留守宅のペットや離れた部屋で休んでいる小さな子供の様子、夜間は無人になってしまう店舗や倉庫など、ネットワークカメラの活躍する場所は多い。現在この分野は数多くの製品が登場しており、単純に撮影だけを行うものからネットワーク越しのコントロールができる高機能なものまで様々だ。
プラネックスコミュニケーションズの「CS-MVTX01F」は、水平方向270度/垂直方向135度という広範囲な撮影が可能なネットワークカメラ。Webサーバ機能を持ち、単体でもネットワークに接続することが可能なほか、内蔵マイクによる音声付き録画も可能な高機能型。今回はその実力を検証してみよう。
CS-MVTX01Fは同社製ネットワークカメラ「CS-W01B」と同様に、本体内部にCPUを内蔵しており、カメラ単体でネットワークに直接接続し、撮影した画像の送信を行うことができる。付属のリモコンはもちろん、インターネット経由で遠隔操作して、カメラの向きを自由に変えるといった動作も可能だ。
カメラ部には有効画素数27万の1/4インチカラーCCDを採用し、撮影距離は40センチから無限遠。オートフォーカス/オートホワイトバランスや、動体検知/アラームなどの監視・通知機能などを備える。解像度は352×240もしくは176×120ピクセルで、フレームレートは1〜30fpsまでを9段階で設定できる。
カメラの視野内に何らかの動きがあったとき、自動的にその動きを検出する「モーション検知機能」(動体検知機能)を使用することによって、何らかの動きがあった場合にはすかさずその動きを撮影し、画像をメール添付で送信するといった動作が可能だ(動体検知で撮影できるのは静止画のみ)。
基部からカメラ部が独立しているデザインからも分かるようにカメラ部分の可動範囲は広く、水平方向(パン)が270度、垂直方向(チルト)が135度と広範囲に可動する。これだけの可動域を持つならば、1台でもかなりの範囲をチェックすることができるだろう。本体には無指向性のマイクも内蔵しており、カメラの映像と相まってかなり細かく設置場所の様子を把握できる。
ネットワーク接続は10BASE-T/100BASE-TX LANインタフェースを用い、Webブラウザ・付属ユーティリティ、もしくは付属のワイヤレスリモコンでコントロールできる。動力の問題があるのでACアダプタ駆動は仕方ないかと思うが、無線インタフェースが搭載されていればよりレイアウトの自由度が高まったのではないかと思う。
ダイナミックDNS(Dyndns.orgのサービスに対応し、無料で使用できる)にも対応しており、インターネット経由での操作や映像・音声の確認も可能。これによって、留守宅の小さな子供やペットの様子を会社や外出先からチェックできる。
そのほか、アナログAV出力も備えており、ネットワークのない環境下でもテレビを接続して直接映像を確認したり、ビデオデッキを使用して録画するといった使い方をすることもできる。
初期設定は、ネットワークの同一セグメントのLANにあるPCから、ユーティリティソフト「CS IP-Master」を用いて行う。設定を行う環境にDHPCサーバが導入されている場合ならば特別な設定は必要ないが(ルーター側でDMZの設定が必要)、IPアドレスの競合メッセージが出る場合には、設定を行うPCのIPアドレスを一端プライベートアドレスに変更してから、「CS IP-Master」を起動すれば、接続されている本製品を自動的に検索してくれる。
今回はブロードバンドルータに本製品を接続したが、直接PCと接続しても問題ない。ただし、この場合にはクロスケーブルで接続する必要があることを忘れないでおこう。
その後、「選択されたデバイスにリンクスします」と書かれたボタンを押せば、ひとまずはブラウザからネットワークカメラの映像をリアルタイムに視聴することができる。
操作画面の右にあるのが、カメラ自体の操作ボタン。水平/垂直方向への動作は矢印キーを押せばその分だけ動き、矢印キーの中心部分(ホームポジションボタン)を押すと、自動的に設置した際の正面にカメラの視点が移動する。動作の細かさも5から−5まで調節でき(数値が小さいほど細かく動く)、かなり思い通りの操作が可能だ。
