このCCI(Copy Control Information)には4種類あり、認証の方式によって「完全認証方式」と「制限認証方式」という2通りの方式の運用が可能である。
このうち、「完全認証方式」は、公開鍵暗号方式に基づいて公開鍵と秘密鍵のペアで機器同士が相互認証を行う。対応するCCIは、「コピー不可」「コピーフリー」「1世代コピー可」「ノーモアコピー(1世代コピー可のコンテンツを記録するとこの状態になる)」の4種類である。
一方、「制限認証方式」は、秘密鍵暗号方式に基づいて共有鍵を用いて受信側の機器だけを認証する方式で、対応するCCIは「1世代コピー可」「ノーモアコピー」の2つだけである。
「ムーブ」にも対応しており、ノーモアコピーのコンテンツに限りムーブを行うことができる。ムーブの際には、受信機側にコンテンツを記録した1分後に元のコンテンツを削除するか、使用不可にすることが求められている。ムーブの回数自体には制限が設けられておらず、規定に沿った運用ならば繰り返しムーブすることが可能だ。
このほかSRM(System Renewability Message)という対応機器同士で送信・受信を無効にすべき機器の情報を共有する仕組みを持っており、対応していない機器へのコンテンツ送信・受信を防ぎ、複製の作成を制限する。
DTCP-IPも基本的な動作はDTCPと同一だが、接続機器の台数制限が異なる(DTCPは62台、DTCP-IPは34台)。認証作業でも、完全認証方式だけとになっており、DTCPと比べ、より厳格な運用が行われるようになっている。
この仕組みを私的複製の制限という観点から見た場合、問題になるのは、コンテンツの複製が許可されておらず「ムーブのみ」となっている点だ(コンテンツにコピーフリーのCCIが規定されていれば別だが、実際問題として、コピーフリーというCCIが使われるのは非常にまれに違いない)。
つまり、LANの中でコンテンツを「移動」させることはできるが、「コピー」をすることはできなくなるのだ。例えば、リビングのPCで録画したコンテンツの複製を二つ作成し、一つは自室のPCで楽しみ、もう一つは家族がポータブルプレーヤーで楽しむ、といったことは不可能になるわけだ。
DTCPは既にいくつかのD-VHSデッキのほか、アイ・オー・データ機器の「Rec-POT」「Rec-POT M」や、パイオニアの「DV-S858Ai」、ソニーの「SCD-DR1」といったレコーダー/プレーヤーにも実装されており、そうした機器ならばコンテンツを保護された状態で外部の機器に出力することができる。
こうした機器群を組み合わせれば、「デジタルホーム」的な構成を実現することが可能だが、現状ではその構成の中に“PC”を含ませることはできない。
というのも、現在出荷されている家庭向けPCのほとんどには「TV録画・編集機能」が搭載されているものの、DTCP/DTCP-IPへの対応を明言している機種は登場していないからだ。今の状態では、PCで受信した放送が著作権保護されていた場合、それをIP網で構築された家庭内ネットワークで活用することはできないのである。
PCはその汎用性の高さ、言い換えれば“私的複製のしやすさ”が災いして、放送や音楽、映画などのコンテンツ業界からは“コピーマシン”のように見られてきた経緯がある。このため、コンテンツのデジタル化で私的複製のコントロールが厳しくなるとともに、PCに対する制約も厳しくなっている。PCにおけるデジタル放送コンテンツの取り扱いに各種の制限が設けられているのも、その一環と見ることができる。
例えば、NECやソニーは地デジ対応をうたうPCを出荷している。だが、「VALUESTAR TX」はHDで録画してもHDで再生できない。一方、「VAIO typeR」はi.LINK経由で地デジチューナーと接続しての番組録画はできるが、PC自体は実質的に“外付けHDD”としての機能しか持っていない。“PCで扱う”という言葉から感じられる自由度の高さは、ここにはない。
また、両モデルとも録画したファイルのバックアップを作成することはできるが、そのバックアップファイルを再生できるのはバックアップを作成したマシンのみとなっており、他の機器にバックアップしたファイルを持ち込んでも再生できない。もちろん、家庭用DVDプレーヤーで再生できるようにDVDとして保存することもできない。
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