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高速ダウンロードのみ「3Gバイトあたり1000円」のオンラインストレージサービス

» 2004年02月26日 19時14分 公開
[長浜和也,ITmedia]

 例えばFTTHを我が家に導入するとき。家族を説得するために高速通信のメリットをアピールするわけだが、以前はADSLを上回る高速な転送レートの必要性をなかなか見出せないのが実情であった。最近になってようやく広帯域を必要とするリッチコンテンツのサービスが用意されつつあるものの、今度はADSLそのものが高速化しているために、FTTHのアドバンテージを家族に印象付けるのがますます難しくなっている昨今。

 ダウンロードだけでなく、アップロードも高速であるFTTHのメリットを生かせる数少ないサービスなのがネットワーク上のデータストレージを利用する「オンラインストレージ」サービスだ。ブロードバンド環境が広がるにつれて、サービスサイトの数も増えてきている。

 無料で使えるサイトなどもあって手軽に利用できるが、その一方で扱える容量が数十Mバイトから数百Mバイトと少なめであったり、利用できる容量がGバイトを超えるとコストがかさんできたりと、なかなかバランスのとれたサービスがないのも事実だ。

 2月26日にエスケイサイバーパスが発表したオンラインストレージサービス「はこ箱.com」は、標準で11Gバイトという大容量を用意しながら、ユニークな料金メニューを用意することで利用コストを低く抑えている。

「はこ箱.com」は3月1日から運用開始

 3月1日から運用が開始されるはこ箱.comは、登録したユーザーに汎用データ用の「はこ箱フォルダ」と画像ファイル専用のフォトスペースが提供される。容量ははこ箱フォルダが10Gバイトにフォトスペースが1Gバイト、合わせて11Gバイトとコンシューマー向けオンラインストレージとしては多い。

 ユニークなのが利用料金。ストレージエリア11Gバイトの使用権とデータのアップロード、そして「各駅モード」と呼ばれる最大転送レート400Kbpsの低速レートによるダウンロードは、すべて無料で利用できる。課金されるのは、「特急モード」と呼ばれる最大実効転送レート70Mbpsの高速モードにおけるダウンロードと、メニューで用意されている「ストレージ内のデータをメールに添付して転送」する場合。

 料金はダウンロードするデータのパケット量で課金される。ユーザーは事前に利用できるパケットの権利をクレジットカード決済でWebページや購入するか、コンビニ決済で購入しておく必要がある。利用イメージとしては、事前に料金を支払いその分だけ乗車できるパスネットやSUICAカードに近いものになるだろう。

 パケットに課金、と聞くと携帯電話のパケット通信を連想して、1Gバイトのデータをダウンロードしたらとんでもないことになると、いまから請求額を想像してひっくり返っているかもしれない。ただし、はこ箱.comの1パケットは1Mバイト。3Gバイトあたり1000円の従量制と考えると分かりやすいだろう。事前に購入できるパケット権は1500パケット分の500円から始まって、3000パケット分1000円、6000パケット分2000円、9000パケット分3000円と用意されている。

 ほかのオンラインストレージサービスと同様、契約したユーザー以外に、登録したメンバーや契約者がゲストとしてアクセスを許可した非登録者ともデータを共有できる。一人の契約者が登録できるメンバーは最大で8100人。ゲストに対してアクセスできるフォルダや権限を設定する機能もサポートしている。なお、ゲストがダウンロードした場合の課金はアクセスを許可した契約者が負担するようになる。

強固なセキュリティもはこ箱.comのセールスポイント。SSLを始めとする5段階のセキュリティ対策でデータを保護する

 はこ箱.comにアップロードされたデータは、30日の期間限定で保存されるのもはこ箱.comのユニークなところ。保存期限を設けることで、ストレージリソースの効率的な運用とハードウェア設置コストを抑えることが期待できるが、恒久的なデータ保存を考えるユーザーからすると不安を感じるかもしれない。

 しかし、オンラインストレージを利用するユーザーの多くは、大容量データの受け渡し場所としての一時的な利用や、環境移行時の一時的なバックアップとして使うケースが多い。今回、はこ箱.comが保存期限を30日と設定しているのも、エスケイが先行してサービスを行っている韓国での運用実績(アップロードから20日でほとんどのユーザーがアクセスしなくなる)に基づいている。

はこ箱.comで提供される専用転送ツール「HAKOBAKO FOLDER」はフォルダの一括転送にも対応する
ストリーミングデータをダウンロードするときには、専用のビューアソフトが起動して転送しながら再生を行ってくれる

 はこ箱.comを運営するエスケイサイバーパスは、韓国のIT関連企業であるSK Telink(SKグループ所属)とDACOM Cyberpass(LGグループ所属)の共同出資で設立され、日本では2001年11月から活動を行っている。

 同社代表取締役社長のチェ・サンボム氏は「アナログ時代のコミュニケーションIDは電話番号、インターネット時代の初期はメールアドレス。はこ箱IDはブロードバンド時代のコミュニケーションIDを目指す」と述べ、初年度のユーザー数目標として39万人(このうち特急モードでパケット料金を支払う“有料ユーザー”は8万人。売り上げ1億6000万円)といった数値を挙げている。

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