操作感はかなり良好。タイムラグを感じることもなく、スムーズにカメラは動いてくれる。水平270度/垂直135度という動作角も実際に操作してみると想像以上に広く、普段自分の目で見るよりも明らかに広い範囲を見渡すことができる。マイクもなかなか秀逸で、結構敏感に周囲の音を拾ってくれる(カメラ自体を動かす音も拾ってしまうのは残念)。
「システム設定」では、詳細なシステム設定のほかダイナミックDNSや動体検知、定期撮影スケジュール、音声/動画設定など、本製品のキモともいえる機能の設定を行うことができる。
「ネットワーク」の項目にはSMTPやFTPといった、一見カメラには関係ないような項目が並ぶ。本製品は動体検知機能を用いて、監視対象に何か動きがあった場合には、その場面を撮影し、画像をメールに添付して送信したり、FTPサーバに自動アップロードするといった機能を持つ。そのための設定項目だ。
メール/FTPサーバはそれぞれ2カ所が登録可能で、何らかの理由で送信が行えなかった場合には予備の送信先にメール送信/アップロードを行う。FTPについてはパッシブモードでの動作も可能で、ファイヤウォールによって保護されている内側に本製品を設置した場合でもファイルが送信できる。
ストリーミングカメラとして使用する場合のポート設定もこの項目から行う。カメラのコントロール/像データ/音声データをそれぞれ異なったポートに指定できるので、既存環境との併存も容易だろう。
音声・映像の設定も「オーディオ/ビデオ」の項目からかなり細かく行うことができる。音質については回線速度の遅い場合に音質改善を行う「悪環境下での音質改善」項目が用意されているほか(ONにすると映像との同期に影響が出る場合がある)、ミュートも可能だ。
映像については、カラー(カラー/白黒)、サイズ(ハーフ/ハーフ×2/フル)、フレームレート、画質の各項目が調整できる。サイズのハーフ×2とはハーフ(176×112ピクセル)を2倍に拡大表示するもので、画質はハーフよりも落ちるがデータが軽量になるというメリットがある。
画質はプリセットの5段階(最低画質/低画質/標準/高画質/最高画質)、もしくはビットレートを指定して8段階(64Kbps〜1200Kbps)のいずれかで調整できる。データの軽さと画質の高さはどうしても反比例してしまうものなので、使用環境のネットワークに応じて調整を行うことになるだろう。
カメラの映像を縦方向に反転する「フリップ」、横方向に反転させる「ミラー」もここで設定する。カメラを天地逆さまに設置する場合には、フリップとミラーの両方にチェックすればよい。
撮影している映像に変化があった場合、本製品はそれをトリガーにして写真を撮影し、メール添付やFTPで送信する「動体検知」機能を備えている。
動体検知機能を有効にするには、「動体検知を有効にする」のチェックボックスを入れた後、「検知地域の名前」を入力し、「感度」と「変化比率」を決定する。感度は明暗への反応、変化比率は検知地域内でどれくらいの変化があった場合に反応するかを設定するもの。それぞれ0〜100%で設定することができるが、あまり敏感に設定してしまうと照明のON/OFFや小さな虫が通っただけでも反応してしまうので、設置場所でのテストが必要だろう。
感度や変化比率を変更した後、「保存」を押すとその設定が記録される。検知地域で試しに何かを動かしてみると、カメラが変化を認知する場合には映像右脇のバーが赤に、認知しない場合には緑に変化する。写真は筆者の自室で実験してみたときのものだが、夜間でしかも暗めの室内だったせいか、感度をかなり高めに設定しないと動きを認識しなかった。
この動体検知、同時に3つまで検知地域を設定することができる。カメラを店舗の奥に取り付けた場合には、複数ある入り口に動体検知の設定を行い、夜間に人の出入りがあった場合にはその動きを記録するといったことが可能だ。
そうして検知した映像をメールやFTPで外部に知らせたい場合には、「アプリケーション」から設定を行う。曜日や時間を指定してのタイマー撮影も可能だ。検知間隔や撮影間隔も設定可能で、かなり細かな撮影スケジュールを設定できる。
