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無線LAN業界の構図を変える? Symbolの特許

» 2004年09月24日 16時32分 公開
[IDG Japan]
IDG

 無線LAN機器メーカーのSymbol TechnologiesがTechworld.comに語ったところによれば、同社が保有する特許を侵害しているすべてのWi-Fi(802.11)機器ベンダーに対して多額のライセンス料を請求する考えだ。同社との和解を成立させたばかりの無線LAN機器メーカーProximは、Symbolの勝算は高いと見ている。

 Proximは先週、裁判所の判決を受け、2003年にSymbolに与えた損害に対する賠償金2300万ドルを支払うという苦渋の決断を下した(9月15日の記事参照)。両社によれば、Symbolが所有する特許はすべての802.11アクセスポイントに適用できるという。

 「この特許は、あらゆる802.11アクセスポイントに標準採用されている機能に関するものだ」とProximのマーケティング担当副社長ベン・ギブソン氏は語った。問題とされるパワーセーブ機能は標準的なWi-Fiチップセットに搭載されているが、陪審評決によれば、Wi-Fiチップセットがシステムに組み込まれた時点でSymbolの特許が侵害される。つまり、あらゆるWi-Fiシステムベンダーに対し、Symbolの法務部から6%のロイヤリティを請求する書簡が送られる可能性があるということだ。

 これによりSymbolには年間数千万ドルのライセンス料が入る可能性がある。Synergy Research Groupのアナリストらによれば、4〜6月期におけるWi-Fi市場の規模は6億5800万ドルだった。同市場ではアクセスポイントが最大の部分を占める。

 Symbol側としては、法廷闘争よりもむしろライセンスプログラムを浸透させたい考えのようだ。「Proximは膨大な労力を費やして当社のライセンス供与に向けた取り組みを阻止しようとした。しかし彼らは敗れ、6%のロイヤリティを請求する当社の権利が、陪審員と裁判官によって検証され、有効と判断された」とSymbolの法務顧問ピーター・リーブ氏は語った。「当社の技術を必要とする企業は数多く、それに対して当社が公正なライセンス料を課すことこそ、唯一の正しいやり方である」。

 リーブ氏は、既にライセンス料を支払っている企業も複数あると話したが、それら企業の名前やSymbolがこれから請求しようとしている相手は明らかにしなかった。さらにSymbolが今後展開するライセンス事業は、主力事業である無線LAN機器の製造をしのぐものにはならないと同氏は強調した。「ライセンスの売上が顕著になった場合はこの技術を開示する。当社の収入の大部分は、これからも製品とサービスの売上だ」と同氏。

 皮肉なことに、Symbol対Proxim訴訟はそもそもProxim側が2001年に引き起こしたものだった。Proximは、同社が所有する数々の特許をめぐってSymbolを提訴したが、その後反訴された。いずれの訴訟とも2003年にSymbolに有利な形で和解に至っている。そして今回、Proximは「戦わない」道を選んだ。同社のギブソン氏は「訴訟を続けるかどうかは迷った。陪審評決で下された賠償金額の大きさを考えると、何らかの行動を起こすことが重要だった。2600万ドル(賠償金2300万ドルと利息300万ドル)の支払いをめぐる1件を未決のままにしておくことは望んでおらず、控訴するにしても(Symbolに対し)多額の保証金を支払わなければならなかっただろう」

 さらに皮肉なことに、Symbolの勝利により、Wi-Fi関連の知的財産に対する同社の支配力が強まることになるかもしれない。Proximは将来のライセンス料を2%に引き下げてもらうことを条件に、自社が保有するいくつかの特許をSymbolに引き渡すことに応じた。これら特許はSymbolの特許と関連性はあるが(定義上、ならびに法的判断上は)異なるものだ。しかしSymbolのリーブ氏は、Proximから取得する特許が新たなライセンス収入源を創出すると確信している。Proximに決定的に不利なのは、同社が委譲する特許の有効期限が2014年であるのに対し、訴訟で争われたSymbolの特許は2009年で有効期限切れとなる点だ。

 成長が速い市場において、特許を基盤とする収入源はSymbolにとって極めて重要であろうし(リーブ氏はWi-Fi市場でほかに類を見ないライセンスプログラムだと話している)、Wi-Fi業界の構図を著しく変化させる可能性がある。

 ただしSymbolとProximの両社が、今回の和解の重要性をできるだけアピールすることに強い関心を持っていることは確かだ。しぶしぶながら全額支払いに応じたProximは、ほかのベンダーも同じような痛い思いをさせたいと考えており、Symbolも他社がおとなしくProximに倣ってくれることを望んでいる。

 Symbolの取り組みが試される正念場――それは、ネットワーク機器ベンダー大手のCisco Systemsとその巨大なネットワーキング製品群、そしてその弁護士たちに対し、ライセンス料を求める書面を送りつける時だろう。

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