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キヤノンと東芝、次世代ディスプレイ「SED」合弁会社設立(1/2 ページ)

» 2004年09月14日 15時46分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 キヤノンと東芝は9月14日、次世代の大画面薄型ディスプレイとして期待されている「SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)」の合弁生産会社「SED株式会社」を今年10月に設立し、2005年からSEDテレビの生産を開始すると発表。

 同日、キヤノンの御手洗冨士夫社長と東芝の岡村正社長が都内で記者会見を行った。

photo 記者会見を行うキヤノンの御手洗冨士夫社長(左)と東芝の岡村正社長(右)。発表会場には36インチのSEDテレビ試作品も展示された。

 新会社「SED」は神奈川県平塚市にあるキヤノン平塚事業所内に設置。キヤノン取締役SED開発本部長の鵜澤俊一氏が新会社の社長に就任する予定。従業員数は300人。設立時の資本金は10億5万円で、出資比率はキヤノンが50.002%で東芝が49.998%となる。

ブラウン管とフラットパネルディスプレイの“いいトコ取り”

 SEDは、次世代ディスプレイとして注目されているFED(Field Emission Display:表面電界ディスプレイ)の一種。ブラウン管並みの応答性/色再現性を厚さ10ミリ程度の薄型テレビで可能にするなど、ブラウン管とフラットパネルディスプレイの“いいトコ取り”を目指している。

photo SEDはブラウン管とフラットパネルディスプレイの“いいトコ取り”
photo SEDの基本原理

 ブラウン管は高輝度/鮮明な色/広い視野角などのメリットで広く普及しているが、大型化で重量が増えるその構造から40インチ以上の大画面が難しかった。

 SEDはブラウン管の電子銃に相当する電子放出部をディスプレイの画素分だけ並べたガラス基板と、蛍光体を塗布したガラス基板を近接して配置し、その間を真空封止した構造になっている。電子放出素子をディスプレイのすべての画素に放出することでブラウン管と同じ発光原理を生み出し、高画質な映像を作り出すのだ。

photo

 低消費電力なのもSEDの魅力だ。

 36インチのSED試作機での比較では、輝度の高い通常のテレビ番組だと同サイズのプラズマに比べて約1/3、液晶に比べて約2/3の消費電力となる。自発光ディスプレイのSEDは暗い場面の多い映画だとさらに消費電力が下がり、同サイズのプラズマ/液晶に比べて1/2という消費電力となるのだ。

photo 液晶/プラズマに比べて低消費電力なのもSEDの魅力

 新会社社長に就任予定のキヤノン取締役SED開発本部長の鵜澤俊一氏は「液晶/プラズマに比べてもっとも優れている点は画質。非常に高い電流密度を持ち、10キロボルトという高い電圧で発光体に衝突させる構造なので高輝度なディスプレイができる。ブラウン管と同系列の蛍光体発光原理なので非常に高コントラストなほか、色再現性、動画のキレ、視野角などでも液晶/プラズマに比べて優位。感動を伝える革新的なディスプレイになっている。また、省電力で環境にやさしいディスプレイでもある」とSEDの優位性を語る。

photo 新会社社長に就任予定のキヤノン取締役SED開発本部長の鵜澤俊一氏
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