映画の広告といえば、昔は映画館の前にある大きな看板か、新聞広告が定番だった。大きめの写真やロゴを用い、その脇に上映館と上映時間が掲載されているというお馴染みのスタイルだ。しかし、インターネットの普及と、それに伴うユーザーの行動の変化により、広告宣伝の手法も大きく変わりつつあるという。
インターネット上の映画情報と宣伝広告の現状について、映画情報サイト「goo映画」を運営するNTTレゾナントの荻原智子氏と、東映で宣伝を担当している孤嶋健次郎氏に話を聞いた。
「goo映画」は、NTTレゾナントが提供する映画情報ポータルサイトだ。掲載されている作品の情報は約3万7000件に上り、映画の上映スケジュールはもちろん、予告編の動画やDVDタイトル情報なども数多く掲載。また、注目映画の封切り前には公認の特集サイトを立ち上げるなど、情報の幅を拡げることにも力を入れている。
「インターネットを使えば、上映作品の概要はもちろん、上映時間のや映画館の場所などもチェックできる。とくに20代から30代の若い人たちにとって、インターネットは映画鑑賞の方法論の一つになった」(東映の宣伝プロデューサー、孤嶋健次郎氏)。
最近では映画館もWebサイトを使った情報提供に力を入れており、サイト内で指定席の予約まで行える映画館なども増えた。利用者側も、インターネットを使えば、映画館までの経路を検索したり、映画の後で食事をする場所まで探すことが可能になり、ネットが消費行動の起点になっていることは間違いない。「goo映画」やライバルの「Yahoo!Movie」が人気を集めている背景には、情報の多さにくわえ、経路検索サービスやグルメ情報へシームレスに移動できるという機能的な側面もありそうだ。
goo映画のようなサイトにとって、もう一つの追い風になっているのが“韓流”(ハンリュウ)と呼ばれるムーブメント。映画やドラマなど、韓国のエンターテイメントがアジア各国を席巻し、その動きは日本でも定着しつつある。同社では「アジアに広がる韓流特集」を設け、韓国で人気のある映画ややドラマを紹介している。
「以前なら、韓国映画を上映するときは、“韓国の映画”という説明から入らなければならなかった。今は認知度が上がり、情報も多い。受け手の反応をみても、ハリウッド映画と変わらないというのが実感だ」(孤嶋氏)。
韓流の担い手が、20代から30代の女性という点もポイントになる。インターネットのユーザー層と重なり、映画ポータルサイトにとってはフォーカスが絞りやすいためだ。荻原氏によると、「gooの利用者は、通常なら男女比が50%ずつというのが常。しかし、今回の試写会に応募した人は7割が女性だった。年齢層で分けると、20代と30代が8割に及ぶ」という。
もっとも、男性が韓国映画に興味がないのかといえば、それも違うようだ。「これまでに全国各地でシルミドの試写会を行い、全体の来場者は4万人規模になるが、その男女比はおおむね1対1。男性にも受け入れられていると思う」(孤嶋氏)。
情報収集にインターネットを使う理由の1つには“口コミ情報”がある。映画なら、制作者や配給会社の色が付かない、率直な意見や批評も重要な情報源。広告の派手な宣伝文句より、実際にみてきた人の意見を聞きたいというのが利用者の心情だろう。
goo映画の場合、今のところ掲示板やチャットといった双方向のコミュニケーション機能は備えていない。「双方向のコミュニケーション機能については、“いつから”とは言えないが、順次備えていきたい。現在はBlogという形で(特集サイトと)連携している」(荻原氏)。
BLOGは、gooが力を入れている分野だ。一般ユーザー向けに無料の「goo BLOG」を提供する一方、goo映画では注目映画の公開時などに関係者がBLOGを立ち上げ、情報提供などに利用している。たとえばシルミド特設サイトでは、日本公開スタッフがBLOGを担当し、監督や役者が来日したときのレポートや作品の裏話などを公開中。さらに劇中で何度か登場する「連座制」や「赤旗の歌」の解説を豆知識として取り上げるなど、情報提供の手段もさらに多様化してきた。
「今回は新しい試みとして、goo独占試写会の来場者から会場で感想をもらい、goo BLOGに掲載した。コメントを寄せてくれた人たちには掲載時にメールを送るなどして、BLOGは初めてという人でも参加できるきっかけになればと考えている」(荻原氏)。
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