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「これでは二重規制だ」 〜NTT東、独禁法違反に真っ向から反論

» 2004年02月25日 16時41分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 公正取引委員会は2月25日、NTT東日本に対する第1回審判を行った。2003年12月4日、同委員会がNTT東日本に独占禁止法に基づく勧告を行ったが(記事参照)、同社がこれを応諾しなかったため、審判を開始したもの。審判廷では、NTT東日本が「何をもって独占禁止法違反といわれるのか分からない」などとして、審査官の調査内容に真っ向から反論した。

新規参入を阻んだ?

 今回、問題になったのはFTTHサービスの料金だ。具体的には、NTT東日本が戸建て住宅向けBフレッツプラン「ニューファミリータイプ」で、月額料金を4500円に設定した。この価格は、NTT東日本がほかの事業者に光ファイバー1芯を貸し出す際の接続料、5074円を下回っている。

「シェアドアクセス」のはずだっただったが……

 料金比較を考える上で、話をややこしくしているのは「ニューファミリータイプ」が本来、1芯を最大32ユーザーで共用する“シェアドアクセスタイプ”のサービスであること。月額4500円という割安な価格設定も、ここからきている。

 ただし、「分岐方式とするだけのまとまった需要がなかったことから、実際には『ベーシックタイプ』と同様、芯線直結方式で販売されている」(公正取引委員会)。同社はこの件で、総務省の行政指導もうけている。

 つまり、“シェアドアクセス方式でない”ニューファミリータイプは、加入者ダークファイバーを1芯貸し出す際の接続料と比較すべき、というのが公取委の見解だ。

 仮にほかの事業者が、FTTHサービスの展開を考えた場合、よほど資本力がある企業でない限り、一からファイバーインフラを敷設することは考えにくい。通常は、NTTのダークファイバーを借りて、FTTH事業を展開する計画をたてると思われる。

 この際“接続料”という名の、経営努力によって削減できない原価として、5074円が必要になる。もちろん、諸経費を加算すれば最終的なユーザー料金は5074円を大きく上回るだろう。

 ところが、NTT東日本が月額4500円のサービスを提供している以上、コスト面では勝負にならない。つまり、NTT東日本は不当に割高な接続料を提示することで(あるいは不当に割安な「ニューファミリータイプ」料金を設定することで)、事実上事業者のダークファイバー利用を拒否し、業界への新規参入を阻んでいるのでは、と指摘されたわけだ。

 こうした主張に、NTT東日本は「とうてい理解できぬ」と強い調子で反駁する。

 同社はまず、FTTHサービスが厳しい競争にさらされている現状を指摘する。各種ADSLサービスとの競合に加え、電力系FTTHサービスとのシェア争いもあり、経営努力により価格を下げることは必須だと強調。その上で、赤字を負担しながらFTTHサービスを展開し、ようやく市場の開拓に成功したと説明した。

 「そもそも、独占禁止法は“消費者利益”を目的にした法のはず。一部の競争事業者の利益を確保するものではない。それとも、料金を高止まりさせた方がよかったというのか」(NTT東日本)

 同社はまた、上記の料金比較で誤解があるとも話す。「新規参入事業者が、1芯あたり32ユーザーを獲得すれば、料金を下げることも可能。事業者はユーザー獲得リスクのみ負えばよく、NTTが設備構築のリスクを負っていることを考えれば、はるかに有利な条件だ」。

「手続きに難がある」

 NTT東日本ではまた、今回の審判には手続きに難があるとの主張を展開している。その理由は、いくつかある。

 1つは、NTTの料金は、所定の手続きに沿って設定されたものであること。接続料にしても、NTT法の規制のもとで算定され、総務省の認可を受けて正式に決定される(記事参照)。少なくとも、競合事業者に不当な圧力をかけるため、自由に変更できるものではない(それが、規制の目的でもある)。

 ルールに沿って進めていたことを、なぜ後から批判されなければならないのか、というのがNTT東日本の主張だ。「今になって、所轄官庁でもなく、電気通信事業の専門家でもない公正取引委員会が介入してくる。これは、矛盾した二重規制であるといわざるをえない」(NTT東)。

 同社はまた、資料を見た限り、「接続料」などの用語の意味が厳密に特定されておらず、議論があいまいだとも指摘。審判開始後に追加で証拠を収集されている点にも、不信感を示した。「極めて異例な手続き。(まず規制ありきで)見切り発車的に審判を開始したのではないか」。

 同社は、現状をどのように変更すれば、独占禁止法違反でないといえるのか、明示してほしいと審査官に迫る。「どうすれば独占禁止法を免れるのか、それすら全く明らかでない。(正当性がないため)審判は直ちに打ち切られるべき」と、強硬な主張を通した。

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