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縮まるアジアの通信格差、電話網の拡大続く

» 2004年09月08日 16時07分 公開
[IDG Japan]
IDG

 過去2年間にアジアの数カ国でブロードバンドや携帯電話の市場が急速に成長した一方で、同地域の一部の後発開発途上国でも基本的な電話サービスの普及が進んだことが、9月7日に発表された国際電気通信連合(ITU)の報告書で明らかになった。

 2001年から2003年までの間に、電話回線のユーザー向けの設置コストが低下したことを背景に、アジアの低所得国と高所得国の間で通信サービスへのアクセス格差が縮まったと、ITUのコンサルタントで同機関の報告書「Asia Pacific Telecommunication Indicators」(アジア太平洋電気通信指標報告書)2004年版を執筆したエリック・ネルソン氏は語った。同報告書は7日、韓国の釜山で開催のITU Telecom Asia 2004の一般公開に合わせて発表された。

 電話回線密度(人口100人当たりの電話回線数の割合)について見ると、低所得国ではほぼ28%の上昇を示し、所得の高い先進国の上昇率はそれよりもかなり低かったとネルソン氏。低所得国の上昇率が高いのは、比較対象となる数字がもともと低いことなどが要因だ。

 同報告書によると、アジアの低所得国の多くでは電話回線密度は依然として低いが、ミャンマーを除く開発途上国は、2003年末には0.81%だったのが、軒並み1%を超えている。電話回線密度が低い他の国にはアフガニスタン(1.18%)、パプアニューギニア(1.41%)、バングラデシュ(1.56%)、ソロモン諸島(1.62)、ネパール(1.78%)などがある。

 アジアで最も電話回線密度が高いのは台湾で、2003年末で170.07%に達した。

 アジアのほとんどの国では、電話回線密度の上昇の主因として携帯電話の普及が挙げられる。アジアでは2002年に携帯電話の加入者数が固定電話の加入者数を上回った。ただし、固定電話網も拡大を続けている。2003年末にアジアの固定電話回線数は4億8000万に達し、2000年から2003年までの年間増加率は13%だった。この増加率は世界のどの地域よりも高いと報告書には記されている。

 一方、ブロードバンドや無線の分野では、韓国や日本などアジアの数カ国が技術利用の先端を走っている。

 報告書ではその先進性が強調されており、消費者がブロードバンドサービスを日本より安く入手できる国はなく、日本では利用料金が月額24ドルで絶対額として安いだけでなく、平均月収に占める割合も低いと指摘されている。日本と韓国では、100Kbpsでのインターネット接続コストは月収の10分の1に満たない。

 報告書では、新しい無線インターネットの進展も取り上げられており、ネルソン氏はこれについて、アジアでは極めて重要な意味を持つと語る。例えば、数マイルの範囲でブロードバンドインターネット通信を可能にする新しいWiMAX技術は、1つの基地局で多数の村や町、さらには太平洋の島々を低コストで効果的にカバーする手段となる可能性があるという。

 しかし、一部の市場にはまだ発展の障害が残っていると、ネルソン氏は警鐘を鳴らしている。例えば、一部の市場ではVoIPなどの新サービスに対し、政府機関や既存の通信キャリアが収入減を懸念して後ろ向きの姿勢を取っていることが、ブロードバンドインターネットの普及拡大を遅らせているという。

 ITU Telecom Asia 2004は9月11日まで開催される。

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