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“サイバー万里の長城”の中に言論の自由はあるか(1/2 ページ)

» 2004年05月21日 18時14分 公開
[IDG Japan]
IDG

 中国でインターネットが開放された当初、一部の観測筋は管理不可能な情報の波が押し寄せ、中国政府の崩壊につながるのではないかと予測した。

 しかしここ10年の出来事から、そうした予測が外れたことが分かってきた。中国政府はインターネット上の情報の流れを検閲することも、それをある程度容認することも可能だということを実証している。

 政府が一部Webサイトへのアクセス遮断やディスカッショングループの検閲を図るなど、中国ではインターネット上の検閲に関する問題が浮上し、日ごろから人権擁護団体や西側諸国の観測筋から批判を浴びている。しかし、中国におけるインターネット検閲と情報アクセスの問題は、こうした批判や西側の多くの報道が示唆するよりも、ずっと複雑で微妙なものだ。

 北京に住む匿名希望のあるインターネット利用者はIDG News Serviceに対し、「西側のメディアは誇張しているとは思うが、確かにこの問題は存在する。否定はできない」と答えた。

 インターネットコンサルティング企業ChinaLabsの主席コンサルタント、フー・ヨン氏は、西側のメディアがインターネット検閲を誇張して報じているという見方に同意している。「この種の報道は実際中国で起きていることを伝えているが、その重大性を強調し過ぎている」と述べた。

 インターネット検閲の問題に注目しすぎるあまり、インターネットによって中国での表現の自由が拡大されたことが見落とされていると同氏は指摘する。「想像されているよりもずっと自由でオープンだ」とヨン氏。

 しかし、こうした自由には限度がある。オンラインでコンテンツを掲載したり、ディスカッショングループに参加するインターネット利用者はたいてい、どんなトピックなら政府が自由な討議を認めるかを熟知しており、その結果、自主規制によって発言を和らげている。一部観測筋がこうした現象を指摘し、中国外の言論の自由擁護派はこれを非難している。

 中国政府は特定Webサイトへのアクセス遮断やドメイン名のハイジャックといった行為を公式に認めていないため、同国のインターネット検閲の範囲や影響を把握するのは難しくなっている。この空白を埋めるべく、中国におけるインターネット検閲プログラムの範囲について理解を深めるための研究が幾つか行われている。

 米ハーバード大学のBerkman Center for Internet & Societyが2002年に実施した調査によると、日を違えて中国内の異なるプロキシサーバ2台から20万以上のWebサイトにアクセスしようとしたところ、1万8931件のサイトにアクセスできなかった。遮断されたWebサイトの大半は性的な表現が含まれるものだったが、中には報道、健康情報、教育、娯楽などの情報を提供するWebサイトも含まれていた。

 国境を越える記者団(RSF)が2003年に中国のWebサイトによってフィルタリングされるコンテンツを調べた調査結果では、ディスカッションフォーラムに掲載されたメッセージの60%が、投稿から1カ月以上にわたってオンラインに残っていた。政府の批判など、検閲者が問題ありと判断するコンテンツを含むメッセージに絞ると、この数字は55%にまで下降したとRSFは報告している。RSFによると、その55%のうちの半分以上は、その後オンラインフォーラムの監視を担当するWebマスターによって削除された。

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