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「最重要項目は本物らしさ」リアルコックピットTYPE00デザインノート

» 2004年02月20日 19時12分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 先日、小倉優子と宮村優子が登場した「鉄騎大戦」発表会(鉄騎そのものよりも別ネタで盛り上がっていたが)。ゲストと一般参加者が両「優子」陣営に分かれ、鉄騎を駆ってバトルロイヤル……というイベントでプレーヤーが「搭乗」していたコックピットが、今回紹介するPROTOTYPE製作の「鉄騎大戦」専用レプリカコックピット「TYPE00」。

 専用コントローラと液晶ディスプレイを設置するデスクパーツと椅子パーツをフレームで一体化したもので、プレーヤーが実際に「乗り込んで」サイドパネルを「キャノピー」風に引きおろせば、閉じられた操縦席が出現する。

 サイドパネルパーツには、エアダンパーとロックが仕込まれており、引きおろすときの抵抗感や、いったん引き込んでロックを解除すると「シュー」という音とともにパネルがゆっくり跳ね上がるアクションが、戦闘機のキャノピーやロボットアニメのコックピットアクションの雰囲気をリアルに再現してくれる。

量産型TYPE00

跳ね上がるサイドパネルとそのために実装されたエアダンパー。搭乗するときは「カチッ」というまで引きおろしてサイドパネルをロック。戦闘終わって無事帰還したら、いったん引き込んで「カチッ」とロックを解除。ダンパーの作用で「プシュー」とパネルがゆっくり跳ね上がる。おお、なんて素敵なギミック
デザインで大きく変わったのが椅子。一体化だったものをセパレートタイプに変更、さらにモールドを施して機械的な雰囲気を演出

 このレプリカコックピットは、昨年の東京ゲームショウで参考出品されていたもの。そのころと比べて「量産型TYPE00」は、軽量化やより雰囲気を高めるための改良がいくつか施されている。ゲームショウ当時40キロを越えていた自重はフレームの改良で30キロ程度まで軽くなった。

 また、座面と背当が一体化していた椅子はセパレートタイプになり、パネルにはモールドが追加され「兵器的」な雰囲気が表現されるようになった。「とにかく、本物らしいメカニカルな雰囲気を再現することを最優先にして改良を加えていった」(TYPE00デザイナー 藤井龍一郎氏)

 このTYPE00、PROTOTYPEのWebページで「鉄騎大戦用」とアピールされているが、PROTOTYPEのスタッフや藤井氏の頭の中には、TYPE00本来のコンセプトである「大人が没入して思いっきり遊べる本格玩具」の姿が描かれていた。

 藤井氏がデザインのメインコンセプトとして重視したのは「本格的なそれらしさ」。本人も熱烈なる乗り物フリークである藤井氏は「乗り物は儀式が大事なのよ」と語る。「クラシックカーを動かすときには、エンジンを予熱して、オイルプレッシャーのレバーをスコスコして、それからイグニッションを回してエンジンを“始動”させる。この儀式が乗る者の気持ちを高めてくれるんだよね」

 藤井氏は、今回発売するTYPE00をベースにして、いろいろな派生モデルを考えている。それは「より多くの人に利用してもらう」といったビジネスライクな発想ではなく、「もっともっと本物らしく」(藤井氏)

 藤井氏の口から出てきた究極のTYPE00は、「紅の豚に出てきたサボイアのような、布張り木製機世代のコックピットを再現してリビングの真ん中にどかんと置くこと。フライトシミュレータと連動して動作するアナログ計器をダッシュボードに取り付け、丁寧に仕上げた木製ジョイスティックやポンプレバーを組み合わせた、重厚な「大人の雰囲気」を醸し出すTYPE00に乗り込んで、エンジンがエンストしたり機銃の弾丸が詰まったとき「映画のようにキコキコ動かしたら、もうたまらない」(藤井氏)