例えば、「イベントが発生してから10秒遅れて再検知」と「イベント後3秒でスナップショットを取る」という設定を組み合わせた場合には、“最短10秒間隔での撮影で、検知直前・検知時・検知3秒後の3カットを撮影する”という設定になる。細かく設定した方がより詳細な撮影が可能だが、そうすると撮影枚数が膨大になってしまうので、メールサーバやFTPサーバの容量(あるいは接続するPCのHDD容量)を考慮しながら決めることになるだろう。
映像の確認と操作はWebブラウザで可能だが、詳細な監視設定や録画した映像の確認は付属ユーティリティ「CS ME-Watcher」から行うことになる。
動体検知など動作に関する設定はCS IP-Watcherから行えるものと同一だが、CS ME-Watcherでは同時に4チャンネルのIPアドレスを登録できるので、同時に4つのカメラが映し出す映像を確認・管理できる。
ここで映し出されている画面は視聴するほか、動画・静止画として保存することができる。動画は200MバイトからHDDの空き容量の限界まで保存可能で、保存場所も任意の場所に指定できる。
画面表示のデフォルトは画面左にコンソールが表示される分割表示だが、全画面表示や任意の1画面のみの表示に切り替えることもできる。録画も簡単で、画面左のコンソールに配置されている「録画」ボタンを押すだけ。これ以外にもスケジュール/動体検知による録画も可能だ。静止画(スナップショット)や印刷も同様にワンボタンで可能だ。
CS-MVTX01Fはその広範囲な可動域を活かして、さまざまな用途での活用が見込めるネットワークカメラだ。家庭のLANに組み込んで仕事部屋から小さな子供の様子を確認したり、インターネットへ公開するライブカメラとして活用してもいい。実際、同社では本製品を社内に設置、その様子をストリーミング配信している。
だが、本製品の真価を発揮するのはやはり防犯の分野だろう。水平270度/垂直135度という可動範囲は、部屋の隅に置いておけばかなりの範囲を確認できるし、内蔵のマイクで室内の物音もチェックできるのは“深夜の見張り番”としては最適だ。マイクに関しては外部入力端子も備えているので、本体から離れた場所の物音をチェックすることもできる。
現時点では対応機器が発売されていないため、本体に備えられている汎用端子を活かす術はない。しかし、この端子にセンサーなどを接続し、そこからの入力変化を撮影開始のトリガーとするとするといった活用法も考えられる。そうすれば、扉に赤外線センサーなどを設置し、万が一、侵入者があった場合には自動的に本製品が撮影を行うといったことも可能になるだろう。
また、固定IPを持たないユーザーでもインターネット経由で操作できるのは、外出先からのチェックや深夜の店舗監視などには欠かせない要素だ。
同社販売サイトプラネックスダイレクトでの本製品の販売価格は4万1790円。単なるネットワークカメラと考えるとやや高価と言わざるを得ないが、充実した機能と拡張性を備えており、防犯というクリティカルな用途にも十二分に答えてくれるネットワークカメラといえるだろう。
製品名 | CS-MVTX01F |
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カメラ | 27万画素 1/4インチカラーCCD |
解像度 | 352×240、176×120ピクセル |
撮影距離 | 40cm〜無限遠 |
可動範囲 | 水平270度、垂直135度 |
マイク | 無指向性マイク内蔵 |
サポート規格 | 10BASE-T/100BASE-TX |
対応OS | Windows XP/2000/Me/98SE |
サイズ | 105(幅)×110(高さ)×105(奥行き)ミリ |
重さ | 350g |
その他 | 専用ユーティリティソフト付属(無料) |
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