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携帯HDDビデオプレーヤー、飛躍の準備は整った?

» 2004年06月04日 10時57分 公開
[IDG Japan]
IDG

 Apple Computerの「iPod」などのデジタル音楽プレーヤーの成功にあやかろうと、台湾の電子機器メーカーは、ビデオ機能を盛り込んだマルチメディアプレーヤーを台北で開催のCOMPUTEXで宣伝している。

 会場には多数のHDD搭載の携帯音楽・ビデオプレーヤーが展示され、ほとんどのメーカーは、向こう3カ月以内に生産に入れると潜在顧客に売り込んでいた。

 各社は「デジタル音楽プレーヤーからの自然な進展」と考える流れに乗ろうと熱心だが、COMPUTEXで展示された試作機にはめまいのするような仕様リストが添えられ、サポートするべき機能やフォーマット、本体やストレージ容量の好ましい大きさに関しては、各社の見解はほとんど一致していなかった。

 こうしたプレーヤーは、HDDの大きさによって2.5インチ、1.8インチ、1インチの3つのカテゴリーに分けられる。HDDのサイズは、製品全体の大きさとストレージ容量を決定する要因になる。展示されていたプレーヤーの多くは1.8インチHDDを採用。このタイプのHDDは東芝などが製造しており、最大40Gバイトの容量のものが出回っている。

 1インチまたは2.5インチHDD搭載のプレーヤーもCOMPUTEXでは見られたが、メーカーからの人気は1.8インチHDDほどではなかったようだ。1インチHDDは容量が最大4Gバイト程度に限られ、2.5インチHDDを採用した場合はプレーヤー本体のサイズが大きくなる。

 機能に関して言うと、デジタルオーディオ・ビデオ再生機能はすべてのデバイスに共通で、一部にはフォトアルバム機能を備えたデバイスもあった。しかし対応フォーマットの点では大きな違いが見られた。

 MP3形式のデジタル音楽はPCユーザーに普及しているものの、デジタルビデオは普及が進んでいないようなので、広範に使われている主要なフォーマットがまだ現れていない。また2〜3種のフォーマットに対応したプレーヤーもあれば、すべてを網羅しようとするデバイスもある。例えばAnexTek Globalの「JoyToGo」は、MPEG4とMotion JPEGをサポートし、Power Quotient International(PQI)の「mPack」は、これらフォーマットのほかにMPEG1/2、DivX、Xvid、Windows Media Videoに対応する。

 価格の点ではある程度の共通性が見られた。ほとんどの企業は価格を尋ねられると、エンドユーザー価格は500〜700ドルと答えたが、COMPUTEXに来場した観測筋や一部メーカーの担当者は、こうしたプレーヤーがマスマーケット製品になれば、価格はこの半額程度に下がるだろうと認めた。

 こうした製品が音楽プレーヤーに代わってマスマーケット製品になるのか、ニッチ製品になるのか、それとも失敗するかを決めるのは、おそらく価格だけではないだろう。デジタルビデオにはまた異なる環境が必要なため、ライフスタイルも大きな要因となるかもしれない。音楽はほとんどどこでも楽しめるが、ビデオは少し集中して視聴する必要がある。ビデオは電車やバスの中で視聴するのには適しているが、道を歩きながら、あるいは自転車に乗りながらビデオを見るのは危険だ。

 音楽とビデオでは楽しみ方が違うと、HDDメーカーCorniceの中国・香港・南アジア担当マネジャー、コウ・ピン氏。人は音楽を何度も聴く傾向があるため、同じ楽曲をポケットに入れて持ち歩くという選択肢は魅力的だが、映画やテレビ番組を繰り返して見ることはあまりないと同氏は指摘する。

 Corniceは容量1G〜2Gバイトの1インチHDDを手がけている。コウ氏によると、デジタルメディアプレーヤーのおかげで、今のところこうしたHDDの市場は好調だという。

 東芝は、同社のHDDの採用を考えているメーカーから多大な関心を向けられている。「信じてもらえないそうにないほどの問い合わせがあった」とToshiba Digital Media Network TaiwanのHDD部門技術事業部副部長シンディ・リー氏。東芝はiPodに搭載されている1.8インチHDDを製造している。

 こうしたプレーヤーを手がける多数の企業にデジタルメディアプロセッサを販売する半導体メーカーTexas Instruments(TI)も、顧客からかなり注目されていると語り、その証拠として自社のブースに顧客が開発した多数の試作機を展示していた。

 またCOMPUTEXで関心の的となっているのが、Microsoftがこの分野でどのような役割を担うかだ。その答えはまだ分からない。

 同社は「Windows Mobile software for Portable Media Center」を掲げてこの分野に参入しようとしているが、TIのフィールドアプリケーションマネジャー、ピーター・ドゥー氏は、同社の顧客の多くは、少なくとも最初の世代のデバイスではLinuxかMicro iTronの採用を検討していると語る。

 「高レベルのOSは、さらなる収益を意味する。おそらく次世代のデバイスでは高レベルのOSが有効だろうが、今はそうではない」(同氏)

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