 乗り物好きにとって必要なのは、リアルなグラフィックスや実物からサンプリングしたエンジン音だけでない。「ダイヤルをチキチキ回す」「スイッチをカチッと倒す」「レバーをググッと引く」という本物と同じ「感触」も重要なのだ。

 本物らしさを出すためなら、ユーザーによるカスタマイズもいとわないと藤井氏は考える。パネルパーツも「赤く染めてシャア専用にしてもらってもいいし、ミリタリーシンボルのデカールをベタベタ貼ってもかまわない」(藤井氏)。また、パネルパーツを変更することでフレーム部分をベースにフライトシミュレータやレーシングシムなど多様なコックピットへ変身できるデザインが施されている。

 例えば、フライトシミュレータをプレイする場合、ジョイスティックは机に設置するより「椅子の座面の高さ」に置いたほうが実機に近い配置になるし、実際そのほうが操作しやすい。スロットルも同様だ。ユーザー各自でいろいろ工夫を凝らしているが(記者は使わなくなったミドルタワーケースを足の間に置き、その上にジョイスティックを載せて使っている)、鉄騎大戦専用のTYPE00は大型の専用コントローラを載せるために、デスクパネルが手前だけでなく左右に広がっており、低い位置にジョイスティックをおくことが難しい。

 そんな場合でも「デスクパネルを交換したり、フレームにサイドテーブルを追加してスロットルやボタンパネル用デバイスを設置するスペースを望むところにいくらでも用意できる」(藤井氏)といった柔軟性を持たせている。

同時に発売される予定のヘルメット「TYPE00-G TANKER'S MET」。詳細未定ながら価格は「3万円前後で調整中」(渡辺氏)。PC版ネットワーク対応コンバットシムのチームプレイでも音声チャットツールが使われているが、これで「タリーホーッ」と叫べばアドレナリンが沸騰すること間違いなし

 PROTOTYPEスタッフも、TYPE00に「鉄騎」だけに留まらない夢を描いている。「ガンダムのリアルコックピットも作って見たいんだよね」と、そのノリは藤井氏と近いが「本格的なゲームデバイスのユーザーを広げたい」という現実的な構想もいくつか準備しているところ。その一つがインターネットカフェならぬ「ゲームカフェ」構想だ。

 航空ファンにしろ車好きにしろロボットフリークにしろ、本物志向が強いのは30〜40歳台。この世代になるとゲームセンターには入りにくいし、そもそもアーケードゲームで本物志向の気持ちを満足させることはできない。

 TYPE00のようなリアルなコックピットやゲームデバイスで構成したシミュレータシステムをたくさん並べたエリアと飲食ができるカウンターを用意すれば、いい年をした大人でも恥ずかしくなく入れて、ゲームを楽しみ趣味の会話で盛り上がることもできるはず。

 それとは別に、純粋にリアルコックピットをたくさん並べたゲームカフェ構想も進める予定。実際に、試作版TYPE00を出展した東京ゲームショウ2003では、すでにこのようなゲームカフェが普及している「台湾や香港の関係者から非常に問い合わせが多かった」(渡辺氏)。

 このほか、ホームユース向けのリアルコックピット市場がある北米(あちらの住宅事情なら、大きなリアルコックピットを常時設置できる部屋を確保できるらしい。F16などの戦闘機コックピットを再現した製品が実際に売られているのだ)での展開も予定している。「とりあえず今年のE3で展示しようかと考えているところ」(渡辺氏)

 TYPE00の正式発表は2月26日。「それまでに細かいスペックや価格を調整する」ということだが、価格については20万円前後に落ち着く見通しとのことだ。

TYPE00を生み出すPROTOTYPEスタッフ。左から3人めがデザイナーの藤井氏。映画やメーカー試作用のモデル作成を手がけているが、「自分が欲しいものを作ってしまった」(藤井氏)という遊び心が膨らんでTYPE00が生み出された

 

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