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万一の際には抗議も辞さない――輸入CD問題に関するタワーレコードの考え輸入CDは買えなくなるのか

» 2004年06月08日 21時01分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

「洋盤CDの流通がこれまで通りに行われるべき」と昨年9月から主張

 同社を含めたいくつかのCD販売大手は、昨年9月に日本レコード協会から改正の趣旨について説明を受けたという。そこで同社が示したスタンスは、「これから先の日本の音楽産業や音楽シーンのことを考えると、J-POPが海外に進出していくことを否定はしないし、(アジアからの還流を防ぐために)最小限度の措置は必要であるということは理解している。但しそれは、あくまでも洋盤CDの流通がこれまで通り行われることが条件である」というものであった。

 今に至るもこの基本スタンスは変わることなく、同社は「洋盤CDへの影響があってはならない」「流通の自由を阻害されては困る」という考えに基づいた行動を起こしてきたという。

 昨年9月の段階では法案そのものがまだできあがっていなかったため、意思表明をしたに過ぎなかったが、昨年12月に文化庁が行ったパブリックコメント募集の際には意見書を送付。法案提出時にも「洋楽輸入CDに影響を与えない」という担保を求めるべく関係省庁や国会議員への働きかけを行ったという。その結果の一つが、採用された付帯決議であるといえるだろう。

「安心できる状況であるとは考えていない」

 法案通過の際には付帯決議がつけられ、大臣および文化庁側も洋盤CDへの影響はないと繰り返しているが、同社も、これだけで大丈夫という判断をしているわけではない。

 「安心できる状況であるとは考えていない」。こう述べるように、同社は意見書の送付や関係省庁・国会議員などへの働きかけと平行し、今後も輸入が問題なく行えるように個別のレコード会社へ問い合わせを行っている。「現在の法案ではまだまだあいまいな点が多く、われわれの不安は払拭されない」。同社はこうも述べる。

 5月28日に行われた衆議院の審議では、付帯決議や大臣答弁では法的拘束力がなく、CDレンタル権のように海外の権利者に権利行使されてしまうのではないかという指摘があった。

 「法的拘束力という問題ではまだまだ不安な点があるのは事実。しかし、(レコード会社側と)お互いに確認をしあっており、そこを崩されるということは非常に由々しき事態。(権利行使をされることは)信頼を裏切られるようなもの」(同社)

 メーカーと流通(小売店)は、音楽マーケットの発展にとっては互いになくてはならない存在であるという点からも、そうした事態が起こりうる可能性は非常に低いとする。

文化庁は“趣旨のみ”で動いている?

 原案のままで法案は可決されてしまい、どのCDを輸入してよいのかのどうかという最終判断は税関が下すことになった。この運用体制にも同社は疑問を抱く。

 「税関が本当にそういった処理をできるのか」「税関で滞留させずに、処理を進めることができるのか。もし処理が滞るようなことがあれば、それは消費者の不利益になる」(同社)

 こうした通関上の実務のほか、「かかる不利益が生じた場合」に輸入制限が行われるというその判断基準についても、その基準があいまいであると同社は指摘する。

 「文化庁は趣旨のみで動いている。細則に関してあいまいな点が多いほか、実施・運用がどこまで検討されているのか、非常に懸念すべき点だ」(同社)

 法案の施行予定は来年1月で、残された期間はあと半年しかない。約半年でどこまで具体的な運用ルールを作ることができるのか、という点にも同社は懸念を表明する。

輸入制限CDの監視も――業界全体での監視は検討課題

 「これまで通りのビジネスを継続することを前提に考えていますし、それを監視していくつもりです。条件にそぐわないものが輸入禁止になってしまっている場合には、それを指摘し、抗議するという体制を作ることが必要だと考えています」(同社)

 このように、同社では還流防止という趣旨にそぐわないCDの輸入制限について、独自に監視・指摘する考えを持っていることも明らかにした。

 「万が一、(法案が)可決された場合でも、消費者へ不利益があるということになれば、これまで関係各社から得てきた約束が破られたとして、抗議を行っていくことになると思います」(同社)。消費者にこれまで通りCDを提供してゆくという目的のためであれば、同社は抗議も辞さない考えだという。

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