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IPv6はビルや家庭内接続に適している〜IPv6ビジネスサミット2004

» 2004年02月16日 20時36分 公開
[RBB Today]
RBB Today

 IPv6のビジネスをテーマにしたイベント「IPv6ビジネスサミット2004」が開催された。

 テーマ別セッション「建築・不動産とその管理」では、タウ技研/インターネット総合研究所(IRI)の荻野司氏がコーディネーターになり、パネリストとして森ビルの江島昇氏、清水建設の大山俊雄氏、関西電力の有吉猛氏、IRIの藤原洋氏が登場した。電力会社、ビルのデベロッパー、建設会社、コンサルティング会社とインターネット関連のイベントで開催されるセッションとしては異例の顔ぶれといえるだろう。

左から森ビルの江島昇氏、清水建設の大山俊雄氏、関西電力の有吉猛氏、IRIの藤原洋氏

 昨年、街開きを行い注目された「六本木ヒルズ」の“ビルセンサー”をアピールしたのは森ビルだ。同社の江島氏によると、「六本木ヒルズ全体で約20万点の空調や照明機器、さらには1,000もの監視カメラをネットワークで管理している」というのだ。

 この中でもセキュリティ関連については、店舗やオフィスなどさまざまな施設が混在する六本木ヒルズにおいては「関係のない人が関係のない場所に入れないようにする」ことを目的に設計したとしている。そのため、六本木ヒルズ内には電車の改札口のような「セキュリティーゲート」、ICカードがないと動かないエレベータ、各フロアや部屋に設置されたICカードの読み取り機などさまざまなセキュリティ機器が施されているのだ。また、防犯カメラについても差分を記録することで10日間分の画像を記録している。

 このように大規模な六本木ヒルズになるとネットワークに接続するセンサーやカメラが多くなってくる。そのため「IPv6の利用も検討している」と必要性を強調した。

 森ビルが目指すオールIPv6化だが、実験ながら果たしたのは清水建設だ。同社は120平米程度ある研究室を使って空調や照明器具をIPv6でコントロールする実験を行っている。

 これについて同社の大山氏は、「ビル内の通信は一本化したい。すべて統合してシンプルに」とビル管理にIPv6を用いる理由を挙げた。ビル管理には、監視カメラのIPv4トラフィック、インターホン用の独自プロトコル、テレビの同軸ケーブル、防災設備の専用線など実にさまざまな通信ケーブルやプロトコルが用いられている。そのためこれをIPv6で一本化させ、コストの削減を図ろうというのだ。しかし、電話やテレビなどについてはめどがついたものの、最終的に残るのは火災報知器だという。こちらについては「法令の改正などで、2008年頃には果たせそうだ」と示した。

 一方で家庭内のネットワーク化を進めているのが関西電力だ。ここでは、家電をEMITやECHONETなどで接続し、外出先から操作するなどの実験を行っている。しかし、同社の有吉氏は、「ネットワークに対応しているのはAV機器が多い。どちらかというとドアとか窓がネットワークにつながってほしい」とした。というのも同社が目指すのは、たとえば家庭内ネットワークに対して“就寝する”という指示を送ると、テレビと照明は電源をオフ、玄関や窓は施錠を確認、エアコンは最適な温度に設定するといった一連の作業を自動化させるシステムを完成させることにあるためだ。

 最後にIRIの藤原氏は「IPv6は家庭内やビル内通信、セキュリティ管理など“LAN”のプロトコルとして見直すべき」とこれら3社の試みを評価した。その上で、「家庭内LANやビル内LANをシームレスに接続することで都市が形成される。これにはIPv6しかない」としてセッションを閉めた。