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ペイテレビを生かすスカパー!の戦略(1/2 ページ)

» 2004年09月22日 12時18分 公開
[西正,ITmedia]

日米におけるウィンドウ展開逆転現象

 米国ではフリーテレビとペイテレビの視聴率を比べた場合、ペイテレビがフリーテレビを大きく凌駕している。三大ネットワークも赤字に転落しており、傘下のペイテレビの好調振りによって経営を支えているのが現状だ。

 ケーブルテレビ大国である米国では、地上波を直接受信している世帯は非常に少ない。そのため、有線か無線かという伝送路の違いは、視聴者にとっての関心事ではなく、あくまでも見たい番組が有料なのか無料なのかということだけが意識されている。

 そうした形の中で、ペイテレビの視聴率がフリーテレビの視聴率を上回っているということは、明らかにペイテレビによって提供されるコンテンツの方が、多くの視聴者に支持されていることを物語っている。

 米国の映像ビジネス市場では、ウィンドウ展開が重視されており、同じコンテンツでも早く見たければ、それだけ多くの料金を支払う必要がある。

 映画を例に簡単に言えば、劇場公開、ペイ・パー・ビュー、ペイテレビと順番にリリースされていき、フリーテレビである地上波放送で放映されるのは、最後の最後と決まっている。ある意味では、非常に経済合理性に合致した展開となっている。ライブ物は別として、パッケージ物のコンテンツについては、リリースされるウィンドウ(出口)の順番が重要になる。

 ところが、わが国のペイテレビの状況を見ると、アニメチャンネルにしてもドラマチャンネルにしても、極端に言えば、地上波で過去に流された作品の再放送、すなわち地上波の“お古”ばかりが並んでいる。

 過去に無料で視聴した番組を、有料であっても、もう一度見たいというニーズがあることは否定しない。しかしながら、ウィンドウ展開という視点からすると、明らかに逆転した形になってしまっているのも事実だ。

 わが国におけるペイテレビの視聴世帯数は、大雑把に、衛星の直接受信が300万、ケーブルテレビ経由が500万と言われており、その伸び率も鈍化する傾向にある。

 多チャンネル放送のプラットフォーマーであるスカパー!がここにきて、コンテンツ投資に積極的になっていることにも、改めて、ペイテレビと地上波の差異化を強化することにより、加入者数の伸び率を高めていこうとの戦略が見て取れる。

 ペイテレビ市場の形成段階では、視聴者側のイニシャルコストを下げるために、プラットフォームはその役割として、インセンティブを支払って専用チューナーの価格の引き下げを行った。その成果が現在の加入者数の数字であり、しかも、その伸び率の傾斜が緩やかになってきたとすれば、次なる戦略を打ち出さなければ、伸び率を再び高めることは難しい。

 ペイテレビの認知度も高まった今、コンテンツ投資を積極的に行うということは、ウィンドウ展開の原理原則に従うべく、「ファーストランをペイテレビで行っていく」ように変えていくことを意味する。

コンテンツ投資の異なる意味合い

 スカパー!(スカイパーフェクト・コミュニケーションズ)がコンテンツ投資を積極的に行うことには、二つの意味合いがある。

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