 では実際にはどうなのか? Warner Brothersの家庭向けコンテンツ制作・販売子会社であるWarner Home VideoのDVDマーケティング担当副社長のマイケル・ラディロフ氏、同じくWarner Home Videoの事業開発担当副社長の横井昭氏に話を聞いた。

DVD事業の絶好調を強調

 ラディロフ氏によると、現在ワーナーのDVD事業は、文字通り絶好調の状態にあるという。年にワーナーだけで1200ものDVDタイトルをリリース。新作はもちろんだが、近年はスポーツものや、テレビドラマなどでも売り上げを伸ばしている。また、デジタル修復技術の進化により、古い映画のリメイクも進んでいる。

 たとえばワーナーは、古いMGMミュージカルの販売権を取得しており、60年前のフィルムを修復し、ハイクオリティなDVDとして販売。DVD収益を底上げする一因になっている。リマスター作業は簡単なものではなく、12カ月以上かけて高クオリティなソースを作り出しているのだ。

 ラディロフ氏によると、リマスタリングによって生き返る名作はまだまだ多数存在し、「当面はリメイクするタイトルに困らない状態。少なくとも10年以上のストックはある」という。たとえば、初代の「キングコング」はワーナーが保有するコンテンツだが、人気作にもかかわらずDVD化されていない。フィルムの状態が悪く、高画質のDVDに仕上げることが現状では難しいからだ。

 しかし、「2005年には(キングコングの)修復を終え、発売することができるだろう」(ラディロフ氏)と話す。それだけ長いスパンで計画できるほど、まだまだDVDでやるべき事があるというわけだ。実際、当面の間、DVDの年間売り上げ本数は伸び続けると割れている。さらに「欧州は、まだほとんどDVDが普及していない。日米のDVD市場は成熟しているが、欧州はこれから。たとえばイタリアでのDVDプレーヤー世帯普及率は、わずかに11%に過ぎない。DVDには、まだまだ伸びる可能性がある」(ラディロフ氏)。

photo Warner Home VideoのDVDマーケティング担当副社長のマイケル・ラディロフ氏

 新作に加えて旧作のリメイクもヒットし、テレビドラマもヒットとなれば、当面はDVDビジネスに注力する方が安全という考え方もある。しかし、ラディロフ氏はDVDへの注力と、次世代DVDへの取り組みは別のものだと話している。

HDTVの世帯普及率10%がターニングポイント

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