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DivX対応で実売2万円の“遊べる”ポータブルAVプレーヤー「Arex PocketMX」レビュー(2/2 ページ)

» 2004年04月20日 22時09分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 実際に触ってみると、操作レスポンスは悪くない。操作ボタンは本体前面に集中していて、上段に「再生」「早送り」「巻き戻し」ボタン、その下にホイール状の「上下左右&決定」ボタン、左側に「メニュー」ボタンがある。

photo 上段に「再生」「早送り」「巻き戻し」ボタン、その下にホイール状の「上下左右&決定」ボタン、左側に「メニュー」ボタン
photo 側面には電源と音量調節、液晶画面の輝度調節があり、いつでも使える。モバイル製品の場合、輝度調節はメニューから操作するケースも多いが、やはり簡単にアクセスできる専用ボタンがあると便利だ。また、両側にイヤホンジャックがあるのも特徴

 ちょっとしたトリックプレーも用意されている。たとえば、動画再生中に「早送り」ボタンを押すと“再生早送り”(音声なし)、「上」ボタンを押すとスロー再生だ。ただ、「巻き戻し」ボタンを押すとファイルの一番最初に戻ってしまう点には注意したい。

 さらに、再生中に「下」を押すと、液晶画面に「A」という表示が現れ、もう一度「下」を押すと「AB」になる。このAとBは、IN点とOUT点で、画面に「AB」と表示されている間は、A-B間をリピート再生し続ける。お気に入りの部分を繰り返して見たいとき〜たとえば音楽番組でお気に入りのアーティストが歌っている部分を何度も見たい、といった場合に便利だろう。

 さて、画質はというと、一見して「安めのポータブルテレビ」といった印象だ。文字は大きめのものなら読めるが、映画の字幕など小さいものは読みにくい。フォントの種類によっては全く判別できないものもあった。また、ほぼ上限の解像度でエンコードしたファイルであってもジャギーが生じる。同じファイルをパソコンで再生したら気にならなかったから、処理能力不足か、画素の大きさが問題なのか、いずれにしても良い画質とはいえない。値段相応といったところだろうか。

 電池の持ちはまずまずで、公称値(連続10時間)とまではいかないが、おそらく8〜9時間は使える。“おそらく”と書いたのは、検証中(動画のリピート再生を延々と続けていた)、目を離した隙にフリーズしてしまっていたからだ。まだちょっと不安定な部分も見受けられる。

 発売元のアールダブリューシーによると、DivXのVBRはシーンによってCPU(Dragon Ball MXi)の処理能力を超えてしまうケースがあり、フリーズするのだという。同社では、発売までには本体ソフトウェアの調整とともに、動画をエンコードする際の留意点などをまとめる予定だとしている。

静止画と音楽の再生も可能

 音楽や静止画を再生できるのは嬉しい。画像はJPEGのみサポートしており、解像度はとくに気を付けなくても自動的にリサイズする。また、「Settings」画面で「Slides Delay」を設定すれば、5秒、10秒、30秒の間隔でスライドショウも可能だ。スライドショウで最後の画像までいくと、少し時間をおいて自動的にシャットダウンする仕組みになっている。

photo 静止画表示

 音楽再生はMP3ファイルのみの対応。残念ながら日本語ファイル名の表示はサポートしておらず、画面上では2バイト文字がすべて「???」になってしまうのが難点。ただし、フォルダ構造はOKだから、フォルダ名やファイル名を英字表記にすることさえ気を付ければ、アルバムなどもフォルダごとメディアに放り込んで持ち歩くことができる。

photo ファイルの一覧。MP3のアルバムを入れたフォルダやJPEGファイルも混在させてみた。一番上の「.hhe」は、ZCARDのプロモーション用映像。その下をみるとわかるが、日本語ファイル名は「???」になってしまう

 再生ファイルの選択は、メニューボタンで一覧呼び出し、あとは上下キーで選択肢、決定という単純操作。静止画も音楽も、対応ファイルこそ限定的だが、メジャーなフォーマットはとりあえず押さえているため、とりあえず不便することはないはずだ。

photo MP3再生中の画面はこんな感じ

 ユニークなのは、本体の両サイドにイヤホンジャックが付いていること。本来はモバイル時の収納に柔軟性を持たせるためだと思われるが、同時にイヤホンを繋ぐと両方使えるから、彼女と2人で動画や音楽を楽しみたいときにも便利だ。電車の中で隣同士に座り、1つの画面をのぞき込めば密着度もアップ。意外と“使える”かもしれない。

割り切った仕様でGO

 DivXに慣れていて、既にネットワークプレーヤーなどを使ってTVで楽しんでいる人達は、「Arex PocketMX」の仕様にちょっとがっかりしたかもしれない。TV観賞用に作ったファイルは、ハーフVGAクラスの解像度にすることが多く、同機でそのまま再生することはできないからだ。また、ハードウェアの仕様をみても、バッテリーが電池である点、メディアが容量単価の高いSDカードであること、そして画質など、改善してほしい部分は多々ある。

 だが、HDDや充電式バッテリーを採用したら、2万円の価格で出すことは難しい、というか今のところは不可能であり、“ローコストなメディアプレーヤー”というコンセプトに合わない。事実、そうした機能を持つプレーヤー〜たとえば仏ARCHOSの「AV320」などは約9万円もするわけで、Arex PocketMXとは明確に考え方が違うことが分かるはずだ。

 いろいろ制限はあるが、動画、音楽、画像を再生できて2万円。しかも、デザインや使い勝手も悪くないArex PocketMXは、動画プレーヤーの入門機あるいは“お遊びツール”として最適だろう。割り切ったスペックを踏まえた上で購入するなら、きっと値段以上に楽しめる。

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