ITmedia NEWS >

“ついでの機能”だけど、PCユーザーにこそ便利なんです〜東芝デジタルテレビ新製品インタビュー(1/2 ページ)

» 2004年03月05日 20時45分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 地上デジタル放送が始まり、アテネオリンピックも予定されている2004年。家電メーカー各社は、デジタルテレビの本格普及の年と位置付けている。しかし、売り場には似たような薄型・大画面テレビが並び、選択に困ることもしばしば。このシリーズでは、メーカー各社の企画開発担当者にインタビューを行い、製品の企画意図とそれぞれの持ち味、つまり“売り”を聞いていきたい。

Webブラウザを搭載した理由

 東芝は、2月12日にデジタル3波対応チューナーを搭載した液晶デジタルハイビジョンテレビ「液晶 beautiful “face”L400V」シリーズを発表した。サイズは26型と32型の普及クラス。イーサネットポートとWebブラウザを備え、リモコンのボタン一発でWebサイトを表示できる点が特徴だ。

photo 写真は「液晶 beautiful 32“face”L400V」。価格はオープンプライスだが、32V型が50万円程度、26V型が40万円前後になる見通し

 周知の通り、BS・地上デジタル放送にはデータ放送があり、56KbpsモデムとBML(Broadcast Markup Language)ブラウザの装備が対応テレビの条件となっている。ただ、モデムはイーサネットポートに置き換えるオプションもあり、既に松下電器産業などは採用済みだ。東芝、CTV事業部CTV商品部主務の本村裕史氏は、「リッチなコンテンツを送る際にはイーサネットポートが主になるだろう。たとえば、NHKは夏からBMLベースの“データ放送補完サービス”を提供するがこれは新しい、大きな放送サービスになると考えている」と指摘する。

 データ放送補完サービスは、NHKが「平成16年〜18年NHKビジョン」の中で明らかにしたものだ。局が運営するサーバに番組関連データを豊富に用意しておき、視聴者はインターネット経由で閲覧する仕組み。BMLで記述されているため、地上デジタルチューナーを搭載したテレビ以外では視聴できないが、放送波の伝送能力を超え、事実上容量制限のないデータ放送を可能にする。また、メディアサーブもBSデジタル放送で同様のサービスを展開しており、今後はイーサネットポートとTCP/IPプロトコルスタックを備えたテレビの比率が増していくと見られる。

 「しかし、それだけではもったいない」(本村氏)。

photo もったいないという本村氏

 せっかくイーサネットポートとTCP/IPを備えているのなら、BMLブラウザをHTMLにも対応させればいい。BMLはHTMLのサブセットといえるもので、手を加えれば簡単に両対応にできる。このため、既に家電組み込み用のブラウザを開発しているソフトウェアメーカーは両対応のブラウザをリリースしており、東芝のようなセットメーカーはそれを採用するだけでWebブラウザを搭載可能な状況だ。

 「今のデジタルテレビには、CPU、GPU、LANなど、PCのマザーボードのような機能がすべて入っている。ブラウザさえ載せてしまえば、インターネット対応TVの完成だ。追加コストはほとんどない」。

“ついでの機能”は意外と便利

 リモコンには、Webブラウザを起動させる「一発ネット」ボタンを追加し、リモコンをテレビに向け、ボタンを押すだけで目的のWebサイトが表示される仕組みにした。緑・赤・青の3つのボタンにもそれぞれブックマーク機能を持たせ、さらに最大46サイトまでの“お気に入り”登録機能も備えた。文字入力は、リモコンのテンキーを使い、携帯電話と同じ要領で入力可能だ。

photo 「一発ネット」ボタンを備えたリモコン

 こうした東芝のアプローチは、松下電器産業の「Tナビ」とまったく同じと言える。ただ異なるのは、同社がインターネット初心者にL400Vシリーズを売ろうとは考えていない点だ。また、松下のように専用ポータルサイトを設けて将来のビジネスにつなげようともしていない。

 「今回の想定ユーザーは、われわれのように日常的にパソコンを使う人たちだ。テレビでWebを見るためにADSLを引く人はまだいない」。

 1990年代に“インターネットテレビ”が流行し、見事に失敗したことをPCユーザーは覚えているだろうが、東芝は流行に反してインターネットテレビをリリースすることはなかった(単体のWeb端末は出していたはず)。理由は「一般ユーザーに受け入れられるとは思っていなかった」から。その考えは未だに変わらず、L400VシリーズのWeb閲覧機能も「いってみれば“ついでの機能”に過ぎない」と割り切っている。

 実際、搭載されるWebブラウザはプラグイン非対応で、メモリの容量も少ない。キーボードを接続することもできず、PCの代わりとして使うのは実際不可能だ。ただし、機能的な限界を踏まえたうえでなら、PCユーザーに意外な利便性をもたらすと本村氏は話している。

 「私も実際に使ってみて感じたが、朝の忙しい時間にニュースや天気をチェックするにはとても便利だ。テレビでWebを表示できるから、場所を移動する必要もなく、PCの起動時間で待たされることもない」。

photo ITmediaは普通に表示できることが確認できたので、毎朝チェックしてほしい(テレビ画面との2画面表示は6月にソフトウェアアップデートで付加される予定)
photo ソフトウェアアップデートの画面。通常、チューナーなどのアップデートには放送波を使うが、東芝はインターネット経由でダウンロードするための専用サーバを設けた。そのメリットは、より早く対応できること。伝送速度はもちろんだが、放送波のように局側の送出スケジュールに左右されないため、ブロードバンド接続環境を持っているユーザーは一足早くダウンロード可能になる

ハイブリッドレコーダーとの連携機能を試す

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.