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Interview:Blu-rayに関するいくつかの疑問(前編)特集:次世代DVDへの助走(1/2 ページ)

» 2004年03月09日 03時17分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 次世代光ディスクと呼ばれるメディアを扱える唯一の製品を出荷しているソニー。その中でBlu-ray Disc事業を担当するソニー業務執行役員常務の西谷清氏に、Blu-rayとBlu-ray Disc Founders(BDF)に関するいくつかの疑問をぶつけてみた。

 2002年の発表から早2年近く経過しているが、BDFという組織は取材を行っているわれわれからも近い存在ではない。参加企業個別に取材する機会はあっても、BDFを代表する立場で取材する相手がいなかったという事情もある。そうした点も踏まえ、西谷氏には可能な範囲でBlu-ray Disc全般に関する話をしてもらえた。

DVD Forumに提案しなかった理由

 ひとつ目の疑問は、BDをDVD Forumの議題として提案しなかった件である。2002年2月19日のBlu-ray Disc発表の場に東芝がいなかったことは記憶に新しい。BDF発足時のメンバーは9社だったが、直前まで東芝を含む10社の発表にするべく交渉が重ねられていたことは、一方の当事者でありDVD Forum産みの親でもある東芝・山田尚志氏からも明らかになっている。

 「DVD Forumは、多目的光ディスクに関して議論し、アプリケーションフォーマットを決めるための組織だが、新しい光ディスクの物理フォーマットを開発・定義し、ライセンスするための組織ではない。対してBDFは、青紫レーザーを用いた次世代の高密度光ディスクに関し、研究開発を行い論文発表を行っている企業同士で、物理フォーマットに関して話し合い、ライセンスを行う場だ。

 東芝に対するBDFへの参加要請は、BDFが発足する以前からずっと行っていた。私自身、発表直前の18日夜も東芝を訪問し、説得に当たっていた。『BDFで物理フォーマットについて確定させ、それをDVD Forumに持ち込んで議論してはどうか』と提案したが、受け入れてもらえなかった」。

 東芝はBDFへの誘いを断った後、BDF側にBD仕様をDVD Forumに提案するよう促したが、BDFはそれを断った。というのが、これまで表向き知られていた経緯だ。東芝に誘いを出す時には検討していたBDのDVD Forumへの提案は、なぜ行われないことになったのだろう。

 「東芝側から見れば、促したが提案しなかった、という結果に見えるかも知れないが、それは見解の相違だ。BDのDVD Forumへの提案は真剣に考えていたが、手続き上、BDそのままの仕様では受け入れられないことがわかった。各社合意のもとに基本仕様が固まっていたBDを、一度白紙に戻さなければならないと言われたため、DVD Forumへの提案を行わないことにした」。

 具体的に“白紙に戻す”とは、どのようなことなのか?

 「DVD Forum内に新しい作業部会を設立し、そこで改めて議論すべき、というものだった。具体的にはDVDを基礎にしたアプリケーションフォーマットやオーサリング基盤など既存DVDを基礎とした仕様にすることや、異なる信号処理技術などにも見直しを求められた。

 しかしBDの仕様は、すでに9社の技術を組み合わせることで仕様が固まっている。それを捨てて再構築し、作業部会での検討を経てDVD Forumでの議題に上げて検討するといったプロセスを踏むとなると、技術仕様の構築が全くのやり直しになってしまう。

 BDFは、その時点で次世代光ディスクに関して何らかの論文発表などを行い、研究開発の成果があるところに声をかけ、互いの技術を持ち寄ってひとつの仕様へと組み立てたものだ。その企業が既に合意できているものを、再度バラバラにするよりはDVD Forumに提案しないことを選んだ」。

BDはマスタリングも製造も安くできる

 一方、BDの欠点として指摘され続けているコストの問題。特にパッケージメディアとして採用する際の生産性の悪さを、HD DVD陣営は指摘し続けている。

 「BD-ROMの生産技術は、浜松にあるBD-ROM生産のパイロットラインで開発しているが、さまざまな可能性がある。たとえばCDの製造装置を用いて1.1ミリに成形されたディスクに記録層をスタンプし、その上に0.1ミリのフィルムを貼り合わせ、紫外線で硬化させれば、フィルム貼り合わせ行程以外はCD製造装置を使い回すこともできる」。

 確かに1層の場合はその方法が利用できるが、2層の場合はどうなのか。DVDでは0.6ミリのディスク2枚に、それぞれ記録面を成形して貼り合わせれば1.2ミリのディスクになった。しかしBDの場合はそういうわけにもいかない。

「大きく分けると二つのやり方がある。一つはフィルム側にピットを作ってから貼り合わせる方法。もうひとつは1.1ミリの基盤に2つの記録層を積み上げる方法。ソニーが取り組んでいるのは前者だが、後者の方法を開発している会社もある。現時点では、2層ROMメディアの歩留まりに関して“確実”と言えるまでには至っていないが、BD-ROMとプレーヤーが登場する2005年までに問題は解決しているだろう」。

 では、同じくHD DVD側が主張しているマスタリングプロセスの難しさに関してはどうか? 

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