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ナナオの考える“ナチュラルな絵作り”を追求〜開発者インタビューインタビュー(1/2 ページ)

» 2004年03月01日 13時58分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 コンピュータ向けをはじめとする高品質モニターのトップブランド「ナナオ」が、家電市場に挑戦する。同社はこれまでにも、テレビとしても使用できるパソコンモニター「GAWIN」を発売したことがあるが、パソコンとの接続端子を持たない純粋な家電市場向けテレビは初めてとなる。

 ナナオの新製品「FORIS.TV(フォリス)」の第一弾モデル「SC23XA1」は、液晶パネルの特徴を最大限に活かしたシンプルなフォルムと、DVD内蔵だからこそできる高画質が魅力だという。画質にひたすらコダワリ続けてきたナナオが満を持しての“テレビ”。その背景をナナオ開発担当に聞いた。

映像技術開発部・商品設計1課・開発マネージャーの橋本雅之氏

なぜ、今、テレビなのか

 高品質のコンピュータモニターとして定着しているEIZOブランドはもちろん、医療用、DTP用などの業務用モニターを含め、ナナオの製品は常にその高いクオリティで存在感を示してきた。そのナナオがテレビに参入するというのは、ある意味当然のようでもあり、一方で驚きでもある。

 昨今、テレビのデジタル化に伴って新規参入メーカーが急増。既存の強力な家電ベンダーも含め、テレビ業界は戦国時代の様相を呈している。その中でナナオは、どのような意図、意志をもってこの業界に入ろうというのだろう?

「PCを取り巻く環境はインターネットの普及などによって、オフィスの道具としての位置づけから、一般ユーザーの生活の道具として変化してきています。特にスループットの向上に伴って、動画コンテンツも豊富に使われるようになり、動画に対して高画質を提供するというアプローチに、ナナオとして取り組んでいかなければならないと3年ぐらい前から考えていました」

「では動画を軸にした時、ナナオに何ができるのか? そうした考えのもと生まれたのが、GAWINのようなマルチメディアモニターや、動画編集専用のPCなどです。様々なアプローチで製品に取り組み、その中で市場の分析と技術の確立を続けてきました」

「折しも昨年末に開始された地上デジタル放送をはじめ、テレビ業界が大きく変化するタイミングです。コンピュータモニターを基盤にした製品展開だけでは遠回りになると考えました。そこでFORIS.TVの第一弾モデルSC23XA1では、テレビという製品の本質を見極めるために、パソコンモニターではない、純粋なテレビとしたのです。今後大きく変化していくテレビ、我々の得意分野であるパソコンモニターの両面から技術やユーザーニーズを追い求めて、ナナオの未来を探したいと考えています」

 とは言うものの、たかがテレビとはいえ、何10年にもわたってテレビを作り続けてきた家電ベンダーの持つノウハウは膨大だ。そこに参入して、画質という切り口で、どこまで迫ることができるのか?

「テレビといっても大衆家電を目指しているわけではありません。我々は、テレビが“おいしい市場”と考えて参入しておらず、従って販売規模を追い求めるつもりもないのです。しかし、我々の入り込む余地はあります。FORIS.TVの開発にあたって、大手家電ベンダーの製品を多数見てきました。確かにフラットパネルになって薄型化が進みましたが、地上波をパッと見に派手に映せばいいだけな“お茶の間のテレビ”のままで、昔から何も変わっていないように感じます」

 具体的にどのような点が、従来型テレビと違うのだろうか?

「テレビを中心にして、新しい映像の楽しみ方を提案しようと思いました。そこで大手家電ベンダーのような、店頭での映えを意識した製品ではなく、自然で階調性が高い映像を目指して開発を行いました」

ライフスタイルに溶け込む製品を目指した

 SC23XA1はスピーカー部とスタンドをモニター部と一体化したデザインとし、その上、DVDプレーヤーまでを内蔵するなかなかユニークな構成を取っている。どのようなユーザー層を想定していたのだろう?

「EIZOブランドを認知している人に、ナナオが考えるマルチメディア対応のコンセプトを理解してもらうため、GAWINという製品も過去にはありました。しかし、パソコンモニターとテレビでは、使われ方も求めるものも違います。テレビとしての存在感、テレビとしての高品質があり、ライフスタイルに溶け込む製品。それがSC23XA1の基本的なコンセプトです。ですから(SC23XA1では)あえてPCへの接続はなくしました」

 買い換えサイクルが非常に長いテレビに、何らかの機能を内蔵させるコンセプトは、これまであまり成功してこなかった。第一弾モデルであるSC23XA1にDVDプレーヤーを内蔵させた理由は何だろう?

「SC23XA1のコンセプトは、生活との一体感です。リビングの隅に置いて、手軽に映像を楽しむ。そのためには、煩雑な接続コードの海に埋もれない製品にしなければなりません。DVDプレーヤーは映像を楽しむ上で、今や不可欠のデバイスですから、最初から内蔵させた方がいいだろうという結論に達しました。そうした判断の背景には、近年のホームシアターブームもあります。AVマニアは映画を見るとき、シアターシステムを使うでしょう。逆にそうしたユーザーは、テレビに対してシンプルで手軽な使い勝手を求めるのではないでしょうか? 一人暮らしのワンルームといった生活スタイルも、もちろん視野にあります」

ナナオの考える“ナチュラルな絵作り”

 ズバリ、"ナナオのテレビ"とはどんなテレビなのか? 一言で高画質と言っても、精細度の高さや正確な色再現といった要素とは、異なるテレビユーザー向けに"ナナオのアイデンティティ"を示す必要がある。

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