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FUMA(ふうま)は「ロボット界のLinux」を目指す

» 2004年06月04日 15時35分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 日本SGIと電気通信大学松野研究室、稲見研究室が共同開発したロボット「FUMA」(ふうま)が5月に開催された「ロボカップジャパンオープン2004大阪」に参加。レスキューロボットリーグで優勝を果たした。松野研究室の松野文俊教授は「世界大会でも好成績を残したい」と抱負を語るとともに、FUMAの目指す姿について触れた。

photo 電気通信大学 松野教授

 FUMAは4輪のタイヤと1本のアームを備えたシンプルなボディに、3台のカメラと各種センサーを装備。操作はWindowsベースのPCから有線/無線LAN経由で行う。ロボットのカメラと連動したヘッドマウントディスプレイを採用するなど、操作環境の向上も図られている。

photo FUMA

 5月に行われたロボカップジャパンオープンではFUMA自体も完成直後で、調整を進めながらの参加になってしまったが、結果としては優勝を果たした。6月27日からポルトガルで行われる世界大会に向けては、「オペレーターの訓練や、ロボット自体の確実性向上などを詰めていきたい」(松野氏)という。

 これまでにも松野研究室と日本SGIはロボットの共同開発を進めており、2003年のロボカップ世界大会にはヘビ型ロボット「KOHGA(こうが)」で参加している。FUMAとKOHGAが大きく異なるのは、FUMAが他の研究者も利用できる“プラットフォーム”としての要素を持っている点だ。

 FUMAは多種多彩なセンサーを装着できるボディを持ち、移動方式もシンプルな4輪型。制御もWindowsベースで行われるため、ロボットに関心のある研究者にとっては、極めて“敷居の低い”ロボットといえる。具体的な提供時期や方法は未定だが、他の研究者や開発者がFUMAを利用して新たなロボット開発が行えるよう、仕様の公開が行われる予定。

 「(ロボットの)スタンダードがあると良いのではと思います。仕様をオープンにして、みんなでブラッシュアップしていくのもいい方法でしょう」「FUMAがLinuxのような存在になるといいですね」。松野氏は、FUMAがロボット研究における共通プラットフォームの役割を果たしてくれればと期待を寄せる。

 現時点のFUMAは、「ハードウェアとしての完成度もまだまだ」(松野氏)。しかし、改良は随時進められており、ロボカップなどのコンベンションは完成度を高める絶好の機会となる。また、現行モデルでは大きな段差を上れないなどといった問題もあるが、キャタピラータイプなど、FUMAのバリエーションモデルが登場すれば、そうした問題も解決するだろう。

 松野氏は国際レスキューシステム研究機構というNPO組織の一員という顔も持ち、FUMA開発の際には、「みんなが使えるもの」「ツールとして使えるもの」を意識したと語る。「災害時、ロボット操作のために研究者を呼んでいては間に合わないじゃないですか」(同氏)。

 ロボット開発はまだまだこれからの分野も多く残されており、基礎部分の開発も必要。しかし、松野氏が述べるように、より生活に密着した、誰でも使えるものとしてのロボット開発も今後は大いに求められる。仕様を公開することによって、多くの研究者がロボット研究に携わり、実用性の高いロボットの開発が加速するかもしれない。みんなが使えるロボット、その土台となる可能性をFUMAは秘めている。

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