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音から発想する映像制御――ローランドが提唱する「V-LINK」とは(1/2 ページ)

» 2004年02月16日 16時44分 公開
[小寺信良,ITmedia]

 Web上にはさまざまなニュースサイトがあるが、筆者の知る限りどこのメディアでもまだ取り上げられていないイベントに行ってきた。先週2月10日にShibuya O-Eastで行なわれたローランドの新製品展示商談会、「サウンド・スパーク2004」である。(一般公開は翌日の11日)

 ローランドといえば電子楽器メーカーとして世界のトップブランドであり、ちょっとロック系の楽器を囓った人なら知らない人はまずいないだろう。シンセサイザーでは数々の名機を輩出してきたが、最近ではエレクトリックドラムやレコーディング機材などでも知られるようになってきている。日本においては、ヤマハと双璧を成すメーカーだ。

 サウンド・スパーク2004では楽器の新製品デモが素晴らしく、昔取ったキネヅカでレビューの一つもしてやろうかとも思ったが、やはりここはグッとこらえて自分の守備範囲でモノを言うことにする。

 本家ローランドと並んで、映像・DTMのブランド、「エディロール」もこのイベントで新製品を発表した。以前から映像系ではVJ用などのスイッチャーを出していたのは知っていたが、筆者とは畑が違うのであまりちゃんと見たことがなかった。だが今回エディロールの新製品をじっくり見て、これはこれでなにか可能性がありそうな印象を受けた。

民生機がスイッチングできる「V-1」

 「V-1」というシンプルな名前の付いた4chビデオミキサーは、4系統のアナログビデオを切り替えるための小型スイッチャーである。形式としてはA-Bus、B-Bus間をフェーダーによってクロスするME型スイッチャーである。

アナログ民生機がスイッチングできるV-1

 通常、民生機をちゃんとスイッチングするのは意外に難しい。そんなもんドンキホーテでイチキュッパで売ってる切り替え器でもできるじゃないか、と思われるかもしれないが、切り替え器とスイッチャーでは、全然レベルが違うのである。

 いわゆる入力セレクターといった類の切り替え器は、単に結線をてきとーなタイミングで入れ替えているに過ぎない。だから出力には、切り替え時のノイズが入る。映像信号をきれいに入れ替えるには、映像を走査していない部分、具体的にはブランキング区間(垂直同期信号の部分)のところで、別の信号の同じブランキング区間に切り替えなければならないのである。ただの切り替え器でも、プロ用になるとちゃんとこれをやっており、そういうものは「ブランキングスイッチャー」といって、セレクターとは区別する。つまりセレクターはオンラインでは使えないが、ブランキングスイッチャーならオンラインで使えるのだ。

 ただしブランキングでスイッチングするには条件がある。各入力ソースが、完全に同じタイミングで同期していなければならないのである。アナログ機器でも業務〜プロ用機器になれば、外部同期といって、外から入力された信号に対して出力信号を同期させる機能がある。すべての機器に同じ信号を分配してやることで、すべての機材出力の同期が取れるというわけだ。

 筆者が民生機のスイッチングが難しいと言ったわけは、民生機にはこの外部からの信号に対して同期するという機能がないからだ。だがV-1では、A-BusとB-Busそれぞれにフレームシンクロナイザーを装備することで、デタラメのタイミングで走っている民生機の信号でも、強制的に同期できる。フレームシンクロナイザーとは、バリアブルで動く一種のディレイ装置だと考えてもらえばいい。

 本来V-1はクラブVJなど、クリエイティブなところで使われることを想定しているようだ。だいたいVJ用機材なんてのがどれぐらい需要があるのか、筆者はまったく知らなかったのだが、エディロールの方に伺うと、国内よりもむしろヨーロッパで需要が多いそうである。

 だが筆者は案外こういうものは、ホテルのプレゼンテーションルームや会社のセミナールームに常備したら良いんじゃないかと思う。こういうところには音のミキサーはあっても、映像のミキサーはないからだ。

 例えばプロジェクタを使ってプレゼンしたりすることを想定してみよう。PCのパワーポイントを出したりビデオを見せたりDVDを見せたりすると、いちいち誰かがプロジェクタのところに行って入力切り替えボタンをポチポチ押すことになる。

 それがまたローテーションになってたりすると、切り替えたい映像が行き過ぎちゃって、もう一巡したりして、イケてないこと甚だしいのである。そういうのはスマートさに欠けるし、あとで見せるはずの映像が出ちゃってネタバレするといった情けない状況にもなりうる。

 そういうときにV-1があれば、結構いいんじゃないかと思う。2月25日発売で価格はオープンだが、7万9800円程度とそれほど高くない。

静止画と音の送出機「P-1」

 もう一つ、これは3月発売だが、面白い製品が発表された。

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