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EDEX2004にみる“これからのテレビ”

» 2004年04月08日 01時37分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 地上デジタル放送の普及元年とオリンピックイヤーが重なった今年、テレビを選ぶ“指標”に変化が見え始めてきた。

 東京ビッグサイトで4月7日から開催している電子ディスプレイの専門展示会「EDEX2004 電子ディスプレイ展」で、“これからのテレビ”の指標となる最新技術/製品をピックアップしてみた。(モバイル系ディスプレイの動向は別記事を参照)

photo ビッグサイトで開催されている「EDEX2004 電子ディスプレイ展」

 テレビ向けディスプレイでは、近年CRTからフラットパネルディスプレイ(FPD)への流れが著しい。中でも、小型サイズからリビング向け大画面まで従来のテレビの代替として期待されるのが液晶テレビだ。

 この分野では、韓国勢2社の元気がいい。

 サムスン電子とLG Philips LCD両社の“The World's Largest(世界最大)”競争はここ数年激化する一方だが、今回はともに50インチ超のテレビ用大型液晶パネルを展示している。

 昨年10月に日本で開催された「FPD International」ではLGが55インチを出展し、それまで54インチで世界最大をうたっていたサムスンに一泡吹かせたカタチとなっていた。だが、今年1月のCESにはサムスンが57インチを出展してすぐにタイトルを奪還。今回のEDEXでは、その因縁の2台がそれぞれのブースで紹介されていた。

photo サムスン電子ブースの“The World's Largest(世界最大)”液晶ディスプレイ
photo LG Philips LCDの55インチ。ライバルの攻勢で、同社の“世界最大”はいつも短命

指標1「フルハイビジョン対応」

 両機種ともに1080p(1920×1080ピクセル)と“高解像度”もセールスポイントにしている。この「フルハイビジョン対応」が、地上デジタルなどでHD放送が増えてくる中、“これからのテレビ”の重要なポイントとなる。

 シャープのブースでは、今年後半から生産が始まるとみられている“量産モデルとして世界最大級”の45インチ液晶ディスプレイを紹介。これは、今年初頭に本格稼動した亀山新工場で生産が行われるものだ。

photo “量産モデルとして世界最大級”の45インチ液晶ディスプレイ

 こちらも1920×1080ピクセルのフルハイビジョン対応。40インチ以上の大画面で強力なライバルのプラズマに、真似のできない高解像度で勝負をかける。視野角上下左右170度/輝度500カンデラ/コントラスト比800対1/応答速度12秒と、そのほかのパネル性能も及第点以上のスペックだ。新AQUOSシリーズのフラッグシップ機として、今夏にも市場投入される見込みだ。

指標2「リアプロジェクションTV」

 同じく“フルハイビジョン対応”をアピールしていたのがセイコーエプソンのブース。ただしこちらは、直視型の液晶ディスプレイではなく、昨年10月に発表したプロジェクター向け1.3インチ高温ポリシリコンTFT液晶パネル(HTPS)だ。同ブースでは、この新デバイスを使った大画面63.7インチの1080p対応リアプロジェクションTVを参考出展していた。

photo 大画面63.7インチの1080p対応リアプロジェクションTV。新開発のHTPSを採用

 同社は今年2月から北米市場で販売開始したリアプロジェクションTV(リアプロ)「Livingstation」で家庭用テレビ事業に本格参入。盛り上がる大画面テレビのニーズに、液晶プロジェクター市場で培ったノウハウを生かせるリアプロで応えようという狙いだ。

 国内では認知度が低いリアプロも、欧米では大画面テレビの主流として市民権を得ている。特に液晶/DLP/LCOSなどを使った近年のリアプロは従来のCRT方式に比べて画質が大幅に向上。同社ブースでも、展示されたリアプロを自発光のプラズマTVと見間違えるユーザーが後を絶たないほどだ。

photo 今年2月に北米で販売がスタートされたEPSONブランドの家庭用テレビ「Livingstation」

 「画質向上に加えて、リアプロで懸念されるサイズも、実はTVスタンドまで含めるとプラズマTVと変わらない設置面積で済む。しかも価格はプラズマや液晶の半分。生産設備を変えずに画面サイズを自由に変更できる点もコストダウンにつながる。今後、大画面テレビの選択肢としてリアプロは非常に有望。年内には国内でもLivingstationを投入する予定」(同社)

指標3「有機ELテレビ」

 次世代の薄型テレビ向け表示デバイスとして注目が集まる有機ELディスプレイ(OLED)。セイコーエプソンブースでは、高分子系の有機ELを使った12.5インチのパネルを参考出展していた。

photo 12.5インチの高分子有機ELディスプレイ

 水分や高エネルギー粒子に弱いという特性から製造プロセスでの制約がある低分子系に対して、インクジェットなど印刷法で製造でき、高精細で大画面の有機ELディスプレイを作れるのが高分子系の魅力。その高分子有機ELに早くから取り組んでいた同社だが、これまで展示会などでは2.1インチの小型タイプしか紹介していなかった。

photo 真っ暗な夜空に鮮やかな色が映える花火の映像などは自発光の有機ELが得意とする分野

 「やろうと思えば、大画面もできます」という技術アピールで参考展示するケースは珍しくないが、今回の有機EL大画面化は、将来の家庭用テレビ向けデバイスとして同社が本気になった証しのようだ。同社がブースで示した有機ELの開発ロードマップでは、モバイル向けや10インチ前後の小型パーソナルテレビだけでなく、リビングの大画面テレビまでも視野に入れた展開が描かれている。

photo 有機ELの開発ロードマップ

 「今回の12.5インチの展示は、将来的には高分子のメリットを生かせる大画面も展開していくというアナウンス。寿命など課題も多いが、製品として登場するのは今から3〜4年後になるだろう」(同社)

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