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多機能アームから“人工犬の鼻”まで〜対人地雷の探知・除去ロボット

» 2004年06月10日 20時56分 公開
[こばやしゆたか,ITmedia]

 6月10日、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の「対人地雷の探知・除去を目指した試作機の発表展示会」が早稲田大学国際会議場で開催された。

 これは、2002年6月に開始されたプロジェクトで、3年目にあたる来年には、「短期的課題」として、実際にアフガニスタンで地雷の探知・除去ができるものを作り上げることになっている。だから、今回登場しているものも、かなり完成形に近いものたちだ。

 ここで登場するマシンの仕事は、埋まっている地雷を探し出して、その場所を特定し、できれば地雷をむき出しにするところまで。その後、実際に地雷を無力化する作業は、ある程度の数を発見したところで、導火線を引いて火薬で爆発させるという方式が一般的なのだそうだ。

photo 千葉大学野波研究室と富士重工が共同開発した遠隔操作マシン

 これは千葉大学野波研究室と富士重工の共同研究による遠隔操作マシンだ。このマシンは無人であり、人間は離れたところの後方支援車両から遠隔操作する。マシンにはアームが2本ついており、ひとつはセンサーアーム。もうひとつは多機能アームだ。作業は、まず多機能アームについた電磁石で、地面表面の金属(爆弾の破片、薬莢、釘など。たいてい磁石につく)を取り除き、そのうえでセンサーを使う。センサーは金属探知機と地中レーダーを組み合わせたもので、金属探知機だけよりも、誤認識率がずっと低い。金属探知機だけだと、1000個検出したうちの一つだけが地雷というような比率なのだそうだ。

photo 動画はこちら(0.5Mバイト)

 地雷(らしきもの)を発見するとふたたび多機能アームの出番だ。圧縮空気で表面の土や砂利を吹き飛ばして地雷を露出させる。もちろんこのとき、地雷のスイッチが入らないように力の加減をちゃんとしている。また、土面が硬くなっている場合には、ブレ−カーと呼ばれるドリルを小さくしたようなもので、まわりの土を削って吹き飛ばせるようにする。このとき、地雷の真上を削らないのはあたりまえだけど、さらに、作業は全て横方向から行うようにもしている。

photo タダノの長尺アームマシン

 こちらは株式会社タダノの長尺アームマシンだ。約20メートルのアームの先に探知ユニットを取りつけることで、車では入っていけないような急斜面に埋まっている地雷探知ができる。

 2007年を目指す長期計画では、地雷を確実に探知する方法が研究されている。現在でも、地雷探知犬が臭いで探すということが行われているのだけれど、これをバイオセンサーで再現する、いわば人工「犬の鼻」。火薬に含まれる窒素を検出するために地中に電磁波を当てて核四極共鳴の反応を見るもの。さらには中性子を当てて、帰って来るガンマ線をみるもの、などだ。

 現在、金属探知機と人間の手によって行われている地雷除去作業では、一説によると70%程度しか除去できていないのだそうだ。探知・除去装置を研究する人たちは、100%ではないとだめだと考えがちだ。でも、現在70%ってことを考えれば、ずいぶん考え方が変わってくる。あわせて行われた講演会の最後では、このような意見が紹介された。

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