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日本向け専門開発チームを用意――MMORPG「テイルズウィーバー」トップインタビュー

» 2004年02月24日 18時51分 公開
[RBB Today]
RBB Today

 ネクソンジャパンの新作MMORPG「テイルズウィーバー」のオープンベータテストが2月25日から始まるが、それに先だって開発元のネクソンからテイルズウィーバー担当であり、ネクソンCFOでもあるJames Kim氏が来日した。テイルズウィーバーでは新しい開発体制をとってユーザの声により積極的な対応が取れるようになったという。

 なお、インタビューでは、ネクソンジャパンのCEO、David K. Lee氏、およびマーケティング部 坪井氏も同席、お話をうかがっている。

――いきなりですが、クローズドβからオープンβまで時間がかかったいきさつを教えていただけますか?

韓国NEXON社CFO James Kim氏

Kim: テイルズウィーバーは、韓国国内だけでなく、台湾や中国、日本など数多くの国に展開しています。そのため、各国のサービスを継続的にサポートするための人やリソースの体制を整える必要がありました。我々としては単にテイルズウィーバーを動かし始めるのが目的でなく、品質の高いサービスとして提供することが目的であったため、準備に時間をかけたわけです。

――新しい開発体制を整えたというお話がありましたが、具体的にはどういう体制でしょうか?

Kim: 今までの体制では、韓国でまず開発し、そのあと各国にローカライズされる、という形になっていたわけですが、今回、サーバやクライアント、マップ、アイテムなどについて、日本担当のエンジニアを配置しました。これはつまり、ネクソンジャパンからのリクエストに対応する「日本担当チーム」が韓国の開発チームの中にいる、ということです。

 日本のユーザが望んでいるマップやアイテムを、すぐに入れることができるようになったわけですね。これまでは韓国の開発チームがコア部分の開発をしながらそうした要望に応えていたわけで、時間がかかることが多かったのです。

――では、アップデートが進んでいくにつれて、各国のシステムがちょっとずつ違ってくる可能性があるということですか?

Kim: 結論から言うとそうなります。

 テイルズウィーバーには3つのコンポーネント、「ストーリー」「マップ」「アイテム」があります。ストーリーについては各国で同じなのですが、アイテムとマップはカスタマイズできますし、カスタマイズしなければならないと思っています。韓国のバージョンと日本のバージョン、中国のバージョンでは、求められるアイテムやマップはそれぞれ違うと思います。

――ということは、テイルズウィーバーの「コア」に、韓国独自要素がつくのが「韓国バージョン」、日本独自要素がつくのが「日本バージョン」ということでしょうか?

Kim: そうですね。

――日本のクローズドβの実績について教えてください

坪井: 募集人数は最初5000で、途中で追加して最終的に1万人になりました。

 同時接続も数千の単位でしたが、キャラクタがリセットされるのが前提だったため、ひととおりバグレポートをして、どういうゲームかを理解するところまでプレイしたところで「あとは本番を待つ」という人が多かったようです。

――キャラクタごとにストーリーがある、といったシステム面についての評判はいかがでしたか?

坪井: キャラクタごとにストーリーを追うというのは、これまで他のタイトルではなかったため、そこへの期待は非常に感じますね。期待が大きい分、重圧も感じますが。

――日本でオープンβを開始するにあたって、サーバの強化などは行われるのでしょうか?

坪井: クローズドβでは1台のサーバで行っていたのですが、オープンβでは5台に増やしています。

Lee: 同時接続で3万人プラス、というところですね。

坪井: 1サーバあたり同時接続5,000〜6,000ぐらいなら何の問題もなく動きます。その先もいけると思うのですが、なにぶんそこまで入ったことがないので(苦笑)

ネクソンジャパンCEO David K. Lee氏

Lee: 今回のテイルズウィーバーでは、混みすぎになる前に早めに増強をしていきます。最初からサーバを多くしておかないと、最初のサーバは混んでいるのに後から追加したサーバはガラガラ、ということになってしまいますので。

――韓国本国では、テイルズウィーバーのようなかわいい系MMOというのはあまりランキング上位に出ていないように見受けられるのですが、韓国内での評判はどうなのでしょう?

Kim: キュートなキャラクタのMMOは、韓国において比較的人気がないというのは確かです。ただ、海外マーケットというのも重要で、今回私たちが日本に来たというのも、テイルズウィーバーチームが日本のマーケットを含めて海外マーケットにフォーカスしていることのあらわれだと言えます。

 韓国マーケットを無視するわけではないですが、海外は重要なマーケットだと認識しているわけです。また、台湾や日本、中国など海外で成功することによる、韓国ユーザへの宣伝効果もあると考えます。

――オープンβでのアップデート内容はいかがでしょう?

