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ゲーム中毒のヘビーユーザはオンラインゲーム事業者の収益に貢献しない!? ―東大ゲーム研究プロジェクト

» 2004年06月28日 18時38分 公開
[記事提供:RBB TODAY]
RBB Today

 成蹊大学経済学部の野島美保氏は、東京大学ゲーム研究プロジェクトの定例研究会で、『オンラインゲーム産業にみる「ネット・アイデンティティ戦略」』と題した発表の中で、ゲーム中毒のヘビーユーザは事業者の収益に貢献しないと述べた。

 自身もMMORPGをプレイする野島氏は、オンラインゲームについて経営戦略論・マーケティング論の視点から研究を進めており、パッケージ販売されるゲームと比較した場合、オンラインゲーム(特にMM0ORPG)は、ネットワーク外部性によって人気ゲームへの集中が加速すること、効用(プレイヤの享受するメリット:楽しさなど)と価格・収益の関係が確立されていない、といった特徴があるという。

 そして、重要顧客探索についての実証研究として、韓国で2002年11月に特定タイトルのプレイヤーを対象にしたアンケート調査を実施、その結果の分析から、オンラインゲームのプレイヤーを「参入退出を促進するユーザ」「内部コミュニティを促進するユーザ」「ゲーム中毒者」に分類。この3タイプのユーザはゲーム内外での行動が異なるという調査結果を紹介した。それぞれのタイプの特徴はおおむね以下のようになる。

  • 参入退出を促進するユーザ:他のゲームについての情報伝達が活発で、オフ会にも参加率が高い
  • 内部コミュニティを促進するユーザ:コミュニティ志向が強くゲーム内での対話が活発
  • ゲーム中毒者:情報収集が活発な一方、ゲームへの心理的依存度が高い。年齢は低め

(※:いずれも韓国での調査による)

 このうち、ゲームに定着することで企業収益に貢献するのは、コミュニティ志向の高いユーザで、ゲーム中毒者に分類されるプレイヤーは企業収益・コミュニティに貢献しないとしている。

 コミュニティの中核として野島氏が指摘するのは、「ネット・アイデンティティ」だ。これは、ゲーム内でのもうひとつのアイデンティティで、このネット・アイデンティティは、キャラクタ設計(キャラクタの服装やアクセサリ、髪型、髪色など)や、生活の場としてのゲーム世界、キャラクタ同士の共通の体験などによって高められるという。また、コミュニティ志向の強いユーザはアイテムを求める場合でも、戦闘での有利不利よりも、アイテムによる自己表現を意識する傾向が強いなどの特徴的があるという。

 東京大学ゲーム研究プロジェクトは、東京大学大学院情報学環・学際情報学府 馬場研究室と、IGDA日本によって運営されている産学協同プロジェクト。

東京大学大学院情報学環助教授の馬場章氏は、韓国ではインターネットがビジネスとゲームのどちらにも使う方向で成長したが、日本ではこれまでビジネスユースがメインで、ゲームに使うなんて、という風潮があると指摘する。