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パソコン、携帯電話はライフスタイルを変えた?

» 2004年03月19日 23時50分 公開
[ITmedia]

 パソコンや携帯電話が一般化し、いつでもインターネットに接続できるようになった近年。ネット利用者のライフスタイルはどのように変化したのか。NTTデータは3月19日、2003年10〜11月に実施した「ユビキタス社会のライフスタイル調査」の結果を発表した。

 この調査は、NTTデータが3年ごとに実施しているもの。全国210カ所の国勢調査点から18歳以上70歳未満の対象者を無作為抽出し、調査票の訪問留置によって2213の有効回答を得たという。

 まず、インターネットの利用率は、前回調査時(2000年)の24.5%から53.1%に倍増し、過半数の人がパソコンや携帯電話を使ってインターネットを利用している現状がわかった。接続手段の内訳(複数回答可)では、やはり「携帯電話/PHSから直接」がトップの71.6%。次いで「ADSL」の32.4%、その後は「ISDN」の15.5%、「ダイヤルアップ接続」の14.9%とナローバンドが続く。

 ただし、この3年間でブロードバンドへの移行は着実に進んでおり、「ダイヤルアップは前回の5分の2、ISDNも5分の3と大幅に減少した」(NTTデータ技術開発本部システム科学研究所の内藤孝一副主任研究員)という。逆にADSLは32倍、CATVも3倍に増え、FTTHや会社のLAN環境までを含む“ブロードバンド”利用者は実に44.6%に達した。

オンラインショッピングは“旅行”がメイン

 インターネット利用者のうち、オークションや個人売買を含む“オンライン・ショッピング”を利用したことのある人は45%で、年間利用回数は平均9.1回だった。また、購入金額の合計は平均8万5672円と意外に多い。

 金額を引き上げているのは、「パック旅行など、旅行や交通関連の品目が目立つ」(内藤氏)ことだ。格安チケットやパックツアーなどの流通手段が、従来の雑誌や店舗から、より情報の早いインターネットに移行していることがうかがえる結果となった。

 購入経験のある品目でも「ホテルや旅館への宿泊」が最も多く、オンラインショッピングの利用経験者のうち、26.8%が購入したことがあるという。また、「もっとも高かった商品」を訊ねた設問でも、「電車や飛行機の乗車券」(平均1万4631円)、「ホテルや旅館への宿泊代」(1万3147円)など旅行関係の品目が並んでいる。

パソコンと携帯電話、見るサイトは違う?

 インターネットの利用は日常化したが、一方でパソコンと携帯電話では使い方に微妙な差が生じている。たとえばWebの閲覧。パソコンの場合、利用経験のあるサイトのトップは「検索サイト」で、インターネットが情報取得の起点になっていることがわかる。また、2位は「ニュースや時事問題」を扱ったサイト。3位以降には「交通情報・経路検索」「地図情報」「天気予報」といった定番の情報サイトが並ぶ。「パソコン利用者は、全般的にさまざまなサービスの利用経験率が高い。バラエティに富んだサービスを利用する傾向にある」(NTTデータ)。

順位 パソコン経由 携帯電話経由
1位 検索サイト(92%) 天気予報(41.5%)
2位 ニュースや時事問題(67.5%) 交通情報・経路検索(33.4%)
3位 交通情報・経路検索(67.2%) 音楽情報(33%)
4位 地図情報(66.6%) ゲーム・占い情報(25.7%)
5位 天気予報(62.6%) 検索サイト(24.7%)

 一方の携帯電話では、検索サイトは第5位。「ニュースや時事問題」も第6位とふるわず、1位、2位は「天気予報」「交通情報・経路検索」が占めた。“ネットサーフィン”と呼ばるような頻繁な移動は少なく、特定のサイトを決め打ちで訪問するユーザーが多いようだ。また、3位は着メロを含む「音楽情報」、4位はJavaアプリケーションにも関係する「ゲーム・占い情報」と、携帯電話ならではのサイトがランクインしている。

 内藤氏によると、携帯電話の利用者は、全体的にネットサービスの利用率が低い点も特徴として挙げられるという。「たとえば、同じ経路検索サービスを比較しても、パソコンでは67.2%に対し、携帯電話からは33.4%。携帯電話では2位にランクインしているにも関わらず、パソコン3位の半分ほどの利用率しかない」。

携帯が人をルーズにする?

 携帯電話やインターネットが“実生活に与えた影響”を訊ねる設問では、「時間を気にせずに友人と連絡を取れるようになった」(63.3%)という意見がダントツの1位だ。2位は「家族を気にせず、友人と連絡を取れるようになった」(41.9%)、そして「待ち合わせの直前に時刻や場所を決めることが多くなった」(35.6%)が第3位。

 なお、6位には「待ち合わせの時刻や場所を変更することが多くなった」(19.6%)という項目がランクインしており、合わせて55%を超える人たちが、待ち合わせ時に携帯電話が役立つと答えた。ただし、自由記述欄には「待ち合わせなどを簡単に変更できるようになった反面、時間を守らなくなった」(10-20代男性)、「子ども達が、すぐに相手と連絡がとれるという安心感から、約束の時間帯にルーズになっている」(40代女性)などという意見もあり、決して良いことばかりではなさそうだ。

テレビを見る時間が減った

 もっとも世相を反映しているのは、インターネットを利用する前と後で、“増えたこと”“減ったこと”を訊ねた設問。結果を見ると、テレビや雑誌など既存のメディアを見る機会が減り、その分インターネットを利用する人が多くなったことが良くわかる。

順位 増えたこと 減ったこと
1位 生活の楽しさ、面白さ(60.5%) テレビを見る時間(30%)
2位 欲しい商品やサービスを見つける機会(58.2%) 睡眠時間(25.1%)
3位 遠くに住んでいる知人と連絡をとる機会(49.1%) 新聞や雑誌を読む時間(16.6%)
4位 効率的な時間活用の機会(42.6%) 孤独感(10.9%)
5位 行動範囲(38.4%) 家族と過ごす時間(9.4%)

 しかし、「減ったこと」の5位に「家族と過ごす時間」がランクインしていることからもわかるように、パーソナルなネット端末が家族団らんを減少させる要因になることも改めて浮き彫りになった。「一人一台携帯電話を持つため、子ども達の交友関係が把握しにくい」(40代女性)。しかし、逆に「親が携帯電話を使うようになってコミュニケーションが深まった」(30代男性)といった意見もあり、一概に“家族団らんの敵”と決めつけることはできないだろう。

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