坪井: クローズの最後の方で適用した部分ではあるのですが、ゲームシステムがかなり遊びやすくなっています。とはいえ、これはクローズドβに参加した人にとって、ということでして。これから始める人には、ストーリーやマップ、アイテムなど、すごくかわいらしいキャラクタなどがいますので、そのあたり見て欲しいと思います。

Lee: すでにお知らせしていることですが、次のチャプターが4月ぐらいに導入されます。テンポを早くして、ユーザが飽きないようなペースで展開するつもりです。

――2ヶ月に一回のチャプター追加というのはかなりスゴいペースですよね

Kim: ユーザを飽きさせないように展開するのが目標ですから。従来のタイトルであれば3〜4ヶ月にある程度のサイズのパッチが出る、というのがふつうだったかと思いますが、テイルズウィーバーではそれらよりも速いペースを目指しています。より高いスタンダードでサービスしたいということですね。

Lee: 韓国バージョンのキャッチアップとともに、すぐというわけではないですが日本専用のマップも早めに入れたいなと考えています。

――オープンβのうちに日本独自要素が入るのですか?

Lee: どうでしょう(笑) オープンβの期間にもよると思います。

 オープンβをどこまでやるかということですが、これまでいろいろなタイトルを提供してきて、どれも起きる問題が違うんですね。だから、『オープンβはもうしなくてもいい』とか『3ヶ月だけで十分』といったことが言えないわけです。オープンβ期間にタイトル固有のノウハウがたまってくるはずなんです。ただ、それがいつまでかかるかというのは分からないですね

坪井: 3段階に分けて考えていただけるとよくて、まずオープンβが始まったときに安定したクライアントで多くのユーザに楽しんでいただくというのが第1のステップ。4月にチャプター2が導入されて、高密度なバージョンアップを体験してもらうというのが第2のステップ。さらにその先に、日本オリジナルの展開がある、という体験をしてもらうわけです。

――いろいろな種類の経験をしてもらう、と

坪井: 最初にばっと出してしまうのは、ユーザにとっても損かもしれないですよね。

――ということは、オープンβについては比較的長期戦をにらんでいる、ということでしょうか。

Lee: 有料化については、タイミングの問題ではなくて、ノウハウと信頼関係ができあがっているかどうかが重要だと考えています。

坪井: 自信を持ってサービスを展開できる、している、と思った時点で、じゃあ課金、ということになるわけです。

――完成度を高めて信頼感を得るための期間がオープンβである、ということですね。

Lee: そうです。なるべく早く、ユーザが満足できるゲームにする、というのが最初の目標であり、最後の目標でもあるわけです。品質が高ければ、正しい評価が出てくると思います。だから、20万人や30万人といった登録会員数や、実施期間についての目標はありません。希望としては、そりゃあ、いろいろありますが(笑)

――ネクソンジャパンのラインアップでちょっと気になるところがあるのですが、今後「マビノギ」がありますよね。社内で食い合ったりしませんか?

Lee: 懸念はあるといえばあるのですが、ユーザから見ると(選択肢が広がると言うことで)非常に嬉しいことだと思います。それぞれ特徴的なタイトルですので、弊社としては、製品ポジションは違うと考えています。また、あらたに導入した「ネクソンID」によってネクソンのゲームはどれも気軽に楽しめる仕組みを用意していますので、シナジー効果も期待できると思います。

 これについては、市場が飽和状態であれば心配もしますが、日本ではまだこれからオンラインゲーム市場が広がっていくという状況ですので、いろいろなタイトルを準備した方が望ましいと考えています。開発体制についても、ネクソンジャパンはネクソン本社の100%子会社ですので、連携についてはどこの事業者さんよりも自信があります。

――そういえば、テイルズウィーバーでは演出などでジャパニメーションの影響を受けている箇所があるように見受けられたのですが、スタッフの中に日本アニメがお好きな方がおられるのですか?

Kim: 開発本部にいらっしゃる機会があればわかるのですが、マップなどのデザイナーのあたりを見ると、マンガのマニアだというのが一目でわかりますよ。マンガだけでなく日本のフィギュアなんかもたくさんありますし。彼らはテイルズウィーバーの日本でのサービスに期待してます。日本とのコミュニケーションで、より高いものを作れるのではないか、と期待しているのです。

 今後、ネクソン本社はネクソンジャパンと協力しながらより高い品質をあげるようにがんばりますので、よろしくお願いします。

――ありがとうございました。